×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




君のご飯がうまいっ! 〜前編〜






「うまいっ!」


「良かった!沢山食べてね」


「夢は凄いな!肉がほぼ入ってないのに、ミートソースの味がするぞ!うまいっ!」


「うぅ…人参いっぱい入れてごめん」


「責めているのではない。俺は感心している。こんなに少量しかないのに、人参や玉ねぎがミートソースになっているのだからな!それに懐かしい味がする!夢は凄い」


そのあともこんなに少量の肉が。人参が肉になった。これはいくら食べても太らなさそうだ。と言いながら大量のミートスパゲッティを食べていく杏寿郎。
リスのように頬を膨らませ、旨い旨いと食べている姿は可愛らしいと思う。


杏寿郎と夢は大学生で、学業をしながらバイトをし、なんとか遣り繰りをしながら同棲生活をしている。
学生で同棲なんて!駄目!だ!と言う双方の親を何とか説得して、今は同棲生活2年目で現在2人とも就活中。
特に煉獄家から同棲の許可をもらう時は苦労したし、夢は顔を青くしたり赤くしたり大変だった。




「ガキが何を言っている。まともに生活できるはずが無かろう!学業が疎かになるだけだ!」


「父上!学業は疎かに致しません!どちらも両立してみせます!」


杏寿郎の母親には会った事はあるが、父親に会うのは同棲の許可をもらいに訪ねた時が初めてだった。
とても怒っているようで、お顔が物凄い怖い。杏寿郎と似ているのもあり、杏寿郎のこんなに怖い顔を見たことがないけれど、本当に怒らせたらこんな風になるんだ…気をつけなきゃ。そんな事を思いながら、夢は父親の迫力が凄すぎて同棲は半ば諦めモードで俯き、杏寿郎と父親の言い合いを暫く聞いていたのだ。




「どうせ、上手くいかなくなって喧嘩別れだ。止めておけ!」


「それだけはあり得ません!どんな困難も乗り越えてみせます」


「だいたいなぁっ!妊娠させちまったらどうする!?大学を辞める気かっ!」


「避妊には気をつけている!」


え、杏寿郎?そんな堂々とそんな事…


「せ、せせっ責任の取れないヤツが何を言っている!」


「今までも避妊は出来ています!」


いや、だから、あの…杏寿郎さん?堂々と今までもセックスしてます。発言は止めてほしい。お父さんも動揺して、カミカミだ。
恥ずかしくないんだろうか、親にそんな事を私は言えない、知られたくない。後日、私の両親にも許可をもらいに行く事になっているけど、これは予め注意をしておいた方が良さそう。それでないと、大変な事を言いそうだ。


俯く夢の顔が徐々に赤くなってきているが、それに気づかず2人の口論は続く。


「避妊も何も始めからするなぁっ!お前にはまだ早い!」


「父上!俺も男です!好きな女と一緒にいれば、抱きたいと思います!」


「お、おぉお前ぇっ!そんな事を言って恥ずかしくないのかっ!?」


「恥ずかしくありませんっ!男に生まれた以上、当然の生理現象です!」


「生意気な、ガキが何言ってやがる」


「身体は十分大人になりました!父上にも負けぬ…」


そ、そうだけどね、杏寿郎。
貴方の身体が大人の男性なのは、私が一番よく知っている。知ってしまっているからこそ恥ずかしい。
もう、恥ずかし くて、この話を止めるように杏寿郎に手を伸ばした時、


「二人ともお止めなさい!」


杏寿郎の母親が怒った。
2人とも「む」と言って母親の方を見る。
流石親子、動作までそっくり。


「恥ずかしくはないのですか。女性の前でデリカシーのない事を」


「「…すまない」」


「杏寿郎。母もまだ早いのではないかと思います」


あぁ、やっぱり反対か。と、絶望を感じ、赤い顔から熱が引いていくのを感じる。


「けれど、貴方の決意は堅いのですね」


「瑠火!」


「母上!」


「自分たちだけで生活するのは、貴方達が思う以上に大変です。意見が合わない時、疲れている時、喧嘩をすることもあるでしょう。それでも一緒に暮らす以上は、協力していかなくてはいけません。自分たちで解決していくのです。楽しいことばかりではない事は、分かっていますね」


「はいっ!何があっても話し合っていきます!学業も疎かにしませんっ!」


「しっかりするのですよ。母は貴方を応援します」




煉獄家の実権は、お母さんの瑠火さんが握っていたようで、お母さんが認めるとお父さんはぶつぶつ文句を溢しながらも許してくれ、この時、感極まった杏寿郎にもの凄い力で抱きつかれて内蔵が破裂するかと思った。


それから私達は貯金でワンルームのアパートを契約し、頑張ってアルバイトをしながら学業に励み、将来のために少しずつ貯金をしながら、節約の同棲生活を送っている。
沢山食べる杏寿郎の為に、安くても沢山作れる料理をと日々試行錯誤。
昨日、バイト先のおばさんが、持って行きなさいと食材をくれた。お金がない私達の為に、スーパーで安売りしてて、買いすぎちゃったからあげる。と言って、たまにこうして分けてくれるのはとても有難い。
昨日は野菜とレトルトのミートソースを2人前にパスタを頂いたので、2人前を5人前まで引き伸ばしたのだ。
帰りにスーパーで約200gの合挽き肉が、値引きシールが貼られて130円になっていたので、そちらを1パック購入。あとは頂いたもので作れるので、昨日の晩御飯は130円で済んだ。
頂いた人参2本、玉ねぎ2玉を軽く切った後は、不死川くんから貰った"ぶんぶんチョッパースーパーバージョン"に放り込む。スーパーバージョンは大きいのでとても有難い。
不死川くんは見た目が怖くて近寄りがたいと思っていたが、気遣いのできるとても優しい杏寿郎のお友達だ。料理が苦手な杏寿郎でも、引っ張るだけで微塵切りになるぶんぶんチョッパーなら手伝えるだろう。やらせとけと誕生日プレゼントに頂いた。

昨日は杏寿郎のバイトの方が終わるのが遅いので、自分でぶんぶんチョッパーを4セットやり、大きな鍋に挽き肉200g。大きな鍋に挽き肉200gは寂しく不安になるが、大丈夫!ここからかさ増しするんだっ!かさ増しパン粉をザっと追加、ある程度火が通った所に大量の人参と玉ねぎを投下。よし、挽き肉はいるんだかいないんだか分からないけど、量は増えた。そこに頂いたミートソースを2パックに、家にあったホールトマト缶にケチャップをドバー。後はコンソメと塩、ウスターソースを味を見ながら追加したら、うん、ミートソースの味になった。
そして、杏寿郎が帰って来てから、寸胴でパスタ5人前を茹でて2人で食べ、杏寿郎はいつものように旨い旨いと食べてくれて良かった。


さて、今日は私も杏寿郎もバイトが休み。
今日の晩御飯は何にしようか。あのスーパー、また挽き肉安くやらないかな。安かったらパン粉と玉ねぎ、豆腐でかさ増しハンバーグにしたい。今日は、玉ねぎ微塵切りは杏寿郎にお任せできる。
そんな事を大学の講義中に考えているとスマホが震えた。
なになに、今日の晩御飯はもう準備したか?と杏寿郎から連絡が来て、まだだよ。と返信。すると今日は飲みに行こう。と言う。節約が趣味みたいになってる私達はあまり外食はしないけど、珍しい杏寿郎の提案にたまにはいいかと思い、OKのスタンプを送信。


久々にお酒飲むの楽しみだなぁ。




end.



[ 29/50 ]

[*prev] [next#]


mainに戻る