塞翁が馬
不死川くんと放課後デート…とっても楽しみにしていたんだけど…
どうも私の体調がよろしくない。
いつも放課後は部活や家の事で、忙しい不死川くん。
部活が休みでも下の子達の面倒をみないといけなかったりで、でも、一緒にいたい私の気持ちを察して、そういう日は一緒に不死川くん家で下の子達と遊んで過ごしていた。あと、晩御飯を手分けして用意したりするのはそれはそれで、夫婦みたいな時間を過ごせて幸せなんだけど。今日はお母さんが家にいるから、下の子達の事は気にしなくていいらしい。
久々の二人だけの時間!二人っきりで遊ぶのなんていつぶりだろうか。
なのに、朝から身体がダルいのだ。私の家に遊びに来ることになっていたので、夜遅くまで部屋を掃除していたせいで疲れたのかダルい。
昨日はワクワクして、テンションが上がり、隅々まで掃除したし、ごちゃごちゃしていた小物も片付け、下ネタ満載の少年漫画は見えない所に隠した(弟の部屋)。
代わりに数冊の少女漫画を並べ、女子の部屋っぽくした。ちなみに、漫画のタイトルは「オオカミくんに食べられちゃう!?」で、俺様な男子に「今日からお前は俺の女な」と言われて主人公が迫られ、手を出されそうになるのをなんとか逃げ、そんな毎日を過ごしているといつの間にか好きになっちゃうドキドキの少女漫画だ。
まだ、手を繋ぐしかできない私にもう少し迫ってくれてもいいよ!私、押しに弱いよ不死川くん!と言う、伝わらないだろうが、メッセージのつもり。
えっちは早いけど、キスとか、ぎゅうってしてもらいたいなぁとは思う。不死川くんはそーゆー気持ちにならないのかな。
でも、明日は二人だから、もしかしたら!明日は何かあるかもしれない!
そんな妄想を繰り広げながら待ちに待った放課後デートなのに…
放課後、一緒に手を繋ぎながら家に向かって歩いていると、ダルいだけじゃなくて頭も痛くなってきてしまった。
「今日は大人しいなァ」
「そう?…ドキドキしてるからかな」
「…何かあンなら言えよ」
「何もないよ、久々に二人だけだから」
緊張してるの。と伝えると、不死川くんが笑う。
はぁ〜その顔好き。強面の部類に入る不死川くんだけど、笑うとスッゴく可愛い。そのギャップにやられて恋心を抱いた女子も少なくないはず。できる事なら、その素敵なお顔をずっと眺めていたいけど、結局はカッコ良すぎてこちらが照れてしまい、ずっと直視できなく目を反らしてしまうのだ。
以前に、にらめっこした事があったが、不死川くんにじぃーっと見つめられると、恥ずかしくてチラチラ目を反らしてしまった。そして、やっぱりカッコいいよ〜と心の中で悶えながら、にらめっこを続けていると私の顔が徐々に赤くなっていったみたいで、それが可笑しくて不死川くんが吹き出し、にらめっこは私が勝った。という事があった。
本当に不死川くんはカッコ良くて、優しいし、頭も良し、運動神経抜群。それにワイシャツのボタンを2つも開けているのが、ちょっぴりエッチだと思う。
そんなパーフェクトな男子の彼女が私で大丈夫なんだろうか。
ただいま〜と家に入れば、不死川くんはお邪魔します。と靴を揃えて家に上がる。礼儀正しいところも素敵。
そのまま2階の自分の部屋に行き、さぁ!2人で何しようか!?と話し始めた時、部屋の扉が開いた。
「夢〜、お菓子持ってきたわよ〜!」
「お母さん!ノックしてよ!」
「あら、だめ?不死川くん、こんにちは」
「こんにちは、お邪魔してます」
「夢ったら昨日、張り切って掃除しちゃって。そんなんだから朝、体調悪いーって言ってたけど、それはもう治ったの?」
「な、治ったよ!お母さん早く出てってよ!」
「あらそう!それなら良かったわ。不死川くんごゆっくりしてってね〜!」
母が扉を閉めて出て行き、不死川くんの方を見ると睨まれていた。
「もう…大丈夫だから、ね?」
「…本当かよ。じゃあ…」
「じゃあ?」
「数学の宿題先にやるかァ」
「うっ」
流石、真面目な不死川くんだ…
ヤバい、どんどん頭が痛いし、眠い。
あともう少しで宿題終わるのに。
苦手な数学を不死川くんが一生懸命に、この時はこの公式。これはこう。と解りやすく説明してくれているけど、やっぱり苦手な私は興味が無いのも相まって…眠い。
「おい、もう少しだから頑張れ」
「うん、大丈夫」
何処が大丈夫だとツッコミたいだろうな、不死川くん。私、今、半目だったと思う。
これが終わったら不死川くん、帰るって言うんだろうなぁ。
そう、思うと悲しくて泣きそうになってきた。
折角、ずっと楽しみにしてたのに体調不良になるなんて。
それも、常日頃からちゃんと掃除してなかった私が悪いのか…余計に泣けてきた。
「うっし、終わったな」
なんとか宿題を終える事が出来たが、頭はズキズキと痛む。
「うん、ありがとう」
「体調はどうなんだァ?やたら眠そうだったが」
「ちょっと、ちょっとだけ頭が痛いかな」
正直に言うと、不死川くんはじゃあと言って立ち上がった。
待って!大丈夫だから!一緒に居たいよって伝えようとしたら不死川くんが側にきて…
「側に来てね!なんと!お姫様抱っこされたの!私ビックリして固まっちゃったんだけど、そしたらベッドに優しく下ろしてくれて、『側に居るから休め』って! もうっ!超!ドキドキしたの!宇随くん聞いてる!?」
「あ?聞いてる、聞いてるから早く終わらせてくれ」
「そして、なんと!不死川くんも一緒にベッドに横になって頭撫でてくれたの!超ー!カッコいいし!超ー優しいなって思ったの!あんなにテンシン上がったこと無かった!」
「そうか?今も俺が引くぐらいテンション上がってるけどな」
「こんなにドキドキしてたら寝れないよ!って思ったんだけど、頭撫でてもらってたらいつの間にか寝ちゃってて、目が覚めた時には頭痛も治ってたの!これって愛の力だと思わない?」
「そーだね、そーだね、愛の力」
「ところで宇随くんはどうして、右の頬っぺが腫れてるの?虫歯?」
「彼女でもない女に、いきなり浮気者って叩かれた」
「あらら痛そう。右を叩かれたって事はその子サウスポーなんだね。宇随くんも彼女に愛の力で癒してもらうと良いよ!じゃあ、私、不死川くんが待ってるから行くね!話聞いてくれてありがとう!」
「……………」
サウスポーなんだね、じゃねーんだよ。それにこっちは彼女と喧嘩別れしたばっかりだっつーの。
たまにこうして俺んとこに来ては不死川がー不死川がーと言って去っていく夢。
女友達には惚気話がなかなかできないらしい。普段なら、親友が彼女と上手くいってるんだなぁ。と微笑ましく聞いてやれてたが、今日は流石にそんな気分にはなれない。
彼女と別れて、よく分かんねー女にぶっ叩かれた状況で、他人の幸せを喜んでやれる程、流石の俺もそこまで人間できてねぇ。
「はぁ〜モテすぎるのも問題だよな〜」
放課後、教室から外を見下ろせば、今日もラブラブな不死川カップルが一緒に帰るのだろう、夢が不死川の手を嬉しそうに引いているのが見える。
不死川もくっそ嬉しいくせに、普通そうに装っているのがバレバレ。
「ん?」
外周しついるアイツ…俺様の頬をぶっ叩いた女だ。
畜生、バレー部だったのかよ。道理で女にしては力強かったわけだ。
「人の顔にアタック決めるなっつーの」
end.
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