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Auguri Buonanno!



※年末を過ごすヒロインと沢田親子と居候ズ。ちょっと未来のお話。




「はあぁ〜……っ。今年ももう終わりかぁ…」

炬燵に入ってぬくぬくと温まりながらぼやく初音の目の前にどんと蜜柑が山盛りにされた底の深い盆を置いた。

「年寄り臭いぞ初音。ていうか、この間除夜の鐘聴きに神社行くって言ってなかったっけ?」
「ええー? こんなさっぶいなか行くわけなーいじゃーん」

机に顔を乗せてやけに間延びした勘に障る口調で言う初音に思わずイラッとくる。
春産まれらしい初音は、寒さに滅法弱い。夏は割と30℃とか越えてもけろっとしてるけど、冬はちょっとでも寒いとセーターを2枚目も3枚も着込んで上にブレザーを着てもまだ物足りないとか言ってるくらいだ。
今までの学校は冷暖房完備で、暖房のない空間がこんなにも寒いなんて思ってなかったとたまに歯をガチガチさせながらぶつぶつと文句を言っていた。

特にうちの学校は冬だろうと定期的に窓を開けて換気してるから、初音みたいな寒がりには余計辛いんだろう。
うちは公立だから、そもそもエアコンなんて設置されてないし。職員室と応接室以外。
その所為か冬休みに入るまでは初音はよく応接室に入り浸っていたような気がする。正直、ちょっとムカついた。

「そんなごろごろして餅と蜜柑ばっか食ってて太っても知らないぞ」
「だーいじょうぶ。私食べても太らない体質だから」

ふふん、と得意気に言う初音に苦笑すると、今度は嬉しそうににっこりと花が咲くように笑った。

「はーい、年越しそば出来たわよー」
「あっ、わーい! ありがとうございます!!」

母さんが年越しそばを持って居間に入ってくると、それを見た初音が待ってましたとばかりに顔を輝かせて母さんを手伝うために炬燵から立ち上がった。
その間、オレは炬燵の机にごんっとでこをぶつけて、ひたすら顔の熱を冷ますのに専念した。

「やったっ。奈々さんのご飯すっごく美味しいから、年越しそばも食べてみたかったんだよねーっ」

るんるん気分でそばの椀を並べている初音に恨めしそうな視線を向けたけど、母さん製年越しそばに夢中の初音は全く気付いてなかった。

「今年最後だっての不憫なやつだな」
「うっせ」

にやにやと意地悪く笑っているリボーンをじと眼で睨んでぬるくなったお茶をずるずると啜った。










みんなで年越しそばを食べて、紅白も見終わったところで、初音があっと声を上げた。

「何?」
「あけおめメール、打っとかなきゃ」

そう言って桜色から白へとグラデーションされてるケータイを取り出して真剣に打ち始めた。

「あけおめメールって何?」
「友達に年明けとほぼ同時にメールを送るの。明けましておめでとうーって。今年もよろしくーって内容の奴。憧れだったんだーっ」
「今までは送らなかったの?」
「うん。今まではケータイ持たせてもらえなかったから」

ちょっと無神経かな、と思いながら聞くと、へにゃっと笑って気にせずに教えてくれた。

「あ、後ね、この間1つのメールで複数の人に出せるって気付いたの。大発見!」
「………初音って、見掛けによらず機械に弱いよね」

こう、いかにも思いっきり都会の人、ってイメージなのに、初音は意外とかなりのアナログ人間だ。
ケータイではなく連絡は何故かポケベルだと思っていたし、テレビは今まで数える程しか見たことも触ったこともないと言って、実際テレビの切り替えも録画のやり方も知らなかった。

「えーっと京子とー、花とー、ハルとー、後隼人と山本くんでしょ。それと草壁さん……っと」
「……………ねぇ、オレにはないの?」
「へ、何で? 必要ないじゃない」

うきうきとして送り先を決めている初音にちょっと悔しくなって言ってみると、予想以上にざっくり切り捨てられて、思ったよりも心臓にぐさっときた。そこまできっぱり言わなくても良いじゃんか。

「だって、綱吉は私のすぐ隣にいるでしょ? すぐにぎゅてハグも出来るし、明けましておめでとうって言えるでしょ?」

と、いうわけではいハグハグーとか言いながらぎゅっと抱きついてくる初音を、ぽけっとして見つめる。
普段オレよりも高いけど、オレに寄りかかってる所為でつむじがよく見える。

そんなどうでも良い事を考えていると、だんだん自分の顔が赤くなってるのが解った。

「(…………くっそ)」
「わっ。なあに、綱吉」

それを初音に見られないように彼女の体に腕を回してぎゅっとするとまた可笑しそうに初音が笑った。

走行しているうちに、みんなが集まってる(つまりテレビがある)方から、カウントダウンの声が聞こえた。
10、9、8、7、6、5……
お互いどちらともなく数を数え始めて、3、2、1、と言ってから、顔を見合わせて口を開いた。

「「ハッピーニューイヤー」」

2人して同時にそう言うと、ちょっとぽかんと相手の顔を見て、それからくすぐったくてにやっと笑いあった。






A HAPPY NEWYEAR!!!





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