短編 | ナノ


愛しいヒトに 愛のコトバを



思えば、今日は、何故かみんなの様子が変でしたねぇ。
朝起きて、珍しく早起きをしていた犬におはようと声をかけると、不自然な動作で避けられましたし、
キッチンに行こうとすると、千種に断固拒否されましたし、
揚句、はづみとクロームには少し外を散歩してこいと追い出されましたし、

…今日は、何かありましたっけ?






「……よし。みんな、骸様完全に外に出て行ったよ」
「……念のため、クローム骸様の気配を探してくれる?」

千種の頼みにクロームがコクンと頷くと、ぎゅっと目を錘むった。

「…大丈夫。骸様、ちゃんと外に出てる…」

それを聞いて、私は満足げに笑って頷くと、パンッ、と手を叩いた。

「じゃあみんな!これから骸様の「ドッキリ☆バースデー大作戦」を開始するわよ!!」
「その前にはづみ、1つ良いれすか?」

私が勢い込んで言うと、犬がちょいっと手を挙げた。

「ん?なあに、犬?」
「そのネーミングは無いと思うんれすけ「千種、料理はどうなってる?」」
「大丈夫。骸様が帰って来る頃には、良いカンジに出来上がってる」
「よし。クローム、ケーキはどう?」
「…こっちも大丈夫。ちゃんと、ラ・ナミモリーヌにチョコケーキを頼んでおいたから」
「よしっ!これで準備はだいたい調ったわ。あとは……」

私はそこで言葉を切ると、部屋を見渡した。

「……このホコリっぽい部屋をなんとかしないとね」

渋い顔で呟く私に、3人はソロってコクンと頷いた。









「こほっ、けほっ。私達、今までこんな汚いトコロで暮らしてたんだ…」
「うえ゛ぇ、これちょっとヒドすぎるびょん」

千種は料理、クロームはケーキを取りに行くということで、私と犬は部屋掃除担当になった。
掃除し始めて分かったんだけど、この部屋の衛生環境は悪すぎる!
何が悪いって、見渡す限りの埃、埃、埃!!
今までは気にできる状況じゃなかったけど、今思えばよくこんな環境で暮らしていけたものだ。

あともうちょっとで綺麗になるというところで、クロームが息を切らして走って来た。

「はづみっ、はづみ大変っ!」
「え!?どうしたのクローム!」

頭に付けていた三角巾を外しながらクロームに尋ねると、はあはあと息を正ながら、ドアの方を指さした。

「………?」
「骸様、もうずぐそこまで帰って来てる…!」
「えぇえ!!?」
「なっ、何でそれを早く言わねーんだびょん!!」
「そんなのは今言うべき事じゃないでしょ!? 犬っ!骸様がこっち来ないように時間稼ぎして来て!
クロームっ!千種の料理の具合はどうか聞いて来て! 私はクラッカーとかの準備をするから!」
『分かった(びょん)!!』

私の指示に、2人はコクンと頷くと一斉にバラバラに走り出した。
私も急いで走って昨日のうちに買っておいたクラッカーやら三角帽子やらが入ったビニール袋を引っつかみ、千種の作ったご馳走が並べられているであろうリビングへ急いだ。

「千種、クロームっ!
料理はどうなってる!?
「はづみっ……!」
「もう出来てるよ」
「OK!じゃあ、2人ともコレ持って。骸様が来たトコロをやるんだよ!?」
『分かった』

2人がクラッカーを持ってコクンと頷いたトコロで、犬と骸様の声が聞こえて来た。

「まったく、いきなり何なんですか?」
「ま、まあいいれすから」
「全っ然良くありませんよ。何なんですか、出て行けと言ったり戻れと言ったり……」
『骸様!!!お誕生日 おめでとうございます!!!!』

あ、骸様、珍しくキョトンってしてる。
かわいーなー。

骸様が訝しみながらリビングのドアを開けるのと同時に、3人で一斉にクラッカーを鳴らして言った。
骸様はあまりにもびっくりしたらしく、まだ目を見開いて固まっている。

「………あの、骸様…?」

あまりにも反応がなさすぎるので、私が骸様の前に出て、ひらひらと目の前で手をふっていると、突然右手で顔を覆って笑い出した。

「ク…クフフ……クハハハハハハ……!!!」
「!? む、骸様!?」
「まったく、最近3人の様子がおかしいと思ったら、こういう事ですか
クフフ、君達にはいつも驚かされる」

一瞬、骸様の頭が壊れたかと思ったけど、
一通り笑った後、そう言って身を屈めて私の額にキスをしてくれた。

「!!!? む、むむむ骸様!?」
「クフフ…ありがとうございます、はづみ。それにクローム、犬、千種。
それで、はづみは僕に何か言うべき事があるんじゃないんですか?」

そう言って悪戯っ子そうに笑う骸様に、私はちょっと恥ずかしかったけど、骸様のく、口にキスをして、精一杯の笑顔で言った。

「骸様っBUON COMPLEANNO!! 大好きです!」

そう言うと、骸様は満足そうに笑って、私にキスをくれた。
「愛してますよ」のオマケつきで。




愛するヒトに 愛のコトバを
((骸様))(永久)(((少しは人目を気にして下さい(くらさい))))