▼ りありずむ
 反重力研究所の最奥。
 すべての情報が集まって今現在のステージ状況を報告し続けていた。そして、数あるモニターの一つ。伝統になりつつある9分割のモニターだけを見上げていた。
 他の報告されるデータは、機械に任せっきりだ。

「ウェーブ君は、終始挙動不審だったけど戦闘では荒っぽくて凄く強いよね」

 ポツリと呟く言葉に反応するロボットは居ない。静まり返った部屋には機械音だけが淡々と響くのみ。
 グラビティは溜息をしてバラバラにステージへ向かう前の弟機たちを思い浮かべていた。

「ストーン君は、大きくて力持ちで、衝撃を受け流せる能力持ってて強いね」

 短時間で作られ、短時間で訓練を積み重ねただけでも十分に戦闘データは覚えていた。その中で自分の機体のデータに、また溜息をする。

「ジャイロ君は、プロペラでも機動力と判断力、意志があって強いし……」

 性格は玉に瑕というものだったけれど、それ以外でなら申し分ないように思えた。あえて言うならジェットを背負っていたら更に強かっただろうと思われる。

「スター君は、苦手だけどいつも明るくて攻撃と防御のバランスが絶妙で強い」

 安定感なら一番を誇る。
 バリア一つにしても他の機体が持ち得ないモノでそれが攻撃に即転じる事ができるのだから万能といえなくもない。

「チャージ君は、一直線だけどその分力強くて負けず嫌いで強いっていうのかな」

 何故か精神論ばかり言うロボット。
 でも何か失敗しても沈むことはなく、むしろ向かっていく姿は見ていて気持ちがいいほどだ。

「ナパーム君は、武器庫のような装備だから、単純な火力が桁違いに強くて……」

 先代のボム使いにも劣らない火力を叩きだす。単純な火力の話でならナンバーズ1。性格でさえ、冷静なもので起伏が少ない程度。

「クリスタル君は……本当に苦手。でも戦闘センスや機体性能は一番強いかな」

 装甲の強度も申し分なく、戦闘センスも高いレベルをキープしていた。それに独特の占いなるものでも割と役立っていた。
 改めて弟機全員のステータスや特徴、強さを再確認する。

「うん、強いんだよ。皆、強い……」

 そう言い聞かせてモニターを再度睨みつけた。

「なのになんで僕の場所以外、真っ暗になってるのかな?」

 9分割されたモニターには今やグラビティの名前しか残っていない。そして、ステージの状況を知らせるモニターにはロックマンの文字が流れ、現在位置などを事細かに逐一報告していた。

「あんなに強い君たちがどうして? なんで負けてるの? 信じられない」

 もし負ける事があるとするならば、自分だけであろうと本当に思い込んでいた。それがどういう事か、自分以外の弟機たちが次々と消えていく。
 途中から次は自分のステージへと来れば良いのにと願っていた。けれど綺麗に避けられて余された。

「もしロックマンを倒せたとしても、僕1体だよ? ナンバーズが1体だけ……」

 歴代のナンバーズは、特殊な条件下だったモノ以外はすべて破壊されて現存していない。だからこそ本当の独りだ。

「夢なら酷い夢だよね……」

 自分らしくない言葉が次々と口から飛び出て、その都度「あの子みたいだ……」と思い出されて気分が沈んでいく。
 報告によれば、ロックマンはもう間近に迫ってきている。時間の問題だ。

「……もう起きたい、もう十分だよっ」

 さすがに素直に自殺願望は口から出てこない。それは博士を裏切ると同じ事で憚れた。でも心の中、コアが叩き出し示すモノは、まさにそれと同じ願い。

「夢じゃないなら、今すぐ寝かせてよっ……!」

 最後の1体の悪夢。



初出 2013.3.24
修正 2018.1.23 重力話
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