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おはぎ!




とある邸の前で準備運動をしている女の子がいる。
足首をくるくる回し、いっちに、いっちにと左右に足を伸ばし、通行人にはちょっと変な目で見られているが気にしていないようだ。


「やーいっ!お前んち!おっはぎやーーしきー!」


露出度の高い服装の女の子が大きな声で叫ぶ。通行人は更に引いている。
すると邸の中からドタバタと音がし、女の子はそれを聞き取ると邸に背を向けて軽く走り出す。

すると叫ばれた邸から強面の傷だらけの男が飛び出て来た。
男が出て来たのを女の子がちらりと振り返って確認すると全速力で走り出す。

鬼の形相で追いかけられているにも関わらず、女の子は楽しそうで、「きゃはは!おはぎー!」と笑いながら走り、一方でおはぎと呼ばれた男は青筋を浮かべながら追いかける。
ビックリしている通行人もいれば、驚いていない人も。これはこの近辺では見慣れた光景だ。

男が距離を詰めて女の子を捕まえようとすると、高く飛び上がり屋根に飛び移った。直ぐ様男も屋根に飛び乗り、周囲からは驚きの声が上がる。


「待てェコラァ!」


「怒りのおはぎー!こわー!」


こわー!と言うもののその顔は笑っていて、女の子は楽しそうだ。

男も早いが女の子もとてもすばしっこい。そのまま屋根を飛び越えながら走っていると、女の子はとある邸の庭に飛び込んだ。


「天元様ー!」


逃げ込んだ先にいた天元様と呼んだ男の後ろに女の子が隠れた。


「宇随ィィィ!」


後を追って来た男もすぐに庭に飛び込み、そのままの勢いで男に殴りかかる。
それは分かっていたために、その拳は簡単に受け止められた。


「はい、ありがとな、不死川。いつもいつも」


「テメェ、いい加減にしろォ」


「夢もよくやった。偉い偉い」


「エヘヘ」


「…おい、…いいから早く出せよ」


「夢、おはぎ出してやれ」


「はーーい!天元様!」


元気よく、女の子は邸の中に入って行った。




この元気な女の子は夢といい、くの一だ。忍びの里からこの邸の主、宇随天元を追って抜け忍になり、やってきた。自分も天元様のお嫁さんにしてもらうんだーと追って来たものの、いや、これ以上嫁は増やさない。と命からがら逃げてやって来たのにあっさり断られた可哀想な女の子。
そして、今は忍びではなく鬼を狩る組織、鬼殺体の最高位の音柱として、刀を振るう宇随天元はこの可哀想な夢をとりあえず、嫁にはしないものの邸には置いてやっている。なんだかんだ兄貴肌で面倒見のいい宇随は、少しおっちょこちょいな夢を鬼殺隊の隊士ではなく、くの一として育てているが、それに巻き込まれているのが宇随と同じ鬼殺隊で風柱の不死川実弥。この男、見た目は傷だらけで口調も荒いが、根が真面目で心優しく、趣味はカブトムシを育てることだったりする。

先ほどの高速鬼ごっこも夢の訓練。暇をもて余した宇随が、不死川を挑発して逃げきって来い。と適当なことを言い出したのが始まり。

第一回目は挑発に失敗。あまり面識の無かったため、夢はビビりながら宇随に言われた通りに「ぉ、おーい!おはぎー!お、おはぎっ食べ、食べちゃうぞー!」と邸の外から叫んだが「近所迷惑だァ、帰れ」と邸から出てきた不死川に不機嫌そうに怒られて終了。その顔があまりに怖すぎてこの日は大人しく帰宅。宇随に根性無し、つまんねと耳糞をほじりながら馬頭された。
また宇随に行ってこいと言われて行った第二回は家邸前で「おーい!」と言った次の瞬間に背後にいた不死川にすぐ捕まってしまい、首根っこ掴まれて宇随邸に連れて行かれ、しょんぼりした夢を宇随に差し出して「テメェはどんな躾してんだァ!?あ゛ぁ!?」とブチギレた不死川。
宇随は夢にはお茶とおはぎを持ってこいと伝えて不死川と二人になった。『おはぎを持ってこい』と言った時に不死川がピクッと反応していたことに笑いを堪え、馴れ馴れしく不死川の肩に太い腕を回して宇随は言った。


「すまねぇな、アイツお前が気になるみてぇなんだ」


そう言った途端、不死川の顔や耳がどんどん赤くなりだした。


「…あァ!?そ、そんなのはァ、し、知らねェよォ」


そんな初な反応されたら、宇随はからかいたくって仕方がない。


「まぁ、そう言うなよ。前に言った事あったろ?アイツ、里を抜けて来たからここしか居場所がねぇ、知り合いもほとんどいねぇ。俺にとっちゃ、可愛い妹みたいなもんだからよ、仲良くしてやってくれやぁ」


「仲良くって、…どうすりゃいいんだァ」


「流石、実弥ちゃん。優しいねぇ。簡単、たまに鬼ごっこしたり話かけてくれれば、それだけでアイツ喜ぶから」


な?頼むぜ?とニヤニヤ顔でお願いされた不死川は、あからさまに面白そうと顔に書いてある宇随に、からかわれてるとも気づかず、自分の事が好きなんだと勘違いし、ドキドキが止まらず、しゃ、しゃーねーなァと宇随の要求を呑んだ。


それから夢が数日おきにやって来ては街中を駆け抜ける高速鬼ごっこが始まり、いつしか嬉しそうに逃げる夢を可愛いと思うようなり、邸の外から声が聞こえてきたら急いで追いかけてやった。
夢はいつもギリギリで逃げきれた!と思っているが、それは大間違いでいつも不死川が手加減している。
そうして、宇随邸に着いたらお茶して帰るのが毎回恒例。




「おはぎー!おはぎ持ってきたよー!」


「お前、俺の事おはぎって呼ぶの止めろォ」


「今日のおはぎね、私作ったんだ!」


食べて食べてー!と言ってくる夢が今日も可愛い。自分のことをおはぎじゃなくて名前で呼んでほしいと思っているが、自分のために作ってくれたという嬉しさでとりあえず今はどうでも良くなって、手作りおはぎに手を付ける。


「どう?美味しい?」


「…甘ェ」


「だめぇ?」


「大丈夫だ夢、顔に美味しいです。嬉しいです。って書いてあるだろ」


素直になれない不死川に変わって宇随が代わりに答えた。


「テメェ、勝手なこと言うんじゃねェ!」


「ふふ、あんこ付いてる。…本当だ、甘いね」


もう、不死川が怒っても怖くない。と言うか不死川が怒ってる、不機嫌は通常運転と思っている夢は不死川の口の横に付いた、あんこを指で掬いパクッと食べた。
それに驚いた不死川が固まり、徐々に耳が赤くなっていく。


「青いねー」


「うっ、うるっせェェ!」




青い青過ぎる。前々から思っていたがこいつはきっと女を知らないだろう。
プンスカ怒りながらも、おはぎを平らげ、恥ずかしくなって夢の方を見れなくなった不死川は、お土産のおはぎを持たせてもらって帰って行った。


さぁ、どうやったらあの青過ぎる風柱の恋は進むのか。いつまで鬼ごっことお茶だけで終わらせるんだ。男ならガッといけって。あんな厳つい見た目に反し過ぎだろ。
うん、これは煽ってやらないと恋が実る前にジジイになってしまいそうだ。




その後、夢を映画を連れてってやってくれや、オムライスが食べたいみたいだぞ。と切っ掛けを作ってやった宇随だが、ただ仲良くお出かけして幸せになってる不死川にだんだんと腹が立ち、夢に縁談話がある、お前はこのままでいいのか?とけしかけてやっと焦り始めた。夢を呼び出し、覚悟を決めた告白を顔、耳、首を真っ赤にして「余所見すんな、俺に着いて来い!」と夢に伝えると「はーい?何処に行くの?」と渾身のキメ台詞をボケられ…


「そうじゃなくって!…だァかァらァ…好きだって言ってんだよ!お前がァ!」


「えっ!えぇ!?おはぎ私の事好きだったの!?」


「おはぎって呼ぶのやァめろやァァァア!」



お互い顔を真っ赤にしている告白場面を近くでこっそり見ていた宇随が死ぬ程笑わっていた。



end.


あ、二人は無事に恋仲になりましたよ\(^o^)/

遅くなったけど不死川さんお誕生日おめでとう\(^o^)/♪


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