親分と一緒
最近、夢が権八郎達とコソコソ何かしてやがる。
3人でコソコソ話している所に俺様が行くと話を止めて、夢が今まで話してた内容と絶対違う話題を振ってくる。
そんでもって今日は朝から姿が見えねぇ。
気に食わねぇ。
俺様の子分のくせして、隠し事しやがって。
数日前に夢を取っ捕まえて、問いただしても「なんでもない!なんでもないよっ!?だから怒らないでー!!」しか言わねぇし、それでも問い詰めてたら涙目になって逃げていった。
アイツ逃げ足だけは速いんだよな。
面白くねぇ、面白くねぇっ!!
イライラしながら、廊下を歩いていると縁側で女にでれでれした顔の紋逸を見つけた。
「痛ァァァ!?何すんのっ!!」
「うるせぇ、ちょっと来いっ!!」
色々とムカつくので紋逸を一発殴り、そのまま紋逸を引っ張ってきて問いただす事にした。
蝶屋敷の裏側、人気が少なさそう所まで来てギャアギャアずっと煩い紋逸を離した。
「何すんのさァァァァ!?」
「うるせぇ!!お前ら何コソコソしてやがるっ!!言えっ!!」
「はは〜ん?夢ちゃんとあまり話せなくて拗ねてるんでしょ〜?」
「はぁ!?うるっせぇっ!!何を隠してるのか教えろっ!!」
「拗ねてるところ悪いけどそれは教えられないな〜。夢ちゃんと俺らのヒ・ミ・ツだからさ!でも、そんなに心配しなくても、痛ァァァ!!ちょっ、だから叩くなよぉぉぉ」
「フンッこの弱味噌がっ!!」
もう聞いても言わねぇようだし、コイツとこれ以上話すのもイラついてしかたないので最後に強烈な一発をお見舞いして、紋逸の前から移動する。
後ろでギャアギャア言ってるが知らね。
今日はどこをうろついても夢がいねぇ、まだ一度も見てねぇ。ついでに権八郎もどっか行っちまった。
「俺様の子分のくせに…」
もう、イライラしてしょうがねぇから一旦、戻って昼寝する事にした。
夕方に伊之助が寝ている部屋を覗くものが数名。
「寝てる寝てる。炭治郎、善逸、準備はいい?」
「いいぞ」
「うん」
2人の返事を聞いて伊之助の寝ている部屋に夢は音をたてないように忍び足で入っていく。
伊之助の前に来ると…
「伊之助っ!!お誕生日おめでとうぉぉ!!」
「うおっ!?」
思いっきり伊之助に向かって叫び、驚いた伊之助は飛び起き、目を見開き状況がよくわかってないのか固まる。
「「伊之助おめでとうぉぉぉ!!」」
そこへさらに炭治郎と善逸が紙吹雪を撒きながらにっこり笑い、夢の後ろに来る。
「なっ、お前ぇ!?なんだその格好はっ!?」
「何って、親分と同じだよ?どー親分?」
一度、着てみたかったんだ!!子分として。と得意気に腰に手を当てる夢の格好は正に伊之助と一緒。下は隊服に腰巻き。上は裸で胸にはサラシを巻いているだけ。
「伊之助嬉しいだろ?夢と同じだ!!俺たちからの誕生日祝いだ!!」
「み、見るんじゃねぇぇぇ!!」
「わぁっ!?」
驚いて固まっていた伊之助が意識を戻すと夢の体に腕を回し、そのままの勢いで夢を自分の布団へ引きずり込み、抱きしめて隠す。
「い、伊之助!?ちょ、何してんの!?」
「そ、そうだぞ伊之助!!破廉恥だぞ!!」
伊之助の予想外の行動に善逸も炭治郎も頬を赤くして焦り、布団を剥がそうと引っ張る。
しかし、伊之助は布団を剥がされまいと布団の上から腕と足を巻き付けぎゅうぎゅうとしがみつく。
「ぐ、ぐるじぃ…親分、骨、折れる…」
「うるせぇ、お前らコイツ見んじゃねぇぇぇ!!」
「わかった、わかったから伊之助!!このままじゃ夢が潰れる!!」
「お前らが出ていくまで離さねぇ!!」
このままでは夢の骨が折れるか、伊之助の胸に顔を押し付けられて窒息してしまいそうなので慌てて炭治郎と善逸は部屋を出ようとする。
部屋の入り口まで離れると炭治郎が「ご馳走が待ってるから早く食堂に来るんだぞ」と言い残して善逸と部屋を離れて行き、廊下からは「あ"ぁぁぁー伊之助ずるいー!!」と善逸の叫びが木霊した。
「ぷはっ、はぁ、親分苦しいよ」
力を緩めた伊之助の胸から夢が顔をあげた。
「お前、裸なんかアイツらに見せるなよ」
「だって親分と同じ格好してみたかったんだもん」
にへらっと笑う夢の顔を見ると胸がバクバクして苦しい。
「伊之助…親分、お誕生日おめでとう」
そう言って伊之助の胸にすり寄り、背中に腕を回された時、胸のバクバクが加速したのでこのままじゃ死ぬ!?と思った伊之助は慌てて肩を掴んで引き離した。
「お、おぅ…」
「よし、じゃあ親分!!ご馳走!!食べに行こう!!」
立ち上がった夢が笑顔で伊之助の手を引いて起き上がらせる。
食堂につくと皆に「お誕生日おめでとう」と言われ恥ずかしい気分になったが悪い気はしなかった。
「夢ちゃん、その上の隊服はどうしたの?」
「わからないけど親分が何処からか持ってきて着せられたー」
口には出さなかったがコイツ誰かの隊服掻っ払ってきたなと善逸は思った。
「親分、何かしてほしい事ない?」
「あ?」
両手に天ぷらを持ち、むしゃむしゃ食べながら考える。
「お、あれやれあれ!!あの耳がほわほわするヤツ」
「耳かきね、喜んで!!」
「炭治郎〜何この人達、見てるこっちが恥ずかしいよ」
苦笑いするのは炭治郎だけでなく、その場にいる面々が同じ事を思ったが今日だけは突っ込まないでおこう。なんせ1年に1度の誕生日なのだから。
こんなに甘々な匂いとドキドキするような音をさせておきながら今のところの関係は親分と子分。
その関係が恋仲に発展するのはすぐ先か、はたまたもっと先なのか。まだまだお子様な2人にきっと周りはいろいろ巻き込まれたり、振り回されたりするんだろうな。と炭治郎と善逸は思ったが2人が幸せになるためなら自分達はそれでも全然いいと2人の笑顔を見ながら思ったのだ。
end.
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