駒鳥とチワワ | ナノ


始まりの合図





あれから、私は順調に雲雀恭弥と同じ道のりを歩み進めて、入学して早1ヶ月で風紀委員会を設立して、事実上並盛中学校を手中に収める事に成功した。
そして、並盛帳全体を支配して数年。草壁が風紀副委員長に就任して数ヶ月。波中の1-エーの名簿に沢田 綱吉の名前を見つけて、数ヶ月。
とうとう私は、歯車が回りだす音を聞いた。






風紀委員会の朝は早い。それも委員長となれば尚更だ。
朝4時起きは基本として、大体6時半には学校についている必要がある。この時、毎日既に校門前で私を待っている草壁は秘書の鏡だ。
7時には平の委員たちがやってきて、校内および町内の見回り、服装検査がある期間ならそれも含めたミーティング。
その後もろもろの準備をした後私は学校関連の書類整理に入り、普通の生徒たちが登校してくる時間にやっと一息つくことができるのだ。

「委員長、お疲れ様です」
「ん」

そばに控えていた草壁が恭しく差し出す湯呑を受け取って、中の番茶を飲んでふうと息をつく。
草壁はそれを確認すると、テキパキとデスクの上に味噌汁の入った茶碗やら白米の入った腕頭と、いくつかのおかずの乗った皿を乗せ始めた。
あっという間に並べられた草壁手製の味噌汁と白米と出し巻き卵と、家から持ってきたきゅうりの糠漬けと大根の酢漬け。これらが、日々の私の朝ごはんである。
あ、今日の味噌汁はわかめとじゃがいもだ。定番だけどそれだけに外さないんだよね、この組み合わせ。
私は起きてすぐは食欲がわかないので、風紀委員設立してからというもの、毎日この時間に朝食を食べる。なので、うちの委員室には給湯設備が完備してある。
一見質素だけど、もう最近じゃこの組み合わせじゃないと朝が来たって感じがしないのだ。
やっぱり朝の目覚めの一杯は味噌汁に限る。
というか、これを食べないと身体にスイッチが入らない。
日本人的食生活がすっかり沁みついてしまった私は、もう前世のような甘い菓子パン生活には戻れないだろう。味噌と米と漬物がないと多分死ぬ、私。
足元でオブジェになりきっているエンとスイも、毎日私からそっと差し出される漬物にご満悦だ。嬉しそうに目を細める様子に、つい目を細める。可愛いなあもう。
手前のソファーの上で行儀良くぬいぐるみのふりをしているヒジリには、朝食が終わったらめいっぱい構い倒してあげよう。
そんなこんなで、今日も草壁の作った朝食で朝の疲れを癒していると、そこへ慌てた様子の平の委員が入ってきた。

「失礼します。大変です、委員長!」

ノックもせずに飛び込んできた平に軽く顔をしかめて要件を促そうとすると、その前に草壁が平に音もなく近づいて、その顔面に思いきり拳を入れた。
そのまま声も上げられずに入り口のドアに強かに頭をぶつけた平を見て、思わず声に出さずに溜息をついた。

「おい、この時間は委員長はお休みなられている。勝手にこの部屋に入るなと言ったはずだ。何か用があるのなら、まず先に俺に連絡を入れろ」
「ひ、ひゃい、ずびまぜん。ですが緊急で…………」
「言い訳のつもりか貴さ「副委員長、話が進まない。君、早く報告してよ」」
「はっ、はいっ!」

段々とヒートアップしていく草壁に、とりあえずストップをかける。
まったく、私に忠実なのは良いんだけど、たまにその所為で熱が上がりすぎるのが玉にキズだ。それを除けばすごく使える良い腹心なんだけどねえ。
私の言葉に渋々と拳を収めて「申し訳ありません」と深く頭を下げた草壁に手を振って平に話を促すと、平の方は慌てて立ち上がって姿勢を正すと、緊張した面持ちで口を開いた。

「実は、3年の剣道部主将の持田が、1年の生徒と試合をするとかで、体育館を使用しようとしておりまして」
「…………何?」

ずず、と番茶をすすっていた手を止めて、視線を平に向ける。
自分の機嫌がみるみる降下していくのを感じる。無意識のうちに眼光が鋭くなってしまったのか、私の視線を受けた平はひっと怯えたように悲鳴を上げて慌てたように声を早めた。

「そ、その理由が彼女に手を出された腹いせとかで」
「そんな事は聞いてないよ。使用申請は?」
「勿論受けてもいなければ許可もしていません。しかも、部員たちが面白がって見世物にしようと生徒たちを集めておりまして………」
「………へえ、群れようとしてるんだ」

平の報告に、さっきとは打って変わって弾んだ声が出た。
へー、この私の学校でよりにもよってそんな大人数で群れようとかしてるんだ、へー。良い度胸してるね、羊のくせに。
ふーんと口角を上げて背もたれに身を預けると、平はますます身を奮い上がらせた。

「それで? 彼らはそのまま授業をサボる心積もりなのかな」
「…………それが、すでに朝礼をボイコットしている状態で」
「へえ。教師たちは何をしているのかな」
「………その。実はこの件、そもそも教師たちが混乱の果てにこちらに救援を要請してきたのが発覚のきっかけでして」
「………………うん」

莫迦か、あいつらは。
何か言おうかとも思ったけど、その前に手に持っていた箸が手の中でべっきんと音を立てて折れたのを見て、そんな気も削がれてしまった。

「………全く。この学校には無能しかいない」
「あ、あの、委員長」
「仕方ないね、私が出るよ。草壁」
「はっ」
「君は他のを連れて一階の莫迦しかいない羊園に教育に行って」
「承知いたしました」

ぐっと番茶を飲み干して、ふかふかの黒い革張りの椅子から身を起こすと、背もたれに掛けていた学ランを手に取った。
それに反応して、足元でオブジェと化していたエンとスイがピクリと耳を動かしてこちらを見上げる。

「………言ってくるね」

よしよしとその頭を撫でてそっと告げると、学ランを羽織りながら出口に向かい、体育館へと足を向ける。

「ああ、1つ忘れてた」
「へ? 何をでぶぐっ!?」
「ゴミの粛清」

振り向きざまに平の顎にトンファーを叩き入れて、ついてしまった血を振って払う。

「この時間に来るのは良いとしても、上の人間、それも女の子の根城にノックもなしに入るのはどうだろうね。…………って、ああ、もう聞こえてないか。ヒジリ、それに触れちゃだめだよ。汚れるから」

歯を欠けさせて伸びている名前も覚えてない平の委員にそう告げて、心配そうに倒れたそれに手を伸ばそうとするヒジリに声をかける。
それでも心配そうにこっちを見る優しい子に、優しく笑って「別に死んでないから気にしなくていいよ」と声を掛けてドアを掴む。

「君達はここにいて。これくらいなら私だけで大丈夫だから。草壁」
「はい」
「それは温め直しておいてね」

それ、とデスクの上の朝ごはんを指さして、そのまま振り向かずに委員室を後にした。
ていうか、これもしかしなくてもREBOPN!の第一話の話だよね。








駒鳥とチワワ原作篇、始動。みたいな。
とうとうと綱吉との絡みが始まります。今の時点でもうすでにこの夢主はほぼ完成形です。幼少期までの不安定な部分はほとんどなくなり、自分らしく、も少し入れながら立派に並盛最恐の風紀委員長として並盛に君臨しています。
本人は気づいていませんが、性格が無意識のうちに女版雲雀さんっぽくなっていってます。ただ相変わらず手持ちポケは溺愛してますが。





2013.11.19 更新






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