亜麻色のお嬢様 | ナノ


飛行機に乗って





キイィィィィィン、と少しばかり耳に痛い音を発しながら、遥花達が乗る自家用飛行機は着陸の姿勢に入る。
着陸の際に耳が痛くなりませんように、と綱吉に手渡された飴を先程からもごもごとさせていた遥花は、飛行機が地面に車輪を付けたのを感じると、感極まってきゃあっと歓声を上げた。
それを見た綱吉達使用人ズが何とも微笑ましい気持ちになりお互いに顔を見合わせていたのを、彼女自身は知らない。


「よっ、と、と、はっ」

「ああ、お嬢様、あんまりはしゃぐと転んでしまいますよ」

「だあいじょうぶですよ。私は身体は弱くとも、そこまで間抜けではありませんわ」


トントンと飛行機からのびる階段を一段一段ぴょんぴょんととび跳ねる遥花に、綱吉は自身の初めての海外旅行の際はしゃぎ過ぎて勢い余ってつんのめって転んでしまった事を思い出しそう言ったが、遥花に無邪気な笑顔でそう言われてしまい、たちまち切ない気分になった。
そして、全ての階段を下りると、遥花は日本の晴れ渡った空を見上げ、ぐっと伸びをした。


「着きました! ニホンです! ジャッポーネです!! ここが綱吉達が生まれ育った土地なのですね! ふわぁーっ、まだ春なのにあっついです、むしむしします!」


嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる遥花はとても可愛らしく、見ている方は眼福以外の何物でもなかったのだが、如何せんここであまり時間を食うわけにはいかない。
これから空港から並盛町へと移動し、今年度から編入する並盛中に行かなければならない。
まだまだ空港の中を回りたそうな遥花を何とか諌め、空港の外へ出ると、そこには長いリムジンと共に三浦 ハルが待っていた。


「お待ちしておりました。どうぞ、お嬢様」

「ありがとうございます、ハル」


使用人の中で日本で免許証を取得している数少ない人間である彼女がそっと車のドアを開けると、遥花は小さく礼と共にお辞儀をして車に乗り込んだ。
そのまま彼女の左右に綱吉達が乗り込み、最後に隼人が車の外でハルと二言三言話すと、運転席に彼が乗り助手席にハルが座った。ここからでは会話は聞き取れなかったが、数年前に比べて随分と仲良くなったものだと、綱吉は少しばかり微笑ましい気持ちで見ていた。
隼人は手早く車のキーを回すと、緩やかに発車させた。


「では、これより並盛町並盛中学校に向かいます」

「はい」


隼人の言葉に遥花が律儀に返事を返して、時折雑談を交えながら並盛町へと向かった。






加筆 2011.8.23