縁は異なもの味なもの
「蜜璃ちゃんは伊黒くんにチョコあげるの〜?」
「うん、あげようと思うの!夢ちゃんも不死川くんにあげるんでしょ?」
「どうしようか迷ってるんだよね、もう恥ずかしくって」
「恥ずかしいよねー!考えるだけでドキドキしちゃう」
「分かるー!チョコあげるだけなのに緊張するよねー!」
「えー!あげるだけ?告白しないの!?」
「蜜璃ちゃん告白するの!?スゴーい!私は告白なんて無理だよ〜。でも、蜜璃ちゃんは絶対に付き合えるよ!ね、しのぶちゃん?」
「お二人とも大丈夫だと思いますよ?」
「いや、私は無理無理〜席隣だし、フラれたら学校来れなくなっちゃう」
「そうかなー?私、夢ちゃんと不死川くんは両思いだと思うわ!」
「そんな事ないって、なんか返事素っ気ない時あるし、もしかしたらチョコも受け取ってもらえないかもー」
「一緒に勇気を出して渡そう、夢ちゃん!」
「えーどうしよう〜?しのぶちゃんは?」
「私はあげませんよ?」
「誰にも?」
「えぇ、誰にも」
「冨岡くんにも?」
「何か言いました?」
「イエ、ナニモ」
「冨岡くん…誰かからチョコもらえるのかしら?」
「しのぶちゃんがあげなかったら誰も…」
「あげませんよ」
「…そうだ!皆でチョコ作ったら楽しいと思うの」
「そうだね!だから、しのぶちゃんも一緒に作ろう!ね?」
「仕方がないですね」
「やった!じゃあ、明日の学校終わったら私のお家で作りましょう!」
「うん!賛成!」
バレンタイン当日。
やはり男子は母ちゃんや姉ちゃんの身内ではない異性からチョコがほしい物で、また、自分が気づいていないだけでもしかしたら自分に好意を寄せている女子がいるかもしれない。と期待にそわそわして落ち着かない日。
「あ、宇随くんおはよう!要らないかもしれないけど、はい、チョコ」
「お、ありがとな。俺にもくれるのか?」
「え?うん」
どうしてと言いたげな顔で首を傾げてこちらを見る夢の後ろから不死川がすんげぇこっち睨んでんの。
「いいや、気にすんな」と言って頭を撫でそうになった手を下げた。
その俺を睨んでた不死川は夢が振り返る時にはいつもの顔に戻って…いや、いつも通りじゃねぇな。あれは確実にソワソワしているから笑える。
不死川が夢を好きなのはだいたいのヤツは知っている事だ。見てれば分かるから。人に興味がないか、冨岡みたいに鈍感なやつでなければ気づくはず。
昔はな〜じぃーっと後ろから見つめているだけで我慢していたみてぇだが最近は我慢出来なくなってきたらしい。
そんな毎日熱視線を送らないでアタックしろや。
自分からアタックしないくせに周囲の男には威嚇して、そのお陰で男どもは夢に気軽に話掛けられない。
夢も夢で鈍感だ。
3回連続隣の席が不死川で不自然に思わないのか。
前回の席替えで2人で窓側の席に移動して、夢が「また一緒だね〜嫌じゃない?」と聞いて、耳を赤くした不死川が「別に」と愛想良く返事出来なかったので夢が申し訳なさそうに「誰かに代わってもらう?」なんて言うもんだから焦った不死川は「今更席替えるとか言ってんじゃねェ、他の奴にも迷惑だろ、黙って隣に座ってろォ」とまた素直になれずツンツン発言をして夢をしょんぼりさせていたのをクラスの殆どの奴が見て、あーあ、と思っていた。
どうやって3回連続隣をGETしているかは、1回目は、うちのクラスは女子が先にくじを引く。夢ちゃん何番?と聞かれ、10番だったー。と夢の番号を確認。すると不死川の前の席奴が夢の隣の番号を引いたのを見た不死川は自分のくじと交換するように交渉した。いや…交渉と言うより無理矢理だ。不死川の引いた席は前の方の席だから交換するのを嫌がられたがいいから代われと押しきった。
2回目の席替えは、もう隣の席を譲りたくない不死川は前の日にクラスの男子全員に、「夢の隣の番号を引いたら、俺のと交換しろォ」と予め脅しておき、見事にひ弱そうな男がくじを引いたもんだから、これまた嫌がらせのように前の席を引いた不死川とくじを交換。
3回目はもう、不死川が何も言わなくても夢の隣の番号を引いた奴が不死川へくじを渡し、「おォ、ご苦労さん」とくじを交換した不死川が俺にはヤクザもんに見えた。
俺らのクラスでは夢の隣の席のくじを引いた=不死川と交換=前の席って言う暗黙ルールが出来た。
そして俺はこの前、眠過ぎダル過ぎで屋上でサボっていた。
天気良くてだらだら過ごしていたらいつの間にか昼休みになっていて、そう言えば腹が減ったな。飯食いに行こうと屋上のドアに向かうと女の声がした。どうやら屋上に行く階段で何やら話していて、声からするに甘露寺、胡蝶、夢。
会話の内容、バレンタインについてを聞いてしまった手前、今更登場しずらくなっちまって3人が居なくなるまで屋上から出れなかった。
そんなこんなで不死川と夢が両思いだった事を知ったが、なんとなく不死川には黙ってる。
夢が俺にチョコをくれたのは予想外だったが、不死川よ、そんなに俺を睨まなくったってお前も後から貰えるぞ。とは、やっぱり言わないでおく。
昼休みになり夢の動向を気にしていると、鞄からラッピングされた袋を取り出した。
それは俺と一緒に飯を食っていた不死川も見ていて自分にか!?と思ったようで、飯を食っていた手を一旦止めてお茶で流し、夢に話かけられてもすぐ話せるように準備していて笑える。
あー…咳払いして喉の調子を整えてるところ申し訳ないが、多分違うぞ不死川。
夢が2個目の袋を取り出した。2つのラッピングされた袋を持って向かった先はやっぱり不死川ではなくて…
「おぉ!有り難く頂く!」
煉獄と、
「ありがとう」
冨岡だった。
不死川は顔と手に青筋を浮かべて持っている箸を折ってしまいそうだ。
「うまい!」
バキィッ
あ、やっぱり折った。
不死川が箸を折った音で、煉獄と冨岡にチョコを渡し終わって席に戻ろうとした夢が振り向き、「不死川くん、箸折れたの?私の予備の箸あげようか?」と予想外に声を掛けられてビックリしながらも夢から箸を貰う。チョコじゃなくて箸を。
チョコじゃなくて割り箸だったがそれでも不死川には夢から貰ったものは捨てずらいようで弁当箱と一緒に仕舞ったのは俺は見逃さない。
もう色々可笑しくて笑うのを我慢したつもりだったが俺の目が笑っていたようで、後の体育で不死川にバスケで仕返しされた。
畜生、フェイント掛けまくりやがって。
そんなこんなで今日の授業が終ってしまいもう下校時間。
今日1日の中で一番落ち着きのない不死川。俺にはチョコをくれないのか、早くしないと部活に行ってしまうぞ。そんな焦りを感じる。
掃除当番でもないのに教室をうろうろ。
だけど、肝心の夢が教室から出て行ったのを見てショックを受けて不死川が固まった。渡さないのか?俺も疑問に思ったが部活にも行かなきゃいけないので不死川の肩を叩いて「部活だ」と引きずるように不死川を更衣室に連れて行った。
着替え終った所で俺のスマホが震え、甘露寺から『宇随くんお願い!不死川くんを一人で何処かに向かわせる事できない!?』とメッセージが来た。ハッ、成る程、人前じゃあ恥ずかしくて本命チョコは渡せねぇ訳か。『教室に今から向かわせる』と返信する。そして、しょぼくれている不死川にこそこそと耳打ちすると、ダッシュで教室に向かったようだ。良かったな不死川。
面白いそうなのでどうなってるか覗いてやろうと俺も教室に向かっていると途中で不死川のでぇっけえ声で、
「好きだ!付き合ってくれェ!」
と魂の叫びが聞こえて来たので走って見に行くと、2人共顔を真っ赤にしていて、夢も「私も!」と答えた所で、不死川の無駄に大声を出した告白のせいで近くにいた生徒達が教室の入り口に集まり皆に拍手されている。
後で、なんだよあのでぇっけえ告白はと聞くと、
「テメェが俺に『夢が俺に告白する為に教室で待ってる』って言ったから、俺から先に言ってやっただけだァ」
「あれ俺、告白って言ったっけ?『チョコ渡す為に待ってる』って言わなかったか?」
「違ェ!告白って言ったァ!」
「…そうだったか?」
「テメェ!重要な事を適当に言ってんじゃねェよ!振られてたらどうしてくれるんだコラァ!」
「結果オーライだろ!まっ両思いなの知ってたけどな」
「!?…テメェッ!!ふざけんなァァァア!!」
end.
Happy!Valentine!\(^o^)/
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