▼ トリック…?
 都市攻防戦の中をDWNとDRNがその他ロボットと軍隊に紛れて衝突する。
 DWN側は目立った戦力はなく、ほとんどが陽動を主としたメンバーばかりで構成されていて、他のロボットなどのサポートに徹している形だ。
 けれどもそこはDWN。サポート要員だけでもかなり面倒な事を次から次へと披露する。
 それは、当然のようにDRNであっても対応に振り回される。

『こちらトルネード。ジュエル、そちらにタップマンが走り抜ける。気をつけろ』
『了解よ』

 空からトルネードが街全体を見下ろして逐一報告していた。ジュエル以外にはギャラクシーやプラグなどが応援に来ている。
 そして、ジュエルは索敵範囲を確認して、高速移動してくる反応を捉えた。

「さてと足止めできるかしらね」

 ジュエルに高速移動の能力はなく、あるのは特殊武器ジュエルサテライトのみ。それでもそれなりの攻撃力と防御力はあるため、タップマンが通過予定の道路へと飛び出して展開する。

「お久しぶりね! タップちゃん!」
「うげっ、ジュエル姉!」

 高速で移動するタップマンの前方に陣取り、ジュエルサテライトを容赦なく放つ。タップマンを追いかけていた武装ヘリもジェエルの登場に気づいて上空へと舞い戻っていた。
 一瞬でも挟み撃ちで捕えることが出来るかと思えば、タップマンはそのままの勢いで高く前へと飛び上がると、タップスピンを展開してジュエルの攻撃をすべて弾き飛ばした。
 そしてそのままジュエルの上を飛び越えて得意げに着地してやり過ごしてしまう。

「勘弁してよ! 俺、弱いんだから! 怖くて死んじゃう!」
「私の攻撃を全て弾き飛ばして何処が弱いのよ! 相変わらず口が減らない子ね!」

 高速移動するタップマンを一応追いかけながら叫ぶような会話する。それでもすぐに追いつけないぐらいの差が開き、ジュエルは諦めたように足を止めた。

「まったく、やっぱり逃しちゃったわね」

 その声は、叫んで会話した時よりも落ち着いて、しかも余り悔しそうではない。それどころか、少しだけ笑みが漏れるほどだった。それからまたトルネードや他の仲間たちの情報交換のための通信が飛び交う。
 まだ戦闘は終了していない。ジュエルも気を取り直して次の行動を開始する。


 問題のタップマンは、環状線に沿って高速移動しているため移動先の見当もつけやすく、回り込むルート算出も簡単でありがたい。だからこそ、街中の路地を縫うように走って近道を選んでいく。
 運良く前に出る事に間に合ったならば、再挑戦を意気込んでいた。

『DRN発見、処分スル』
「え?」

 ふと開けた路地に出た直後、機械音丸出しのようなロボット音声に驚いて足を止めた。重たそうな音をさせて響く足音は複数のモノ。
 振り向いてから確認すると、さすがに表情が引き攣る。いつかの状況を思い出させるような武装ロボットが集まっていた。

「もうなんなの!? DWN側のロボットにしては型式も違うのは確実よね!?」

 慌てて路地を引き返して弾幕を避けるが容赦ないソレに身の危険は今日の対DWNの比じゃない。明らかに牽制などという生易しいものではなく、破壊しに来てる容赦無い攻撃だ。

『DRNモDWNモ処分スル』
「冗談じゃないわよ! どうしていつもこんな奴らが関わってくれるのかしら!」

 後ろからの弾幕のような攻撃で周囲の壁が削れて破片が飛び散り、装甲にあたるが気にせずに路地を駆け抜ける。そして、両方の壁がビルなどの建物ではなく比較的薄めで程よい高さになっている事に気がついて飛び越えられるか迷う。
 だが迷ったせいでタイミングを逃した事に気づき、慌てて真っ直ぐ道なりに走り抜ける。するとそこで弾幕のような攻撃以外のモーター音がして後ろをチラリと振り向いた。

『ちょっとおじゃましまーす!!』

 その場違いな明るい声と壁が砕け落ちる音と共に現れたのは、先ほど見失ったはずのタップマンだった。
 壁を蹴り破った際に、先頭に居た数体を押しつぶし、残りの数体の弾幕のような攻撃もタップスピンで弾き飛ばしながら突っ込んでいく。
 すると簡単に武装ロボットたちは壁に押し潰され、壁に叩き付けられてと完全に沈黙した。

「貴方って子は……」
「俺の大勝利! イエイ!」

 勝ち名乗りを上げるようにしてVサインで決める。
 敵であるはずのタップマンが呑気にそんな事をするものだから、ジュエルはため息しか出て来なかった。

「お礼……と言いたい所だけど、それとコレは別よね!」

 キラリとジュエルサテライトを光らせて手にすれば、今度はタップマンが顔を引き攣らせた。

「うげ! どうも失礼シマシタ!」
「あ、コラ! 待ちなさい! タップちゃん!」

 逃げるのは相変わらず素早く、壊した壁の反対側を軽く飛び越えてその場からいなくなった。ジュエルは、そんな後ろ姿を見送ってクスリと笑っていた。

「ほんと口だけよね……」

 そして、通信でタップマンを見失った事を告げた。




初出 2013.1.26
修正 2016.11.15 独楽話
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