25  




夜風は涼しくて、熱くなった顔が冷めていくのを感じた。
ザクザクと鳴る砂浜を歩いていると目の前に人がいる、あの特徴的な髪型は花京院だ。

「こんなところで何してるんだ?」
「海を見ていたんだ」
花京院は、どうやら海を見ていたらしい。
花京院の隣に立ち、名前も海を眺める。夜の、静かな海だ

「…少し怖いな。」
静かな空間でざぷんざぷんと暗い海が迫ってくるとき、名前はなんだか怖くなった。
暗い海に、呑み込まれてしまいそうで、なんだか逃げたしたくなる。

「そうだね、僕も明るい海の方が好きだな
キラキラしていて、とても綺麗だから」
「…私も。」
陽を浴びている海はとても清々しくて、落ち着く。
起きていても、ジョナサンといるみたいで心地いいのだ

(本当に私はジョジョに心酔しているみたいだな)
そんな自分に引きつつもそう考えてしまうのだからしょうがない
なんせジョナサンは名前にとっては初めての友人で、親のような存在でもあるのだから。

「そういえば、朝日を浴びた時の君の眼も
海みたいな色だよね。とても綺麗だ」
「見ていたのか」
「嫌だったかな」
「いや、そんなことはない
ただ驚いただけさ」
名前はあの時花京院は寝ていると思っていたから見ていたとは思ってはいなかった。
そして、ふと。彼の両親について気になった、
先ほどの承太郎の一件もあって、そういえば花京院の親はどうしたのだろうと。

「花京院、お前親にこの旅の連絡とかしてるのかい?」
「…うーん。」
花京院が、悲しいような、寂しいような。なんともつかない表情をしている

「悩みがあるなら、聞いてやるよ。私でよければ」
そんな感情には名前も身に覚えがあった
名前は心からその悲しみを少しでも解消できれば、と思う。
そんな名前に、花京院も話してもいいだろうという気持ちになる
今まで一人で抱え込んでいたものを。荷物を少し預けたくなったのだ

「僕は、先天性のスタンド遣いでね。
…昔から“スタンドが見えない奴とは根の部分で分かり合うことは出来ない”
そう思っているんだ。…もちろん、親でもね。
家出のような形で…旅に来てしまった」
周りに理解者がいないというのは苦痛だ、
何をもっても感情を分かち合えない、何をしても楽しくはない。

「…こういうの、軽々しくいうのはあれだけど。
そういう気持ち、わかるよ。」
自分も、親しい友人はいない。
自分のことで精いっぱいで、他にかまけている暇はないのだ
幼少の頃は、生きるのに必死。その後は日本に越してきて慣れるのに必死だ
両親が死んで、生活に必死、人にかまけている暇なんてこれっぽっちもない。

「じゃあ、花京院にとっては。私たちが初仲間か」
「はは、そうだね。君らと出会えてよかったよ」
「心配しなくても、これからもっと仲間ができる
あの場所にこれだけスタンド遣いがいたんだ、きっともっといるはずさ」
トンと花京院の背中を叩く。

「きっとこれからもっと楽しくなる。
…実は私も、仲間が出来て…少し、いや。すごく嬉しい」
「…僕もだ。」
二人顔を合わせニッと笑う。
悩みを聞こうとしたのに、逆に名前が素直になったことで心が軽くなってしまった。

「でも名前。君なんだか承太郎に厳しいよね」
「ん、…んー。ま、まぁ…」
「嫌いなのか?」
「…嫌いじゃない、悔しいけど。」
クスリと笑う花京院。名前がそういうのをわかっていたようだ
名前は唇をへの字にして、なんとも恥ずかしそうにしている。

「でもまぁ、最初は気に入らなかったな
食い逃げするし、金持ちだし態度悪いし」
「はは、酷い言いようだなぁ」
「でも、まぁ正義感強いし…意外と優しいしな」
「うん、そうだね」
「…あいつの眼が綺麗すぎて、
全部見透かされそうで、うまく近づけないんだ
ジョナサンの話はしたよな?彼に似ている、当たり前だけど。
彼とも仲良くなるのに時間がかかった」
うんうん、と名前の話を黙って聞いてくれる花京院
花京院の隣はとても落ち着いて、和やかな気持ちになる。
包容力というのだろうか、これで親しい友人がいなかったなんて信じられない

「私は・・・まぁ酷い人生送ってきたもんで
醜いんだ、私そのものが。
あいつはとても綺麗だから、一緒にいるのが少し辛い」
「・・・君自身が、君を醜いと思っていても
僕は君をとても美しいと感じた。」
「・・・。はは」
「おかしかったかい?」
「あ、あぁ。最高のジョークだ、面白かったよ
そろそろ寒くなってきたし私は帰るよ、それじゃあ」


(なんなんだ、もう。顔を冷やしに来たのに逆じゃあないか!
私が美しいだって?冗談も大概にしろ!!)
名前はホテルまで全力で走って
熱い顔を運動のせいにした。


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