短編 | ナノ


side:?



がやがやと教室がにぎわうお昼時。そんな中で、教室に私の叫び声がこだました。

「無理っ!」
「……そうは言っても。このままでは何も解決しないだろう」

呆れた顔のアルトリアに抱きついて、ぶんぶんと首を振って駄々をこねる。
ランスロットがディルムッドに相談している頃、場所は違えどもう1人の幼馴染に相談している私の方も、正直参っていた。

「付き合っちゃえばいいじゃない」
「無理よっ。もう、面白がって。凛は全然わかってない」

昼休みなこともあって、綺麗に盛り付けられたお弁当の中身をつつきながら言う凛に渋面を作って睨む。
そう。無理なのだ。凛は私の事は良く解ってくれているけど、私やランス達幼馴染の関係については何にも解ってない。
私とアルトリア、ランスとディルは、物心ついた頃からずっと一緒だった。
私は3人の事が大好きで、大切な友達だと思っている。失いたくなんて絶対にない。けど、だからと言ってそのベクトルが恋愛に向くかと言われれば、答えは勿論ノーだ。ランスの事は大切でも、彼とそういう関係になるなんて想像もできない。
それに、いきなりそんな事言われても、正直言って困る。
だって、今までそんなの考えた事すらなかった。
あんな、真剣な顔で、眉を切なそうにひそめて、まるで縋るような…あんな…あんな……。

黙り込んでアルトリアの肩に顔を埋めていると、不意にぽんと頭に手が乗せられた。見上げると、何もかも解っているような顔をしたアルトリアが、眉を下げてしょうがないなあとでも言うように笑っていた。

「………………アルトリア?」
「なあ。私は別に、お前の事を面倒くさく思って手を打たないのではない。お前が本当に困り果て、弱り切り押しつぶされそうになっているのなら、ランスロットをぶん殴ってでもその行為をやめるよう説得しよう。そして、お前たちが元の関係に戻れるように尽力するさ」

だが、そうではないだろう?
他の友人には基本的に敬語で喋るアルトリアは、私達幼馴染に対しては男の人のような話し方になる。
そんな彼女に言葉は、不思議なくらいあっさりと私の中に入っていって、すとんとそれが心に収まる。
咄嗟に違う、と言うことが、どうしてか出来なかった。

「ま、嫌よ嫌よも好きのうち、ってことでしょう」

駄目押しのように凛に言われて、ぐ、っと押し黙る。
その意味を理解するのがいやで、駄々をこねるように再びアルトリアにギュッと抱きついて、その肩に額を押し付ける。
宥めるように肩をさすってくれたのが、すごくほっとした。

「だって…あのバカ、あの日私のケータイに“絶対に貴女は私に惹かれます。それだけの自信がある”何てメール送って来たんだよ?」
「あら、情熱的じゃない」
「っはは、いいじゃないか。受けて立ってやるといい」
「……………………もぉ」

くすくすと凛と一緒にアルトリアは笑うと、私に抱きつかれたまま食事を再開した。
そうしていつも通りに戻る2人を見て、つい口を尖らせた。

「違うもん。別に、あんな根暗ナルシスト…違うもん」
「あーはいはい。いつまで続くか見物ねー」
「っくくく………」
「もー!! ちょっと2人共、やっぱり面白がってるじゃないー!」

何とも楽しそうな凛とアルトリアに、さらに口を尖らせて噛みついた。
絶っっ対、そんな風にはならないんだから!!!





(そんなわけないもの)(なんて言っても、やっぱり2人は笑うだけだった)






曰く、様に提出。ありがとうございました!




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