変わらない街
ぺたり、ぺたり。
池袋の街を、1人の少女が歩く。
ただ淡々と、無音に。一切の音を立てること無く。
彼女の腕や、ミニスカートから覗く剥き出しの脚には、真っ白い包帯が巻かれている。
その包帯の白さが、少女の肌の白さや細さを際立たせ、より一層痛々しく見える。
だが、少女はそれを意にかいする事なく、ただただ歩く。
ぺたり、ぺたり。
まるで機会のように、表情を削ぎ落とした顔でひたすら歩く少女の肩を、1つの手が叩いた。
少女がゆっくりとした動作で振り返ると、その先には、にっこりと笑う男の顔があった。
眉目秀麗をそのまま表したような端麗な顔のその男を見て、少女はぽつりと呟く。
「臨也」
「あのさぁ茜那、出歩くのは勝手だけど、一応書き置きくらいはしておいてくれないかなあ」
「ごめんなさい」
表情を全く動かさず言葉を紡ぐ茜那と呼ばれた少女に、臨也と呼ばれた男は、また薄く微笑んだ。
そして、ごく自然に、少女の肩を抱く。
「さて、帰ろうか。今日の夕飯は露西亜寿司にしよう」
「はい」
そうして、正反対の表情と雰囲気を持った2人は、そのまま人の波に消えていった。
池袋の街は、今日も変わらず廻っていく。
まるで人形のようなその少女や、幾多の非日常を内包しながらも、変わらずに。
更新 2011.8.27