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キメツ幼稚園〜番外編1





「うえ〜ん、ひっく、うえ〜ん、んぐっ、うえぇ〜ん」


一人高い場所で泣いている女の子が一人。


「誰か〜、ひっく、怖いよぉお、うえ〜ん」


公園の滑り台の上で泣いている。その滑り台の下には…


「ハッハッハッハッ」


今にも登って来そうな元気をいっぱいのゴールデンレトリバーが一匹。


「ワンッ」


数分前の事、公園で遊んでいると脱走して来たのであろう、首輪に繋がったロープを引き摺ったゴールデンレトリバーが公園に現れた。

子供達を見ると公園の入り口から走って近寄ってきた大型犬に、遊んでいた子供達は蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出した。のだが、一人だけ逃げ遅れて滑り台の上に避難して、そこから動けなくなってしまったのだ。

滑り台から降りて走って逃げようかと思い、滑り台の方に行くとゴールデンレトリバーも滑り台の降り口にやって来て夢を待っている。
また、反対に階段の方に行けばゴールデンレトリバーも階段に手を着いて来てしまう。確実に夢を狙っている。

飛び掛かってくれば幼稚園よりも大きい身長になる大型犬に脅えて泣くばかり。
皆は逃げて居なくなってしまったし、誰も助けてくれない心細さと恐怖にSOSとばかりに泣いていると、夢の名前を呼ぶ声がした!


「実弥くんっ!!」


彼は夢と同じ幼稚園に通うご近所の男の子。大大大好きな夢のピンチと聞いて駆けつけた。滑り台の上に逃げ遅れた夢の事が大好き過ぎて幼稚園でイタズラしたり、それはもう構ってほしくて仕方がない。そんな様子は同じ幼稚園に通う園児なら誰もが知っている。

公園から逃げれた園児達がこの子のことなら不死川くんだ!と思い、皆で不死川家に押し掛けてピンポンを押しまくった。
インターホン越しで大変だ大変なの!と叫ばれ、お母さんのお手伝いをしていた実弥は何事だと玄関を開けると、皆が一斉に話出し、大好きな夢がピンチだと聞かされ、一目散に公園へ走り出した。
呼びに来たお友だちを置き去りにして、お気に入りのキメツヤイバーのグリーンの瞬足を履いて向かう。

公園に着くと滑り台の上で泣いている大好きな夢。その下には尻尾をブンブンと振ってご機嫌に見えるゴールデンレトリバー。
自分の存在に気づいたようで名前を呼ばれると「待ってろ!今、助ける!」と叫ぶ。

実弥が走って行くとゴールデンレトリバーも気づき実弥に向かって行く。


「実弥くん!危ない!」


夢が実弥くんが食べられちゃう!どうしよう!と思った次の瞬間。


実弥に飛び掛かろうとしたゴールデンレトリバーに向かって実弥が「待てっ!」と言い放つ。
すると、ゴールデンレトリバーはピタリと止まり相変わらず尻尾をブンブンと振っている。


「おすわり!」


またまた実弥の指示通りにおすわりしたゴールデンレトリバーにゆっくり近づき、ロープを掴む。


「いいこだ」と頭を撫でてやるとゴールデンレトリバーは「ワンッ」と吠えてもっと撫でてと言うように実弥の身体にすり寄って来たので、よしよしと頭や顎の下を撫でてやると嬉しそうにしている。
そして、ロープを持って水飲み場に連れて行き、蛇口を捻って水を出してやるとペロペロと飲み始めた。
その隙に実弥はロープの先端の輪になっている所を水飲み場の上にある、人が飲む蛇口に引っ掻けると滑り台に向かう。


「もう大丈夫だから降りて来いよ」


夢はその言葉を信じて滑り台を降りると実弥にぎゅっと抱きついた。


「実弥くん、怖かったよぉ、実弥くん、凄いよぉ」とまた泣き出してしまったので「お、俺がいるからもう大丈夫だ」と顔を赤くしながら夢を抱き締める。


「ワンッ」


水飲み場からゴールデンレトリバーが実弥達を呼んでいるみたいだ。




その後、この犬は噛まないから大丈夫。と言う実弥の言葉を信じて夢もゴールデンレトリバーをよしよしと撫でる事が出来たし、公園に戻ってきた園児達も触れ合う事が出来、暫くすると脱走に気づいた飼い主が迎えに来た。


園児達はそのまま公園で遊び始めたが、泣いたりして疲れた夢は実弥と一緒に帰る事にし、実弥と手を繋いで仲良く帰宅する事にした。




「実弥くん、すっごい、すっっごくカッコ良かった!」


「…大した事じゃ、ない」


「ううん!実弥くんは私のヒーローだよ!」




end.



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