とあるロボットが2機、郊外を歩いて行く。
基地にある転送ポータルは、思うほど万能ではない。基本的にセキュリティーの関係上、相互で登録された転送装置の間でしか使用出来ないため、中途半端に外れた場所では昔ながらの移動方法を取る。更に今回は、車両を使って目立つ事も厳禁。残された手段は、徒歩のみ且つ大人数も憚れるのでお供もなしなのは仕方がない。
そんな中、もう少し歩けば部分的に舗装された道すらも無くなろうかという所まで差し掛かる。
「ハードー!」
呼ばれた本人の後ろから不満を募らせた声が上がった。
声だけでも表情の見える様子に何事かと足を止めて呼ばれた本人――ハードマンが振り向く。するとガチャガチャと不満を表すようにフットパーツを鳴らして後ろからタップマンが同じように歩いて来ていたが、予想以上にタップマンが離れた場所に居た事でハードマンは驚く。
「どうした?」
「どうしたじゃないだろ! 歩くの速ェよ! 馬鹿!」
そう言いながらも未だに追いつけない事が不満らしく、ガチャガチャと音を立てて歩みを進めている。とても珍しい様子にやっとハードマンが気がついた。
先ほどまでスイスイと滑走して騒がしかった事に対し、今は自慢のフットパーツの駆動部をロックして歩いている。遅い事も頷けた。
「滑らないのか?」
「滑れないんだっつの!」
その声でもって八つ当たりするかのようにタップマンが強く不満を表した。今更ながらハードマンが足元の先にやっと気付いた。あまり都会ではない郊外に差し掛かった場所は、舗装が所々剥げていたりデコボコと不完全な道が多い。いっそ舗装も全て無い土がむき出しの方が邪魔なものも少なかっただろうという有り様なのだ。
普通に歩く分には何ら問題ない場所でも、滑走で移動を主とするタップマンにとっては厄介で面倒な道でしかない。
「はぁ〜、こんな事ならオフロード用のパーツ付けてくれば良かった。失敗したー」
ハードマンの隣に辿り着いたタップマンは、肩を落としてそう言う。
確かにタップマンの足元は、特別な任務でも戦闘でもないからと普段と変わらぬフットパーツのまま。強いて言うなら、いつもより汚れているような状態だ。
「無理するな」
「あ、負けるか! 今日は自分の足で移動するって決めてんの!」
見かねてハードマンが手を差し出すとそれから逃れるように歩き出すが、いつものように滑走できない相手を捕まえる事は簡単だ。タップマンが自分を捕まえるハードマンの手を剥がそうと抵抗する事も虚しく、何事も無かったように肩に乗せられていた。
なんだか悔しそうに騒ぎ立てているが、内容を聞いたハードマンは、クスリと笑ってしまう。
終
初出 2013.1.19
修正 2024.5.26 硬独楽
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