16  




横をみるとジョセフはぐっすりと寝ている。
おいおい着いたら起こしてくれるんじゃあなかったのか?
お前が熟睡してどうすると思いつつ
仕方ないなぁ、と自分にかけていた毛布をジョセフにかける。

しかし眠気も覚めてしまったし暇だ。
どうしようかという時にそう言えばバックに画材が入っていたな、とスケッチブックを手にすると、いつの間にかペンが握られていた。

「こんなスケッチブック入れたっけ。…まぁいいか」

名前は迷わず両親の絵を描いた。
あの時承太郎が思った通り、名前はあの頃に戻りたかった
両親がいた時が名前にとって一番幸せな時期だったからだ。
あの頃、の時間は大画面のテレビの前で真ん中に私、左右に両親でソファーに座ってバラエティ番組を見ていたなぁと思い出し笑いをしながらソファーに座る私と両親を描く。
つまらない番組だったけれどあの瞬間、あの場所が楽しかった
息ができないほど、心臓に喜びに満ちていて、涙が出るくらいあの場所が好きだった。

「…帰りたい。」
つい、一粒だけ涙を紙に落としてしまった。



**
『名前ちゃん、見てこの芸人さん面白いわっ!』
右隣には嬉々としてテレビを見ている母親の姿。
左隣にはニコニコと微笑ましくその光景を見つめる父親、
目の前には見覚えのある大きなテレビ。
周りを見るとヨーロッパ調の家具が綺麗に配置されている、

「ここ…。」
昔住んでいた名前の家だった。
一体何が起きているのだろう、夢だとしてもいつもと様子が違うしなによりジョジョがいない。

『名前ちゃん?どうしたの』
明らかに目線の高い母親の姿。
自分の手や足を見てみるとやらり小さい、
恐らく小学生あたりの年齢くらいだろう。

『名前、どうしたんだ?眠いのかい。』
じゃあベットにいこう、今日はどんな本が聞きたい?そう言う優しい父親。
これはまさしく名前が望んでいた世界だった。どこまでも優しくて、ふわふわと幸せが漂う空間、名前が最も愛した時間。

「…シンデレラがみたいな」
『よしっ、任せろー。俳優さんも驚くような演技で読み聞かせをしてやるぞー!』
『はいはーい!私ねー。魔女役やりたいわぁー』
ふふ、母様。そんなにはしゃがないでよ
え、シンデレラ役は私?私まで読み聞かせに参加したら眠れなくなるじゃあないか。

『まぁ、僕のシンデレラは君だけだけどね・・・』
『やだ・・・あなたったら・・・。』
はいはい、二人の世界に入ってないで早く寝室に行こうよ
本当に母様と父様は相変わらずだなぁ、まぁそんな二人が好きなんだけどね。

あぁ、明日も一緒に絵本を読もうね。

**
...い!、―おい!苗字!!

「…ッ!?」
バッと勢いをつけて起き上がると目の前の座席に頭をぶつける。
アイテテと額を抑えながら隣を見ると眠っているジョセフがいる
じゃあだれが起こしたんだと反対の方を見ると承太郎が名前を覗き込んでいた。

「ぬわぁっ!?
お、驚かせるなよ…!」
「…やれやれ、驚いたのはこっちだぜ。」
いきなり近くに美形が映り込んできたものだから不覚にも心臓がドクドクと波打ってしまった。本当に不覚だ
承太郎はまさに呆れた、という顔でこちらを見ている。

「…私そんな呆れられるような寝言でも言っていたのか。」
名前がムッとしながら承太郎に尋ねても「何でもねぇぜ。」というばかりだ。
じゃあなんでそんな呆れているんだよと問いかったが時すでに遅く
通路を挟んだ左隣の席へ移動してしまった。その奥の花京院も安らかな睡眠をとっている。チラリとアヴドゥルさんのほうを見ると夜景を眺めていた。

しかし、さっきのことは何だったのだろうか
夢…だったのだろうか。それにしてはリアルすぎた
いやあれは私の過去が明晰夢として見ただけなのだろう。こういったことは深く考えないほうがいいとジョナサンが現れた時に学んだことだ。

名前は頬をぺしぺしっと叩いて気持ちを切り替える。
頬が熱い…熱が上がったのだろうか、まぁ明日になれば引くだろうとペンを持ち予知夢の内容をできるだけ詳しくメモに残す。


さっきの名前はなんだったのだろう、
泣きながら笑っていた。
起こさないと、彼女がもう二度と帰ってこれない気がして
名前を呼びながら名前の肩を揺する、起きろ、起きろよ苗字。
クソ、なんで俺はこんなに焦っているんだと
承太郎は一際大きな声で名前を起こす。
するとバチッと目を見開き目の前の席に頭をぶつける名前、
それに話してみても意外とケロッとしているものだからあんなに心配してしまった自分がバカらしく感じた。

(全く、心配するんじゃあなかったぜ・・・。)
通路を挟んだ隣の名前の視線から逃げるように
帽子を少し深くかぶった。


prev / next





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -