小説 | ナノ


爆弾girl





「――――…ん」

目を開けると、私は壁も床も何もない、一面不思議なマーブル色の空間に立っていた……イヤ、浮いていたっていう表現の方が正しいのかな?

「…………また、《時限の狭間》か…」
「ほお、まだ此処には2度しか来てないのに、やけに落ち着いているな」

久々に聞くその声に振り返ると、案の定神(ジン)がいた。

「ふふ、 久しぶり、神」

私がそう言って笑うと、神は一瞬ひどく驚いた顔をしたが、直ぐに元の無表情になって、私に薄く微笑んだ。

「ああ、久しぶりだな、初音。
今回お前を呼んだのは、言っておくべき事がいくつかあってな」
「へーえ、6話ぶりだったから、もうこれから出て来ないと思った」
「…………お前なぁ…。少しは目上の者を敬う心をもてよ……」
「えー? なになに、聞こえなーい」

私がわざと耳をふさぎながらそっぽを向いて言うと、神が呆れたようにハァ、と溜息をついた。

「…………まあいい。
さっさと話すぞ。俺もあまり暇では無いんでな。
俺が言っておくべき事は2つ。1つは、お前が今の世界に居るのには期限があるという事」
「…………は?」

たっぷりと間を空けた後、少しばかり裏返った声で聞き返す私は、さぞかし間抜けな顔をしているだろう。

だが、最初に逢った時同様、さらりと原爆並の爆弾を投下した神には、呆気に取られずにはいられない。

「え、何ソレすっごい今更じゃない?」
「仕方ないだろう。世の中そう予定道理にいかないものだ。まあ、そっちの次元での出来事が一通り片付いたら帰れるだろう」
「………そっか。じゃあさ「もう1つ、この前お前が此処に来た時に渡し忘れたモノがあってな」って人の台詞さえぎるの止めてくれない!?」

私は憤慨して神に怒鳴ったが、悔しいことに、彼にとってはどこ吹く風。
私の文句も当たり前のようにスルーして話を続けた。

「これは、俺が所持しているモノでも一際珍しく、それでいて価値のあるモノだ。ほら、初音、手を出せ」
「? ……はーい」

言われたように両手を差し出したが、何かを出す仕草をするでもなく、ただ私の手に手を翳すようにする神に首を傾げた。


―――――と、突然神の手から白い光が燈り、それが私の手の中に吸い込まれるように消えた。

あまりに突飛したことだったので、私は目を大きく見開いて唖然していると、神が相変わらずの無表情で説明してくれた。

「え、な、な、何、え?」
「……随分困惑しているようだが、俺が今お前に渡したのは「癒しの力」。他者の傷を癒し、鎮める力だ。別に時計みたいに形在るものを渡すとは一言も言っていない」
「癒…し?って、そんな事言われても………」

訝しむように手を表にしたり裏にしてみたりして見てみたけど、何の反応も無いので再び首をひねった。

「俺は自分に刃向かう輩に己の未熟さを思い知らせるために、そいつの1番目を引く能力(チカラ)を奪うんだ。この能力(チカラ)はその中でも随一の特殊さと性能を誇るモノだ。それを、特別にお前にやろう」
「あ、ありがとう……。でも、でも何で?何で、神は初めて逢った時から、私に優しくしてくれるの…?」

その問いに、神はただ淋しそうに笑うだけで、答えてくれなかった。

「―――――さて、そろそろお前の次元では目覚めの時間だ。じゃあな」
「え、あ、ちょっと!?」
「ああそうそう。お前に与えたその能力(チカラ)だが、多分勘的なモノを使えばきっと使えると思うぞ」
「はぁ!? 何そのアバウトな使用説明! 勘なんかでわかるかぁぁぁぁぁ!!!!」

力の限り神につっこみながら、私の意識はブラックアウトした。





「――――正確には、その能力(チカラ)は、渡し忘れたのではなく、返し忘れたモノなんだがな…」

神がそう呟いて、まるで、哀しく懐かしい過去を思い出すように笑ったのを、私は知らない。











季節は初夏。
私と綱吉(とリボーン)は、珍しく学校への通学路をゆっくりと歩いていた。

「ふふっ、今日は寝坊しなくてよかったね、綱吉」
「んな、そんなしょっちゅう寝坊なんてするかよ」
「しょっちゅう寝坊してるから、私は毎朝学校まで全力疾走させられてるんじゃない」
「う゛…」

むんむんと蒸し暑い中、綱吉をからかいながら歩いていると、急に綱吉がギョッとしたように足を止めた。
不思議に思って綱吉の視線をたどってみると、塀の上に黒髪をポニーテールにした可愛い女の子が立っていた。

「(あ……この娘三浦 ハルだ…)」
「こんにちはー―っ」
「ちゃおっス」

ハルちゃん(仮)はリボーンの前でぴたっと足を止めてぺこりとお辞儀をしてリボーンに挨拶した。

「私…三浦 ハルと申します」
「知ってるぞ。ここんちの奴だろ?」
「(私のこと知ってたんだーっ)お友達になってくれませんか?」
「いいぞ」

ハルちゃんの申し出をリボーンが二つ返事でOKすると、ハルちゃんは感激のあまり塀から落ちそうになったが、途中で態勢を整えて地面にすちゃっと着地した。
おお、流石新体操部。

「やっ……たぁーっ!!」
「!?(変わった子もいたもんだ…!)」

……綱吉はドン引してるけど。

「あ…あの…さっそくなんですが。…こう…ギュ…っってさせてもらえませんか?」
「(何だソレ…)」
「(何か最近、綱吉の思考がてに取るようにわかってきたなぁ…)」

綱吉の思ってることがわかって苦笑していると、リボーンがハルちゃんの申し出をザックリ切り捨て、さらに自分が殺し屋だと暴露した。

「こらリボーン! 白昼堂々そーゆーことを…」

それに慌てて綱吉がリボーンを叱ろうとした。
…が、次の瞬間、ハルちゃんに思いっきり頬をぶっ叩かれて突然の事に唖然となり、私も突然のことで一瞬頭がパニックになった。

「え」
「最っ低です!!
何てこと教えてるんですか!? 殺しなんて…」
「はあ!?」

いきなり理不尽な怒りをぶつけられたことに、いつもは温厚な綱吉も流石にキレて声を荒げたが、彼女はまったく綱吉の話を聞いていなかった。

「赤ちゃんは真っ白なハートをもった天使なんですよ!!
あなたはそんないたいけな純情を、腐ったハートでデストロイですか!?」

綱吉の胸倉を掴み、エェ!?とまるでどっかのチンピラのようにガクガクと綱吉を、ゆするハルちゃん。
綱吉は力の限り心の中でつっこみ、私は予想以上にgoing my wayな彼女に、ただ呆然として綱吉とハルちゃんを交互に見る事しか出来ていない。

「ちがうって……何か誤解してるよ!!」
「何がちがうのよ!」
「オレはリボーンに殺しなんて教えてない!!」

女の子に胸倉を掴まれた揚句、今度はネクタイを引っ張られた綱吉だったが、一生懸命ハルちゃんに抗議した。
ていうかもお、私は一体どうすればいいのかな? 完っ全においてきぼりなんだけど………。

「うそつきです!
あなたリボーンちゃんのお兄ちゃんでしょ? よく一緒にいるの見てるんだから!」
「兄弟じゃないんだって!」
「じゃあなおさら最悪じゃないですか! 他人の赤ちゃんをデビル化なんてー――!!」
「(話通じねーっ!)」

……う〜ん、ほんと最近綱吉の思考が良くわかるようになってきたな〜…。
なんて1人物思いに耽っていると、ハルちゃんはいきなりずいっと綱吉に顔を寄せてさらに文句をつけた。

「いいですか? あなたはもーリボーンちゃんに会っちゃダメですよ! 悪影響です」
「ちょ、ちょっとストップ! えと、ハル…ちゃん…」

やっとこさ2人の間に割って入ると、今度は私がハルちゃんにギロリと睨まれた。
…うわぁ……女子の眼力って怖ーい。(←自分も女子)

「何ですか! まさか、あなたもこの人と一緒にリボーンちゃんを虐めてるんじゃないでしょうね!?」
「へ!? い、いや、そーじゃなくて、勝手に自分の考えだけで物事を決めつけるのは良くないと「なんですかそれ!どーゆー意味ですか、エェ!?」(ヒィィィィ!! この子こわぁぁぁ!!!)と、とにかくっ。どのみちリボーンは、まだ綱吉の傍を離れるわけにはいかないんだって!」
「その通りだぞ」

ハルちゃんのあまりの剣幕に泣きそうになっていると、なんとリボーンが助け船(?)を出してくれた。

それにハルちゃんがほえ? となんとも可愛いらしい反応をしてリボーンを見ている隙に、私は全速力でにハルちゃんの傍から離れて綱吉の右肩にしがみついた。

「そーだよおまえ説明しろよ。
なんでオレや初音が被害を被(コウム)らなきゃいけないんだよ!! ………初音、大丈夫か?」
「……ぜんっぜん大丈夫じゃない………。てか、ハルちゃん恐すぎ…」

うわ、何か涙出て来たかも。

ちょっと本気でハルちゃん怖かったので、涙ぐんで綱吉の右肩に顔を埋めた。

「ちょっ、初音っ!?」
「んー……ちょっとだけ、このまま……。…………ハルちゃん怖かったぁ…(2回目)」

顔を埋めたままゆっくり深呼吸をして言うと、綱吉の手が私を落ち着かせるように私の頭を撫でた。

「(ああ………落ち着くなぁ、この温度…)」

綱吉の心地の良い手の平の温度に、自然と気持ちが穏やかなになる。
そうやって綱吉に癒されていると、またいきなり綱吉の左頬に拳が炸裂した。

「!? え、えぇ!?」
「何がマフィアですか、不良の遊びにもほどがあります!リボーンちゃんの自由まで奪って」
「(じょ…女子にグーで殴られたー!!)」

ああもう、ハルちゃんは何だか勘違いをしている。
しかも、何故不良の遊び=マフィアになるのだろうか……。

しかも、綱吉が説明しようとしてもなんか怨んで聞き耳持たなそうだし。
私と綱吉が唖然としているうちに、ハルちゃんはリボーンにだけ「またね」とにこやかに挨拶して行ってしまった。

「おまえら息ぴったりだな。夫婦みたいだぞ」
「離婚寸前のな!」
「ハハハ」

リボーンに素早くつっこむ綱吉に苦笑して、ポンと肩を叩いた。

「綱吉、とりあえず、学校行ったらその頬手当てしようね…」

私がそう言うと、綱吉はコクンと頷いた。



―翌日―



「ふ〜〜っ。暑い………―――」
「ほんとほんと。
アレだよね、このままいくと、南極の氷より私達の方が先に溶けちゃうんじゃないかな……?」
「ハハハ、んな大袈裟な……」
「いやいやいや、あながち嘘じゃないかもしれないよ?」

なんて軽口を叩きながら登校への道のりを歩いていると、後ろからなんかガッシャンガッシャンと音が聞こえてきた。

「あれ…あまりの暑さに耳鳴りが…」

―――…そう、それはまるで……‘武士の金属鎧’のような………。

「…つ、綱吉。これって……」
「耳鳴りじゃ…ない?」

2人で青い顔を見合わせ、アイ・コンタクトを交わし、揃って恐る恐る振り返ると、目の前の異常な光景に2人同時に叫び声を上げた。

「きゃあああああっ!?」
「あんた何ー―――!!?」
「おはよーございます。昨晩(ゆうべ)、頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ」

振り返ると、ジャージの上にカブトの鎧を着、肘・膝当てをつけて、右手にホッケーの棒、左手にヘルメットを抱え仁王立ちしているハルちゃんがいた。
っていうか、この娘(コ)顔色悪いし、隈もできてるしフラフラだし、大丈夫なのかな……?

そんなフラフラなハルちゃんに、綱吉はドン引きしながらも懸命につっこんだ。

「寝不足だとそーゆー格好しちゃうわけ!?」
「ちがいますーっ。それじゃ私、おバカですよ」
「(え…貴女おバカなんじゃないの……?)」

ハルちゃんの返答に私がちょっと失礼な事を考えていると、ハルちゃんが真剣な顔をして言った。

「リボーンちゃんが本物の殺し屋なら、本物のマフィアのボスになるツナさんは、とーってもストロングだと思うわけです」
「な!?」
「ツナさんが強かったら、リボーンちゃんの言ったことも信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句は言いません」

そう言いながら、ハルちゃんはヘルメットを被り、ホッケーのスティックを構えた。
そして――――

「お手あわせ願います!」
「んなー――!?」

―――それを、勢い良く振り降ろした。

「あちょー!」
「うわっ、ちょ、待てよ!!」

奇声を上げてスティックを振り回すハルちゃんの攻撃(?)を紙一重でかわしていく綱吉。
………うーん、何ともカオスな状態だ。
って、そーじゃなくてっ。

「なんとかして止めないとなぁー。…あ、そーだ」

せっかくアレがあるんだから、アレで止めればいいじゃないか。
うん、そうだ。それが良い。

私はごそごそとスカートのポケットから‘双優’を取り出し、構えた。

「……………行くよ、‘双優’」

そう小さく‘双優’に呼び掛けてぶん、と‘双優’を振るうと、手の平サイズだった‘双優’はぐんぐん大きくなり、私の身長の半分くらいの大きさになった。

「綱吉、伏せてね!! ‘装填銀弾’!!!」

そう言いながら風をイメージして‘双優’を振るうと、狙いどうり銀色の疾風が綱吉とハルちゃんの間を吹き抜けて、2人を引き離した。

「(よし、なんとか成功!)」
「!? な、何!?」

私がふぅ、と息をついていると、突然起こった風に驚いている綱吉の声が聞こえてきた。
……まあ、普通に考えたらびっくりするよね。

実はコレ、入ファミリー試験の時にリボーンに言われたように、ひそかに練習を重ねていたのだ。
結果、名前をつけた方がイメージしやすいと気づいたので、それ以降名前をつけてやる事にしたのだ。
ちなみに、まだこれは綱吉達には秘密。

「ほら、そこの2人終了〜。
ハルちゃんも、そんな物振り回して。もし綱吉に当たって大怪我したら、責任とれないでしょ?」
「………ハイ。すみませんでした…」
「ん、いい子」

私が言った言葉に素直にしょぼーんとなったハルちゃんに、笑ってくしゃりと頭を撫でてあげた。

「勢いがあるのは良いけど、ちゃんと後先考えて行動しなきゃだめでしょ? もう子供じゃないんだから」
「…………ハイ」

ゆっくりと、しかし厳しく諭すと、ハルちゃんはコクンと頷いて返事をした。うん、素直でよろしい!

私がハルちゃんの返答に満足していると、頭上からなにやらシュルルルル…という音がした。
…………なーんかイヤな予感が……。

「10代目、さがってください!」
「え?」
「はい?」

上を見上げると、大量のダイナマイトがハルちゃんに向かって投げられていた。

「えええぇ!!?」
「ちょっと隼人サン!?」

ダイナマイトを投げる…というか使うのは隼人としかいない。

てなわけで、綱吉と揃って声のする方を見ると、なんか隼人がどや顔でこっちを見ていた。
っていやいやいや、君は何も良い事なんかしてないからね!?
より事態を悪化させたに過ぎないからね!?
なんて心の中で葛藤していると、ドッカーンと派手な音をたててダイナマイトが爆発した。

「キャッ……」
「初音っ!!」

予想以上に強い衝撃に、私が飛ばされそうになると、後ろから綱吉の声が聞こえたのと同時にぐい、と誰かに抱き寄せられた。

「っ!?」
「初音、大丈夫?」
「へぇ?」

後ろを見ると、綱吉が私を抱きしめた状態で、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「え、あっと……あ、ありがとう」
「……? どういたしまして」

流石に私も恥ずかしくなり、赤くなった顔を綱吉に見られないように俯いて、チラッと綱吉の顔を盗み見ると、きょとんとした顔をして首を傾げていた。

……くそ、可愛いじゃないか!!!(←バカ)

「(って、違うちがう!)そうじゃなくて! あっそうそう、ハルちゃんは!?」
「え? あ、そうだ! 大丈夫かな…!?」

とっさに話をそらそうとして言うと、綱吉もうまくそれに乗っかってくれた。(ごめんハルちゃん!!)
慌てて川を覗くと、案の定ハルちゃんは溺れていた。大方、鎧が重くて泳げないんだろう。

「うわわっ、ハルちゃんっ!」
「どうしようヤバイよ助けなきゃ!」
「ん?」
「「ん?」じゃないよバカ隼人!!」
「助けてやる」

私と綱吉がパニックになってわたわたと慌てていると、ヘリウムガスを吸ったような特徴的な声が横から聞こえてきた。

「リボーン!」

私よりも早く綱吉がリボーンに反応すると、リボーンはニッと笑いながらレオンを銃に変えると、ソレを綱吉にむけた。

「よし。ツナ、助けてこい」
「は!? ちょ、いやいやいやオレにはムリだって!」
「いいから、死ぬ気になってこい」

リボーンはそう言うと、嫌がる綱吉に問答無用で死ぬ気弾を撃った。

「死ぬ気でハルを救う!!!」
「ちょっ、えっ、綱吉!?」

私が唖然としていると、リボーンがさらに弾を追加した。

「追加だ。カカトを撃てば足スクリュー弾」

カカトを撃たれた綱吉は、鬼のような形相でハルちゃん目掛けて泳ぎ、「オレにつかまれー―っ!!!」と言いながらハルちゃんをお姫様抱っこをして向こう岸まで泳いでいった。





綱吉によって助けられたハルちゃんを、すかさず私が鎧と肩・肘当てを外して、今日のために持って来ていた大きめの白いタオルをかぶせた。

すると、ハルちゃんは体育座りをしたまま器用にスルスルッと少し後ろに下がって俯いた。

「ありがとーございました…」
「ったく、反省してんのか?
10代目にもしものことがあったら、おめーこの世に存在しねーんだからな」
「…たった齢14歳で殺人犯か……。隼人の人生は波瀾万丈だね……いや、むしろ波瀾万歳ってカンジかな?」
「んなっ、果たすぞてめぇ!!」
「あーハイハイ、わかったわかった」
「おいっ!」

私が隼人をからかって遊んでいると、急にハルちゃんがプ、と吹き出した。

「死ぬ気でハルを救う! オレにつかまれーっ」

とーっとか、おりゃあーっとか言いながらはしゃいでいるハルちゃんを、私も含め3人揃って唖然としていると、ハルちゃんが頬を赤らめながら言った。

「そんなクサイセリフ、テレビの中だけだと思ってました」
「反省してねー――っ」
「(アッハッハ。もおほんとこの娘(コ)頭弱いなぁ……)」

一応名門の進学校に通ってる筈なんだけどなぁ…………。
ショックを受けたような顔をしている綱吉に憐れみの視線を向けていると、ハルちゃんが綱吉にうっとりというか、熱い視線を送ってきた。

「すごく……ステキでしたよ。
リボーンちゃんのかわりに飛び込んでくれた…10・代・目」
「な!!」

綱吉にとっては余程予想外なことだったんだろう。
驚いて顔を真っ青にしている。リボーンは「計画通り!」とばかりにニッと笑ってるし……。
まあ私は知ってたから、別にどーとゆーことないけどね。

そうつらつらと思いながら、ハルちゃんと彼女に追いかけられている綱吉を見ていた。
…………何と言うか、彼女はアレだね。
猛突直進と言うか、1度走ったら止まらないと言うか、まるて爆弾みたいだ。
隼人とそっくりだな。案外ウマが合うのやもしれない。
私はとりやえずもう暫く、あの人を見守っている事にした。


ズキズキと痛む胸に、気づかないフリをして。





爆弾girl
(タイムリミットなんて)(そんなモノ要らないのに……)





2009.8.7 更新
加筆 2011.8.4