産屋敷 実弥くん5
な、なんで実弥くんはこんなに怒っているんだ。普段からよく注意は受けるけど、こんなぶちギレた顔は今日が初めて見たけどこわぁ…しかも、今日3回も見ちゃったよ!学校でもこんなおっかない実弥くん見たことない。なんども言いたい!やっぱりそのぶちギレフェイスは彼女に向けるべきではないよ!
怖さも相まってよりぎゅっと義勇くんにすがるように抱き締めれば、あ、顔の青筋がもう一ヶ所増えた。
実弥くんの手が延びてきて、義勇くんの襟を掴んだ時、ドアが開く音と窓ガラスが割れないか心配になるぐらいの大声の「ただいまっ!」が聞こえてビックリした!
「チッ…煩ェのが帰ってきた」
「ご、ご兄弟ですか?」
「きょうじゅろう兄ちゃん」
義勇くんだボソリと呟き、実弥くんがウンザリした表情を見せた時、勢いよく階段を駆け上る足音が。
「む?実弥兄ちゃんの友達か!こんにちは!」
「こ、こんにちは」
それから続々登場する産屋敷家の人達。
夕飯の買い出しに行っていた実弥くんのお母さんに珍しく家に帰ってきた次男の小芭内さん、どっかから戻ってきた天元さん。気づいたらリビングにいた無一郎くん。
初めてお会いする実弥くんのお母さんが2階に来て、緊張しながらも初めて挨拶するとぱぁっと笑顔になり、手を握られて「実弥の彼女なのね!?宜しくね!お茶出すからおいで」と私たちはリビングにやってきた。
それからはお母さんを始め、私と実弥くんは皆に質問攻めにあったり好き放題話される。
「実弥が彼女連れてきたのなんて始めてだわ!?」
すいません、お母さん…連れて来られたんじゃなくて勝手に来てしまいました。
「夢ちゃんは実弥とはいつから付き合ってたの?」
「彼女って何?」
「実弥兄ちゃん!夢さんは芋は好きか!」
「実弥じゃなくて俺にしとけ?」
最後の天元さんの言葉でまたぶちギレフェイスになってしまった実弥くんは天元さんに殴りかかるも受け止められてしまっていた。あああ危ない!天元さんと実弥くんの激しい喧嘩がスタートしてしまったのに家族は慣れているのか誰も止めに入らない。あ、でも玄弥くんが心配そう。
実弥くんのお母さんが私達に興味津々で「どっちから告白したの?」とか「実弥のどこが好き?」とニコニコとなかなかに恥ずかしい質問をしてくるもんだから、喧嘩してた実弥くんが今度はぐわっと此方を見たと思ったら天元さんを放ってやってきた。
「お袋ォ!変な事ばっか聞くなァァ!」
「いいじゃない〜今聞かないと実弥ったら何も教えてくれないんだから!あ、夢ちゃん連絡先聞いてもいい?」
「止めろォォ!」
実弥くんに阻止されて連絡は先交換出来なかった。お母さんとは仲良くなっておきたかったな…
それから、お母さんは夕飯一緒にどうかしら?と声を掛けてくれて、是非!と言いたかったんだけど実弥くんが此方を睨んでいるのでこれ以上嫌われたくないので遠慮して今日は帰る事にした。
「義勇くん、またね」
こくっと頷く義勇くんの頭を撫でて、産屋敷家の人に見送られながら家を後にする。
なんか…実弥くんからの視線が痛かった。
家まで見送ってくれると言ってくれたがこれが最後なのかもしれない…別れ話をする為に…
またねと行ったが義勇くんにはもう会えないかも。うぅ…悲しい、最悪な事を想定して鼻の奥がツンとする。
「実弥くん…怒ってる?」
「…怒ってねェ」
いや、今の間は何?絶対怒ってるよね。
顔を見るとぶちギレフェイスではないけど面白くないです。って顔をしている。
浮気とか、何か隠してるなんて疑って家に押し掛けるんじゃなかったぁっ!!
end.
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