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優しいイロ





「…………」
【キュウ?】

今、私は子狐くん(ちゃん?)を膝に乗っけて向かいあっている。
この間拾ったこの子狐くん(ちゃん?)と扇なのだが、一応名前ぐらい付けておこうと思って扇の名前は『双優』にしたんだけど、この子狐くん(ちゃん?)の名前がイマイチピンと来ないのだ。
この子にもどの名前が良いか聞いて見るのだが、

「ルル」
【(ふるふる)】
「ラン」
【(ふるふる)】
「リリー」
【(ふるふる)】

………こんな感じに、どれも一様に首を横に振るだけで、ちっともOKが出ないのだ。
一体どこが気に入らないと言うんだろう。

「もおぉ……じゃあ何が良いのよぉ〜〜」

そう言って、この子を抱きしめてベッドに倒れ込んだ。
ぎゅう、と抱きしめる力を少し強くすると、すり…とわずかに擦り寄って来た。

「(かーわーいーいー)」

なんだかむずむずした感じになり、ぎゅ〜〜と抱きしめてすりすりとほお擦りをして、顔を見ると、思いの外強い眼の光に驚いた。
世の中の邪なんて何も知らないような無垢な眼、吸い込まれそうな、不思議な深見のある………瑠璃色の瞳。

「………瑠璃」
【キュウ?】

ぽつりと呟いた私の言葉に、可愛らしくこてりと首を傾げる子狐。
この子の名前、今やっとピンときた。

「瑠璃……、ルリ。あなたの名前は今日からルリ。……どうかな」
【キュウッ】

私がそう言って聞くと、ルリが肯定と取れる声を上げて、すりすりと身を寄せて来た。

「よろしくね、ルリ」
【キュウッ!】

ちなみに、この子の名前の由来は、この子の瞳が…




やさしいイロ
(あの瑠璃色に)(言い表せないような)(優しさがあったから)





4.25 更新
加筆 2011.8.31