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前髪様2





「イデデデデ」


腰が痛い。
昨日の体術で伏黒先生にポイポイ、それはもうペットボトルでも投げてるんじゃないかってぐらい簡単に投げられて打ち付けた腰が痛い。ペットボトルを投げるように簡単に投げられたと言っても、高速で投げられて受け身を取れと言われてもあんな高速で投げられては無理。しかも、楽しんでいたのか最後の方なんか私の両腕を掴んで体をぐるぐるとぶん回してぽーいっと投げるもんだから目が回って受け身どころでは無かった。くそっ、何で皆は任務だったんだ!皆がいれば私が伏黒先生とマンツーマンの体術の授業なんてやらずに済んだのに。ちなみに最後は多分気絶した。気絶して、何がどうして自分の部屋で寝てたのかは知らないけど目が覚めたら自分の部屋だったわ。ついでに目覚まし掛けて寝てた訳でもないので見事寝坊、只今絶賛遅刻中。そして、今日は一時間目からまた体術でどっちにしろ無理。
そんな昨日の今日な訳で、華奢でもない私の腰が痛みまくる。硝子いるかなー反転術式で治してほしいなと思いながら携帯を開いて見ると…


「げっ…めっちゃ来てる」


前髪様からめっちゃメールやら着信が来ていた。


『や、一人で寂しくないかい?(^_^)』
『私達は今日、任務で帰りが遅くなりそうだけど何時ぐらいまで起きてるかな?会いたいな(^_^)』
『返事がないがどうした?』
『心配だから返事してくれ』
『まさか私を無視しているのか』
『無視していいと思っているのか』
『私を怒らせるな』
『今から帰るよ』
『服も着替えないで寝ちゃう程疲れたのかい?心配したけど、可愛い寝顔も見れてほっとしたから私も寝るよ(^_^)』


確実に侵入されてるぅぅぅう!


メールを順番に開いていく毎にヤバいヤバい、コワイコワイと思って、携帯を握る手に汗をかきながら開いていったら一番最後のメールがとんでもなかった。これ絶対に私の部屋に侵入してるよね!?着替えないでって布団まで剥いで見てるよね!?そして、ばっちり寝顔見て帰ってるじゃん!!


あの前髪め、どうやって侵入したと言うんだ。
窓も閉まっていたし、ドアの鍵も掛かっていた。ちょっと鍵をぶち壊して侵入して来たのかと思ったけど、鍵もドアも壊れていなかったみたいだし。どゆ事?まさか、呪霊操術?そんなサイレントで鍵を開けれる都合のいい呪霊なんているのかな…でも、奴ならやるかも…
謎だ、謎過ぎる。ていうか、いろいろヤバい。最近の前髪様はヤバいのが加速していると思う。最初はただ優しいかったのに、それが段々と私に対して高圧的な態度に変わり、セクハラ、そして先日のキ、キキキキス。
ぎぁぁぁあ思い出したら恥ずかしいぃぃぃぃ!


「あ、いたいた」


一人廊下で悶々としながら歩いていたら、硝子が来た。


「おはよう」


「伏黒先生がまだ夢が寝てるかもしれないから、見て来いって」


「あはは、見事寝坊しました」


「珍しいじゃん」


迎えに来てくれた硝子と談笑しながら、昨日散々ポイポイ投げられたグラウンドに向かうと五条と夏油がウォーミングアップでトラックをランニングしている。既に柔軟までは終ってたようだ。伏黒先生はいつものつまらなさそうな表情で階段に座っていて、これから寝坊で遅刻した上に腰が痛いので今日の体術は見学にさせてほしい。と伝えると思うとちょっと言い辛くて身構えてしまう。大丈夫だと思うけど、思うけど…良い辛いもんは言い辛い。


「お、おはようございます。後れてすいません」


「おー来たか。良いご身分だな」


だるそうにこっちを見た伏黒先生に挨拶をしたところで、あれ?夏油がトラックのコースを外れて一直線にこちらへ凄いスピードで向かって来ているのが見える。


「うっ、すいません…そして、遅刻した上にとても言い辛いんですが…」


「なんだ」


「そのーちょっと今日は見学に、してもらいたいです」


「あぁ?」
「や、夢」


「えと、あの…おはよう」


伏黒先生の声と被って挨拶をしてきた、満面の笑みで全く息が切れていない夏油にとりあえず挨拶だけして、また伏黒先生の方を向く。夏油に聞きたい事があるけど、それは一旦後だ。


「昨日ので腰が痛くて無理です」


「それは大変だ、大丈夫かい?」


「あぁ、そういう事ね」


「正直、歩くのもちょっと痛いぐらいなので無理です」


「俺がやりすぎたか。良いぜ、見学しとけ」


ありがとうございます。と言って階段にゆっくりと痛む腰を庇いながら座り、夏油に名前を呼ばれて顔を上げると眉間にシワを寄せて険しい顔でこっちを見ていた。
顔コワッ。美形が怒ると迫力がある。何?さっきまで心配してくれてたようだったのにどうしたのだろう。


「腰…どうしたんだい」


「昨日、伏黒先生に(授業で)乱暴されまして…」


「あれでも手加減して(投げて)やったっての」


「あんだけ(投げられて)腰打ち付けられたら無理です!」


「ハッ次は、と、なんだぁ?夏油」
「わぁぁっ!?」


本当にどうしたんだ夏油。
怖い顔をしてるかと思ったらいきなり伏黒先生に殴りかかった。いつの間にか近くに来ていた五条も驚いている。


「アンタ…本当に、ヤったのか」


「あ?あー…そういう事ね」


何かを理解したような伏黒先生がニヤリと笑うと夏油を腕を掴んで投げ飛ばした。空中で一回転した夏油が難なく着地したのを見て思わず拍手。私もあーゆー動きが昨日出来れば腰も無事だったのに。やっぱり私、運動神経悪いんだろなぁ。


「夢は俺がヤった」


「そうか…死ねぇっ!!」


「「「えっ」」」


怪しく笑う伏黒先生に夏油は後ろからありったけの呪霊
を繰り出して襲い始め、ただただ驚く私達。

本気じゃん夏油!?何がどうして夏油がブチ切れたのか不明。あれ?先生


「で、マジでヤったのあのオッサンと」


「?皆居なかったからね」


「えー大胆じゃん。夢って伏黒先生がタイプだったんだ?夏油可哀想」


「タイプ?可哀想?」


「で、感想は?テクは?」


硝子も五条も何を言ってるんだろう。そして、五条はそのニヤケた顔止めてほしいし、激しいさを増す伏黒先生と夏油の戦い止めなくていいの?止めれるの五条しかいないからね?あ、グラウンド抉れた。


「テク?テクニックも何も腕掴んでぐるぐるぽーいよ」


今度は硝子と五条が顔を見合わせてから、呆れたような視線を寄越してきた。なんか馬鹿されてる気がするぞ。


「何よー」


「ややこしい言い方すんなよ」


「伏黒先生の高速ぐるぐるぽーい凄いんだから!全く受け身取れなかった、めっちゃ腰痛い」


「まっ、そんな事だろうと思ったけど。んで、あのオッサン分かって傑の勘違いに乗ってやったって訳ね」


?????

硝子も五条何を言ってるのかよく分からないが夏油は何かを勘違いしてキレているらしい。


「よくわからないけど五条止めてよ!五条にしかできないよ!」


「わーったよ、止めればいいんだろ」


「ちょっと何してるの?」


止めればいいんだろと言った五条は芝生に寝そべり私に手招きをしている。さっきから全て意味が分からない。分からないが寝そべる五条に近づくと腕を思いっきり引っ張られて体勢を崩してしまった。


「ちょっと、何?はーなーしーてー」


放してって言ってるのに、放すどころかぐいぐい引っ張り五条の上に乗れとか言ってくる。
この馬鹿力が!五条の近くに膝を着いた体勢から、乗っかるもんかと踏ん張るけど…


「うわぁ!」


「はい、またいでー」


ちょっと止めてと抵抗するもどんどん五条の思い通りによくわからない体勢ににされていく。引っ張られても踏ん張るこの状態って散歩の終わりに家に戻りたくない犬と飼い主みたいだな、なんてどうでもいい事を考えていたら五条の上にまたがり見下ろすよく分からない姿勢になったし、手はこうねーと言って五条の手の上に重ねる形になった。全くなんなのだ。


「ワーナニスルンダー」


何するんだはこっちのセリフだ。よく分からない体勢の次は棒読みで五条が叫び出して、手を放そうと躍起になる。


「キャー五条が夢に押し倒されてるー」


「硝子!?ちょ、何?助けてくれない?ちょ、放し、イッタ、イタタ、うえっ」


「夢…君が、そんなに、欲求不満、だったなんて、知らなかったよ」


ずっと、ずーーっと理由が分からないままだけど、今分かる事は戦っていたはずなのにいつの間にか現れた前髪様が私の頭を鷲掴みにしたと思えば、腹に腕を回されて五条から放され、米俵のように肩に担がれていると言うことだ。ついでに怒っているのをビンビンに感じる。


「傑ー助けてくれてアリガトー」


「なんだ、もう終わりかぁ?」


「すまないが私はあんたを倒すより先に夢を躾なくてはいけなくなった、失礼するよ」


「「バイバーイ」」


「えぇーちょっとーー!?」


前髪様に担がれて運ばれてグラウンドを去る姿を五条と硝子は笑顔で手を振って見送っていた。


end.


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