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地味に真面目に働いていただけたのに何故?




今日はいつにも増して朝からおしゃべりが凄い。先日から、異動して来た田中さんが同じチームに配属されてから、周囲もおしゃべりが多くなってしまった。

面倒臭いから文句を言わないけれど、私の周りが仕事をしない分は自分に回ってくるから勘弁してほしい。
昨日の仕事帰りにネイルを新しくしただの、この服どうかなんて今は止めてくれ。頼むから仕事をしてほしい。そう思ったが、今日は金曜だ。合コンでもまた行くから、浮き足だっているんだろう。と考えたら、もう諦めがついた。もう、私の周りのメス共は今日、仕事に身が入らないだろう。


もう、自分1人で頑張るしかない。私も残業しないでさっさと帰りたい。自分が早く帰るために頑張ろう!と気合いを入れ直した所で妙に可愛い子ぶったメス共の、おはようございますが聞こえた。げっ、嫌な予感。少し顔をあげるとやはりチーフの宇随さんが私のデスクの近くまで来ている。宇随さんが来るとろくなことがない。
私の事を気に入っているのか、頼みやすいのか、それとも都合良く利用されているのか、宇随さんはよく私に頼み事をしてくる。宇随さんの頼みならメス共は喜んで引き受けるんだから、わざわざ素っ気ない私に頼みに来なくていいと思うのに。


「橙ーおはよ。午後の会議で使う資料人数分印刷頼めるか?」


「おはようございます。はい…わかりました。データはどちらにありますか?」


「サンキュ。データは今、デスク戻ったらメールするわ」


まあ、上司の頼みを断る訳にもいかないし、印刷して纏めるだけなら簡単だからいっか。と思い引き受けるが、周りの仕事をしないメス共の視線がウザい。
いや、私が好き好んで引き受けてない事ぐらい気づけよ!本当に馬鹿なんだな、あんたら!
心の中で毒を吐きながらも、キーボードを叩く指は止めない。

早速、宇随さんからエクセルの添付ファイルが着いたメールが送られて来たので、それを予備も含めて印刷をかけておく。




12時のお昼になると同時にメス共が一斉に昼食を取りに席を立った。こういう時だけ、スピーディーに動くのがまた腹立たしい。
自分も宇随さんから頼まれていた資料を纏めてお昼に入ろう。


「あれ?」


…ない。予備も含めて印刷を掛けておいた資料が複合機の所にない。
これは多分…やられた。メス共の仕業に違いない。最悪。もー!腹立つ!

しかし、証拠も無いし、探すのも面倒い。
諦めてもう一度印刷を掛け始めたが、カラーの両面印刷で時間がかかって腹立たしい。印刷を掛けたまま昼に入りたいが、昼から戻ってきたメス共にまた嫌がらせをされるかもしれないのでそうもいかない。あー苛々する。
ちょっとだけと思い、一服をしに行く事に。


「…お疲れ様です」


「おー、お疲れ」


喫煙所に来れば今はなんとく会いたく無かった上司と二人きりになってしまった。
引き返す事も出来ず、最近切り替えたばかりの電子タバコのボタンを長押しする。


「資料悪ぃな」


「いえ、大丈夫です」


一応、愛想良く言ったつもだが、苛々が滲み出ていないか少し心配。


「あー…お前今日なんか予定あんの?」


「はい、あります」


「…そっ、なんでもねぇわ」


じゃあ、お先と言って宇随さんが喫煙所を出て行ってくれたので、漸く一息つくことが出来た。…なんだったの。


戻ると丁度印刷も終わっていて、パッチンパッチンとホッチキスを止め、メス共が戻る前に宇随さんに資料を渡して急いで食堂へ。ギリギリ間に合ったけどヘルシーで安いA定は売り切れになっていたのが残念。
食後には喫煙所に行けば、別の部署の不死川さんがいた。


「お疲れ様です」


「お疲れ、調子はどうだい?」


不死川さんは、顔は怖いが割りと優しいし、たまにこうして会えば話掛けてくれる。


「最悪です。本当、異動願い出そうかと思うくらい、苛々します」


「はっ、それは大変だな」


そんな話をすれば、もう少しで産休に入る人がいるから、不死川さんの部署に空きが出るかもしれないとの事。今の部署の仕事は嫌いじゃないけど、何せ周りに恵まれていない。
異動願いもありだな、なんて思いながら自分のデスクに戻る。




「橙さ〜ん待ってたの〜。私、エクセルの数式壊しちゃったみたいなの〜直しといてくれる〜?」


少しだけ癒されて戻ってきた瞬間に調子のいいメス田中にストレスを吹っ掛けられた。


「分かりました。見てみます」


くっそ、また余計な仕事を増やされた。もう、無心だ無心でやろう。




「田中、提出期限今日までなの分かってるよな?」


「宇随チーフ…はい!勿論です」


うわっ嫌な予感。
メス田中に一言声を掛けて宇随さんが自分のデスクに戻った瞬間、メス田中がこちらに話を掛けてきた。予想通り、今日は合コンらしい。定時で帰るから先に自分の仕事を手伝えとは流石、メス田中としか言いようがない。


手伝えないと言って、ぎゃあぎゃあ騒がれるのも面倒なので、手伝い、メス田中は定時帰って行ったが、私は自分の仕事がまだ残っているので残業だ。


「橙、まだ仕事残ってるのか?」


「はい、すみません」


「大丈夫か?手伝ってやろうか?」


「いいえ、一人で大丈夫です。ありがとうございます」


チーフにやってもらうような内容ではないし、それに、誰かに宇随さんに仕事を手伝わせてたと噂をされたくもない。静かに平凡に過ごしたいんだ、私は。
少し何か言いたそうに、じぃっと見られたようだったが、無理するな。と言い残して立ち去って行った。


さっさと帰りたいので、集中して頑張れば1時間ちょっとで片付き、やっと癒しの週末タイムだ。今日は疲れすぎたのでスーパーでお惣菜にお酒を買い込んで帰宅する。最近は、友達と飲みに行く機会も減り、そりゃ皆、恋人優先するだろうし、一人の週末が多くなった。暫くは寂しくもあったけど、慣れれば自由で気楽な休日。
帰宅して、気になっていたお笑い番組を再生しながら、スパークリングワインの栓を抜けば、身体の力も一緒に抜け気がする。


来週はどうかもっと平和に地味に過ごせますように、と思った私の願いは全く通じなかった。




月曜日

嫌でも聞こえてくるメス共の会話で、メス田中がどうやらフィットネスジムに通い始めた事が分かった。合コンが無くても今日はフィットネスジムに行くとかで、また、仕事を残して帰りやがった。
一人パソコンと睨めっこしながら、残業しているとまた宇随さんがやってきて、後ろから私の仕事を少し眺めていたようで、「それは田中の仕事だろ?」と言われ、面倒臭いので「そうでしたか?残っていたのでやってしまおうと」そう伝えると「しゃーない、手伝うぜ」と言い始めたので「大丈夫です!もう終わりますので!もう!終わりますので!」と全力でお断りした。


火曜日

今日は残業しないでも帰れそう。
メス田中も仕事を残さなかったようだ。偉い偉い。毎日この調子で頑張ってもらいたいものだ。
定時になり、帰り支度をしていた。
我妻くんが「チーフが呼んでるよ」と言っていたが聞こえなかったフリして、帰ろうとしたら「無視!?無視なの!?いぃぃやぁぁぁあっ!」と叫び始めたので、面倒臭いと思いながらも宇随さんの所に向かう。
「他人のミスをカバーするのはいいが、本人にフィードバックはしてならないと、そいつの為にならねぇ。言いづらいなら、俺に言え、俺が注意するし、俺を頼れ」
くっそ、こっそり直しておいたのに何でバレたんだろう。もう、やだ目敏い。その他にも俺が俺がなんとか言っていたが、お説教は半分以上聞いていなかった。


水曜日

「今日の打ち合わせ、お前も来い」
えっと何故私なのでしょう、宇随チーフ。そして、いきなり言われても…。反論したかったけど出来ず、素直に打ち合わせに参加。書記の役割はなんとかこなし、自分のデスクに戻るとメス共が私が居なかったからと言いたいのか、忙しい忙しいと言っている。そして、午後の休憩時にトイレで聞いてしまった。

「宇随さんに気に入られてるからって、高飛車になってるよねー橙さん」

一番言われたくない言葉だ。そんなつもりは全くないし、そう言われないように女性社員から人気のある宇随さんとの接触は避けていたのに。最悪だ。


木曜日

「何、お前、不死川と仲いいのか?」


「仲がいいと言うのは語弊があります。少し、相談に乗って頂いてました」


「他の部署の奴に?」


「たまに、こうして喫煙所で声を掛けて下さるので…優しい方ですよね」


「…相談なら、俺が聞いてやるよ。今夜、飯食いに行こうぜ」


「いいえ、そんなプライベートな時間を使って頂くのは、申し訳ないないので、大丈夫です。ありがとうございます」


「…………」


金曜日


今日はメス田中は先週の合コンで知り合った男性とデートらしい。勿論定時上り。そんな事はどうでもいいが、今日はチーフに話があるから、チーフが帰る前に急いで仕事を終わらせた。


「宇随チーフ、今少し、お時間宜しいでしょうか」


紙を持って宇随さんの所に行けば、宇随さんも仕事が終わったようで、片付けようとしているところだった。
元気のいい了承の言葉を頂き、ここではない所で話したいと伝えると、小会議室に連れてきてもらい、まあ座れと、隣の席に座る。


「なんだ、相談か?」


相談だと思われていたのか。それにしても、何故、相談されて嬉しそうなのか不思議。


「これを受け取って頂きたいです」


二枚持ってるうちの一枚の紙をおずおずと差し出す。


「…はぁ!?異動願!?しかも、人事労務部って不死川のところじゃねーか!ダメだダメだ!」


「異動願がダメでしたら…」


もう一枚の紙も差し出した。


「退社願…ハァ…」


溜め息をついた宇随さんが、前髪を掻き上げると勢い良く立ち上がり、不機嫌な顔で見下ろしてきた。


「いいか!俺の前からいなくなるのは赦さねぇ。不死川のとこになんてやらねーよ。だいたい、お前みたいな意地っ張り、俺様のような寛大なやつじゃねーと相手にならねーよ。解ったか?」


え?
なんと言う意味で受け取ったらいいのか、困惑していると、腕を引かれて立たされ、腰に腕を、もう片手は頬に添えられてフリーズ。


「意味わからねぇか?」


はい。と言おうとした口は宇随さんの口に塞がれて言えず、結果、そのまま宇随さんのペースに乗せられてお持ち帰りされてしまい、腑に落ちないまま交際がスタートしてしまった。




「今後、喫煙所に行くときは俺も呼べ」


そして結構、束縛されそうです。




end.


全然好意に気づいてもらえなかった色男\(^o^)/

宇随さんHAPPY BIRTHDAY\(^o^)/



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