▼ 夢とロマンと現実と。
夢とロマンと現実と。

「月には兎が居て餅つきしているなんて発想、可愛いよね」

 専用回線でスターマンが楽しそうなデータを流した。それに反応したのは、現在同期しているグラビティーマン、ジャイロマン、クリスタルマンの三体。残りの四体は、各々任務中ゆえにオフラインとなっている。

「宇宙線降り注ぐ真空砂漠なのに」
「あえて言わないのがマナーだよ! グラビティー!」

 まるで現実という冷水を浴びせるようにグラビティーマンがデータを流していくと、スターマンが少しだけ不満そうにしていた。けれど他の二体もグラビティーマンとさして変わらない反応を流している。
 お互いが何をしているのかは、直接わからないものの想像は容易い。スターマンがいつものように人間の文化的な創造物を鑑賞していると他三体は判断していた。

「……餅つきは無理だろうけど、兎なら置いて来れるんじゃない?」

 予想外の話の流れに対し、残った二体が困惑の反応を流す。普段ならグラビティーマンがバッサリと切り捨てる。それは、全て綺麗に真っ二つだ。重力で相手を押し潰すかのように容赦の欠片もない。それでも懲りないのがスターマンで、手加減を知らないのがグラビティーマンだ。それなのに歩み寄るような話の流れは、話の終わりが見えなくなる事が予想された。

「真空パックされた兎なんて可哀想だろう!」
「居る事に変わりないし、腐らないよ?」

 明らかにズレている。他の二体は、データを確認するまでもなく同じ事を考えていた。そしてこのままの成り行きでは埒が明かないという事も察し始めている。それでもここで会話を終わらせては、経験則から悪化の危険性を考慮してしまい、完全に二体の会話の成り行きを見守る体勢に入る。

「月に置いたら日向では焼けるし、日陰では凍るし、散々じゃないか! 最早それは保存性高い肉だよ!」
「なら兎ロボットにする? 地上用なら既にあるよ?」
「それが良いね!」

 スターマンの言葉こそ一番容赦がない。それにはデータを受け取っていただけの二体も会話の方向性に呆れていた。けれど危険性が無いとわかった所で興味は失う。加えて予想外にも会話の終わりの気配に各々が目の前の作業に処理を割こうとした時、それは投下された。

「ついでに月面基地の計画案を提出する事にしたから、作成した資料確認しといてね」
「さすがグラビティー!」
「どうしてそうなる!?」
「いい加減にしてくれませんか?」

 後日、オフラインだったメンバーに経緯説明を求められ、ありのままを話せば二体と同じような反応で諦め納得していた。



メモログから持ってきたネタに少しだけ肉付けしてみました。

初出 2024.6.19 他ログ
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