とある研究所の制圧。
何処かしらの国が管理している研究所という事ではないので、物理的にも大した任務ではない。けれど手抜きをして良い任務なんてあるはずもなく、だからこそ圧倒的な力でねじ伏せるように短時間で制圧した。既に喧しい音を出すモノは悉く無効化されている。
「さすがだな、グラビティー」
不意に聞こえた天井からの声。呼ばれた本人は、研究所のメインコンピュータに集中して意を返さない様子だが、表情だけは微かに変化しているようだった。それを天井に居る原因が気づく様子は無い。
そもそも現在の状況において呑気な会話は不要。何故なら今現在も継続して研究所は制圧され続けており、彼らのいる一室では自然な重力を更に強めた事で本来の主である者たちが悉く立っていられない状況へ追い込まれ、現在も床へ平伏したままだ。
それは間違いなくこの場の誰もが平伏すはずの強化された重力場。なのに天井から呑気な声が聞こえてくる。グラビティーマン以外に例外は存在しないはずだが、百歩譲って同じDWNとして考えれば少々耐えれたとしても問題ない。
けれど天井に立つという事自体がそもそも床に居るよりも手間がかかるという事を鑑みれば、天井に平然と立っている様子は、明らかに何かの意図を勘ぐられても仕方ない行動だった。
「君は、相変わらずだね」
磁力を操るマグネットは、宇宙空間での作業と同じ要領でフットパーツに磁力を集中させている。そのため重力がどちらに向こうと平然と歩き回っていた。
広範囲の重力反転に巻き込まれても平気な点では相性がとても良い。けれど個々の考えを混ぜあわせると相性は悪い。
マグネットマンは問題ないが、必ずグラビティーマンの機嫌が悪化する。それがこの組み合わせの確定事項になっていた。
「僕に対して天井から話しかけるって、良い度胸してるよね」
「え? あぁスマン。今度から気をつけるよ」
通じてるようで通じてない。
グラビティーマンは、わかっているからこそ尚更機嫌を悪化させる。そして、マグネットマンは、素直に受け取ってグラビティーマンが少し扱いにくい部類かなと判断し機嫌取りに奔走する。
それが更に悪化させる原因となっているのにも気付かずに。
「君たちって、特殊な子たちばかりだから嫌なんだよね」
ポツリと呟くグラビティーマンにマグネットマンは首を傾げていた。
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重力の方向を変えるぐらいじゃ、平然と歩き回るマグネット。
それを見てギリィッと歯を噛み締めてるグラビティー。
でも本気の重力強化には強くないマグ。スターは耐えれる。
そんな感じですね。
初出 2016.2.12
修正 2024.5.12 重力話