不満があるのは誰の奥様?
家事を終えた奥様。旦那様はキメツ学園の教師を勤めている。このキメツ学園の教師は、4人が生徒と結婚し、ちょっと一時期話題になった。そのうちの一人の奥様がなにやらため息をついている。
どうやら何か思う事があるようだ…
スマホを手に取り、何処かに電話を掛け始めた。
「酷くない!?」
「まぁ…らしいっちゃ、らしいよね」
「私、一度も好きだとか、愛してるだの言われた事ないの」
「でも、愛されてるって伝われば充分、じゃない?」
「それはいつも言われてるからだよ〜」
「そ、そうかな〜?」
「図星だね?いいな〜優しそうだもんな〜」
「でも、皆言うのかな?」
「うーん、確かに皆に聞いてみようかな?」
「聞いてみて!私も知りたい!ねぇ、ねぇ、また今度ママ会やろうよ!」
「おっけー♪じゃあ、皆に質問しがてら、ママ会のお誘いしてみるね。いつがいいかな?」
「私はいつでも大丈夫かな?平日なら親に子供預けられると思うし、土日なら旦那が面倒見てくれるはずだから。楽しみ出来てうれしい!ありがとう!」
「いいなー優しそうな旦那さんで。じゃあ、また日程決まったら連絡するねー!」
2件目
「好きとか愛してるって言われるかって?」
「私、直接言われた事ないんだよね。やっぱり皆あるよね?」
「あるけど…言われても必ずしも嬉しいと思うかは限らないよ?」
「そ、そうなの?嬉しくないの?」
「だって、こちらをジッと見てるなぁ、なんだろ?と思って目を合わせたら、いきなり『あぁ、俺も愛してる』だよ?『え、俺もって何が?』って聞いたら、『お前の目が俺に愛してると訴えてきた』そんなカオスな愛してる貰っても喜べないわけ」
「独特すぎる(笑)…流石だわー流石としか言いようがない」
「目を見たらだめなの、目を合わせたら私の負けなのうちは」
「メデゥーサみたいな扱い(笑)」
「そうだよ?目を合わせたら、勝手に変な妄想スタートだから、まともに会話できないんだから!思い出したら腹立ってきた!なんなのあの宇宙人!」
「ごめんごめん!変な事聞いた私が悪かった!」
「昨日だって、『なんだ、カレーじゃなかったのか』って言い出して、私そんな事言ったかな?って思ったの、そしたら『夢の中で、明日はカレーにする?それとも先に私にする』と言ってたぞ』なんて言い出したんだよ!どうなってるのよあの人の脳内!私にする?なんて古くさい新婚さんみたいな事言ったことないわぁぁ!」
「www」
「本当、笑い事じゃないのよ、毎日苛々するの。胎教に悪い」
「ごめんごめん、愚痴も聞くからさ、今度またママ友会やろう?」
「行く!行く!いつ!?」
「何時がいいかな?」
「何時でも!明日でも!」
「明日(笑)わかった、早めにやりたいね。皆から聞いてLINEする」
「うん、私は本当に何時でもいけるから!じゃあ、またね」
「はーい!」
3件目
「う〜ん、言われた事あるけど、どうしたの?」
「私、言われた事ないんだよね〜酷くない?私は一生言われないと思うんだ、このままだと」
「そんな事ないんじゃない?でも、心の中に秘めてそうなタイプだよね」
「言葉で言われたい!どんな時に言われたの?」
「えー…恥ずかしいなぁ(笑)夢ちゃんが、好きって言ったら答えてくれないかな?」
「どうした?とか言われそう(笑)」
「わかんないよ〜?言ってみよう!夢ちゃんから言ってみよう!」
「う〜検討する…ところで音ちゃんはいつ言われたの?」
「…付き合う時…とか?」
「とか?」
「結婚、する時、とか?」
「へー意外だな〜、もっと日常的に言われてるのかと思ってた」
「まぁ、後は…夜かな?(笑)」
「やっぱり日常的に愛を囁かれてるー!」
「でもほら!私も妊婦だし!今後はそうないよ〜…無いよね?大丈夫だよね?あれ、不安になって来た!怖い!」
「……どうだろうね」
「えっ、止めてその変なの間。私、妊娠中は皆シないものだと思ってたけど違うの!?だから、妻が妊娠中に旦那が浮気するんじゃないの!?」
「………どうだろうね」
「いや、もう断ろう。断われるかな?」
「いや、私に聞かれても〜ははは。あ、あのね!ママ会!ママ会やろうって皆で話してたの!」
「あ!話変えたね?でも、ママ会は賛成!」
「って事で、ママ会やろうって話になったんだけど、次の日曜行ってきても、いいで、しょうか…」
「って事で、まるで説明になってねェ」
仕事から帰って来た旦那が風呂に入り、晩御飯を食べ終え、割りと機嫌が良さそうなので今がチャンスと思って、皆で話したい事もあるのでママ会やりたい事を伝えてみたが、旦那の目がだんだん不機嫌になって来たのがわかる。
「最近どうとか、相談したい事もあるし、ダメ?」
膝の上に乗っている息子はうとうとしている為気づいていないが、あなたのお父さん今、お母さんを睨みつけてるよ。助けて。
「相談なら俺に言えばいいだろ、それとも俺に言えない内容なのかァ?あァ?」
本当に教師なのかと昔から疑いたくなるその恐ろしいお顔は止めてほしい。言いたい事も恐怖時代を思い出して言えなくなる。
「いや、そんな事は…」
恐ろしい表情の旦那の膝の上で、息子はついに眠ってしまったようだ。
起きろ!息子よ!母は今ピンチだ!
起きて場を和ませて!
私の願いも虚しく、気持ち良さそう眠ってしまった我が子を旦那が抱っこして行ってしまった。恐らく寝室に連れて行ったんだろう。
これは戻って来たら問い詰められるパターンだ。ここからは慎重にいかなければならない、お仕置きモードに入ってしまったら、御奉仕して機嫌を取らせようと昔の悪代官みたいになってしまう。
正直に言う?愛してるって言ってほしいって?う〜ん、恥ずかしい…
「何難しい顔をしてやがる」
「う〜いや、その〜」
寝室から戻って来た旦那に案の定詰め寄られる。
「言え」
「う〜」
どうしよう、恥ずかしい。
顔を手で隠して俯いたが、直ぐに手首を掴まれて簡単に避けられる。
それからジロリと睨まれたまま、「言え」「う〜ん」と私と旦那の攻防戦を暫く続けるとソファに押し倒されてしまった。
「わっ、ちょっと」
軽く口づけされ、待ってと抵抗しても「言わないと続ける」そう耳元で囁かれる。
「あっ、耳っ…やぁ、言う、から、待ってぇ」
「…早くしろォ」
耳から離れて見下ろされ、すっかり雄の顔になってる旦那。
正直に伝えたら止まるのだろうか、これは言っても止まらないような…でも、言わないと始まってしまう。今日はお腹が張っているような感じがするので避けたい。
「…私の事、好き?」
「…そうじゃなきゃ、一緒にいないだろ」
「言われたことないから」
「…あるだろ」
「ないよぉ!」
「お前だってないだろーが」
あれ?そうだったかな?
確かに思い返せば私も確かに口にした事がなかったかもしれない…学生時代からの恐怖支配を引きずったまま来てたから。でも今は…
「あ、愛してます、よ?」
初めて口ににした愛の言葉。なかなか恥ずかしいものがあるが…それより旦那が目を見開いて動かなくなった。
「あの?…ちょっと?…ん、むぅ」
動いたと思った次の瞬間には口を口で激しく塞がれ、こんなはずじゃ…
思ってる事を伝えて許してもらうつもりだったのに。
だけど、言葉じゃなくて目、身体全身で愛してると伝えようとしているように思え、私も愛おしくて旦那の身体に腕を回して応えた。
「よっ!」
「なんだよ、朝からニヤニヤしやがって」
気持ち悪ィ。とまでは言わなかったが眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな不死川。
そんな不死川に気を遣うことなく、ニヤニヤ顔の宇随は不死川に少し近づき、耳打ちした。
「昨夜は愛を囁いたのか?」
「…は?」
予想外の言葉に立ち止まった不死川に宇随も立ち止まる。
「お前みたいなタイプはあれだろ?いつもは嫁が寝ている時に頭を撫でながら、愛してるぜェ。とか言ってんだろ、どうせ」
直接言ってやれよなー。と言った瞬間にフリーズしていた、不死川の拳が飛んで来たのを宇随は瞬時に避ける。
「図星か?ド派手にうけるぜ!」
「っるっせェェェェェエ!!」
今日も朝から元気な教師の鬼ごっこが始まり、そうすると…
「廊下を走るなっ!」
竹刀を持った体育教師、冨岡も追いかけてくる。
「煉獄先生ー!おはようございます!」
「うむ!おはよう!」
元気のいい生徒に元気のいい教師の挨拶。
「煉獄先生?」
「どうした!」
「先生は廊下を走ってもいいの?」
「…ダメだな!全くよもやよもやだ!」
今日もキメツ学園は賑やかで元気がいい。特に、教師が。
end.
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