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目覚めたとき、深夜だった。
承太郎は神経質になっているのか寝付けない様子だった

「寝れないのか。」
「…あぁ。」
起き抜けにそう聞くと何とも無愛想に答える。

(こいつホント無愛想だよなー・・・。人のこと言えないけど)
名前も承太郎もお喋りな方ではなく、すぐに沈黙が訪れた。
沈黙に耐えかね上を見上げれば満天の星、手を伸ばせば届きそうだった

「…お前」
しばらく名前が空を見ていると承太郎が自ら会話を持ち掛ける。
承太郎は名前の顔を見つめている、名前もつい承太郎を見つめた
承太郎の瞳は相変わらず、綺麗なオーシャンブルー。
やっぱりそれはジョナサンに似ていて。現実でも、ジョナサンに会っているようで名前は嬉しくてつい微笑む。

「なんだ、空条」
承太郎は、彼女が随分機嫌がいいように思えた。
彼女は承太郎を嫌っていたのはわかっていたが
承太郎は彼女のことを嫌ってはいなかった、むしろ気に入っている
甲高くない声、べたべたとひっつかないし、性格が男らしく勇ましい。
承太郎に蹴りをかましてきた女なんてこいつが初めてなのではないだろうか。
星の下、彼女の笑顔は輝いて見えた。心臓が何かに締め付けられる感覚に襲われる

「…なんだ、用があるならさっさと言え。」
「お前の眼が…赤いのが気になった」
そう。瞼を開けてから彼女の瞳が赤いのが気になった
真っ赤な瞳。それはまるで血のような色だった
それが承太郎には酷く感応的で、吸い込まれそうだった。
その赤い眼と、自分の眼が合う度に、チカチカと目眩がする
気が付けば、承太郎は名前の眼尻に手を添えていた

「珍しいか?」
「…あぁ。」
「何故だか私の眼は夜、赤く光る」
光を取り込む量が少なくなると、彼女の瞳は
ギラリと赤く光るらしい。
ぎらぎらと光るそれは飴玉のようで、ふと舐めてみたくなる
でもそんなことはできない。

「昔、この目のせいで迫害を受けたよ。
もっとも、日本ではないがな」
「…。それは」
「…私はイギリスの貧民街で育ったんだ。」
目の前の“赤“が揺れる
一瞬、泣くのかと思った。
けれど彼女の瞳はどんどん憎しみだとか憤怒だとかそういうものに染まっていく。
赤が、どんどん攻撃的になっていった
だがそれも名前が承太郎のオーシャンブルーを見た瞬間、その感情は溶けて消えた

「私は琥珀の瞳も、赤の瞳も嫌いだ。…昔を思い出す」
「……。」
イギリスの貧民街。
そんな過酷な所で育った人間はどういう気持ちなのだろう
承太郎は考えたことはなかった、
だが、悲惨なのだろう、辛かったのだろうというのか彼女の表情でわかる。
お互い、だんまりだった。眠る気になれなかったのは名前も同じのようで
二人でずっと星をみていた、とても心地のいい時間だった。

次第に、夜は明けていった。

「…空条。」
「…なんだ。」
「こんな私でも、朝だけは、自分を好きになれる」
どういうことだと、承太郎は思案する。
朝の太陽を気持ちよさそうに浴びている名前。瞳を見ると、自分と同じオーシャンブルーだった。

「それは…。」
「朝日は好きだ、清々しくて優しい。一日が始まる光
朝日を浴びると私の瞳がオーシャンブルーになるんだ。
なんだか、私の全てが綺麗になった感覚がする、
朝だけは、ジョナサンと同じ、綺麗な人間のような気がする」
珍しく饒舌な名前。
潮風になびいている漆黒の髪、輝くオーシャンブルー
承太郎は自分の瞳より、幾倍もキラキラとキラキラと輝いて見えた。
夜の赤の妙な色気、
それとは打って変わって朝の彼女は、清々しく
見ているだけで心が洗われる、まるで聖女のようだとも思えた。


ストンと。軽い音がした
あぁ、これが恋なのかと承太郎は案外それを認めるのに時間はかからなかった。

(こんな状況で女を好きになるなんてな。)
空条承太郎は苦悩する。


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