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キメツ幼稚園〜実弥くんを祝いたい!後編〜




「だ、駄目だ駄目だ!」


「貴方、そんなに怒らなくても」


「何でよー!?」


夢の父は家族仲良く夕飯を食べている時に怒り出した。その理由は愛娘の夢が今週末に実弥の家に泊まりたいと言い出したからだ。


「実弥くんは男だぞ、女の子の家に泊まりにいくんじゃないんだ」


「男の子だと何で駄目なの?」


「…男は狼なんだぞ」


夢の母も最初、戸惑ったが自分以上に狼狽えて仕舞いには幼稚園児相手に男は狼とか何言ってるの。と呆れて冷ややかな目線を夫へ送る。


「狼?去年の実弥くんのハロウィンの事?」


「だいたい、お風呂はどうするんだ!?」


「一緒に入るー!」


「駄目だ!何度も言うが実弥くんは男の子だぞ」


「じゃあ、お父さんともうお風呂入れないね!」


「お、お父さんはいいんだ!」


「実弥くんは駄目で何でお父さんはいいのー?何で何でー?理由教えてくれないともう、お父さんと一緒にお風呂入るのやめるー」


娘の完全勝利である。この子は将来曲者になるかもしれないと母は思った。
父は言い返せなくなり、情けなく「駄目なんだよ…」と呟き項垂れる。


「貴方、諦めなさい。夢、ただ実弥くん家が良いと言うか分からないから、実弥くんのお母さんがいいよって言ったらね?」


娘はニッコリ笑って「はーい」と返事をして食事を再開した。


食後に夢は「お母さん、早く!早く聞いてみて!」と急かすのでまだ時間も19時だし電話してもいいかと思い、早速電話を掛ける事に。
父は娘にお風呂を拒否られて、悲しみながら一人でお風呂に行ったし調度いい。


「はい、不死川です」


「実弥くん、こんばんは。夢の母です。今、実弥くんのお母さん電話出れそう?」


「…はい、ちょっと待って下さい」


夢のお母さんから電話とはなんだろう。何の話か気になって仕方がない実弥は母に電話がかかってきた事を伝え、電話に出た母にくっついて聞き耳を立てている。


「不死川さん、すいません。今、側に実弥くんいます?」


「はい、居ますよ」


「ちょっと離れてもらえそうですか?」


「分かりました、ちょっと待って下さいね〜」


せっかく夢のサプライズなので、側に実弥がいては聞こえてしまうので離すようにお願いする。夢の性格は間違いなく母譲りだ。


「実弥、お風呂のお湯見てきてくれる?」


「…うん」


めっちゃ気になるがしぶしぶ母の側から離れる。実弥が走って行ったのを確認して、保留を解除した。


「お待たせしました、多分大丈夫です」


「すいません、ありがとうございます。今週末、実弥くんのお誕生日でしょう?夢が泊まりに行きたいって言ってるのよ」


「まぁ!きっと喜ぶわ!」


「不死川さんお腹も大きいから、お邪魔じゃないかしら?」


「夢ちゃん、しっかりしているから大丈夫よ」


夢って聞こえた!
実弥はまだ半分しかお風呂にお湯が溜まってないが居ても立っても居られなくて蛇口を止めて母の元へ走った。


「じゃあ、宜しくお願いします」


驚かせたいから実弥には内緒にしてほしいことと、土曜の昼過ぎに連れて行きます。と伝えて電話は終わり、実弥が走って来たときは調度電話を切る所だった。


「お母さん、何だったの!?」


「ふふっ、お母さん同士の秘密」


その後も結局教えてもらえないし、今週はやたらとお風呂に入ると一人で頭を洗えるように言われた。一人で洗えるけど洗い残しがある時があるので、しっかり流すようにと。


金曜日、幼稚園バスを降りて帰る時に夢が「また明日ね〜!」と言っていたのが気になる。実弥の誕生日は日曜日だ。明日の土曜日とは間違えたのか、それとも前日に祝ってくれるのか。どちらにせよ、夢が自分の為に何かをしてくれる。実弥は待ち遠しくて仕方がなかった。




ピーンポーン


実弥がインターホンの画面を見るとリュックを背負った夢と夢の母が写っている。


「夢だ!」


たたたたっと音を立てて走ってきた実弥はドアを開けた。


「こんにちはー実弥くん!」


「こんにちは!夢入って」


直ぐ様、キラキラの笑顔で夢の手を引いて家の中に入れると実弥の母もやって来る。


「いらっしゃい。夢ちゃんのお母さんも少し上がって行きませんか?」


「せっかくだし、ちょっとお邪魔するわ」そう言ってお母さん同士はリビングへ、実弥達は奥の部屋にやってきた。


早速、「実弥くんお絵かきしよう!」と夢がリュックから道具を取り出す。
この前の段ボールハウスは夢もお気に入りだったようで、紙にこの前作ったハウスに似た絵を書き、ちゃんと『実弥と夢の家』とも書いてある。その家に実弥が芝生を描き、敷地を広げると夢もお花や犬を追加すると夢は広がり、車も描いたりどんどん書き加えていく。


「将来、俺がみんなで住める家を建てる」


「えー凄い!皆みんなって?」


「俺と夢と、俺の家族も夢の家族もみんなだ!」


「凄い凄ーい!じゃあ、私は実弥くんのお嫁さん?」と聞くとちょっと恥ずかしそうに「…うん」と応えると夢は「お母さーん!」とリビングに向う。


「将来、実弥くんのお嫁さんになるからー!」


「良かったわね〜!お父さんが悲しむわね(笑)」


「あら、そしたら実弥は夢ちゃんの為にも頑張って働かなきゃね」


母親達は一瞬、驚いて顔を見合わせたがすぐにニコニコ微笑む。
私も子供の時にそんな事言ってたと母が言ってたなぁ、勿論今の旦那ではないけれどと夢の母は昔を思いだし、実弥の母は本当に我が子は結婚までもっていきそうだと思った…実弥の夢ちゃんへの執着心は凄い。どんなおもちゃやゲームより夢ちゃん。寧ろ子供なのにおもちゃやゲームへの興味は薄く、初めて夢ちゃんが近所へ越してきて公園で実弥に話をかけたその瞬間から、実弥は夢ちゃんに夢中で毎日今日は夢ちゃんとこんな事を話したとか何をしたと楽しそうに教えてくれる。ずっと一緒にいれたらいいねと二人の未来を願う。

照れ臭そうにしている実弥に夢が「実弥くん恥ずかしの〜?」と顔を覗き込もうとすると顔をプイッと背け「べ、別に恥ずかしくねェ!」と言うが耳が赤い。


「あなた〜?ご飯にする?お風呂にする?それともア・タ・シ?」


追い打ちをかけるかのように言うと実弥の顔が真っ赤になってしまった。
ちなみにこの台詞は天元の入れ知恵だ。


「夢、お母さんはもう少しで帰るけど実弥くんに意地悪しないのよ」


『帰る』と聞いて顔を赤くしホワホワしていた実弥がハッとして我に返り、反射的に夢の腕を掴む。
その姿を見た夢のお母さんはクスッと笑って「実弥くん、夢を宜しくね」と伝えた。


「実弥くん!ふたつか?ふつつか者!ですがですがよろしくお願いします!」


初めてのお泊まり会で夢もテンションが上がっている。とても楽しそう。
一方、実弥は状況がよく分からず、期待を含んだ眼差しで3人をキョロキョロ見ている。


「今日はね、夢ちゃんがうちに泊まって実弥のお誕生日をお祝いしてくれるんだって」


「うん!そうしたら、一番におめでとうって言えるからー!」


夢が泊まる。
まだまだ一緒にいれる。
そして、誰よりも先に、一番に夢が自分の誕生日を祝ってくれる。
頭でだんだん状況を理解した実弥はどうしたらいいのか分からないぐらいに嬉しくて、心が爆発してしまいそうなくらい嬉しい感情を夢にぎゅっと抱きついて耐えた。


「実弥くん!今日はずっと一緒だよ!」


それから沢山遊び、帰って来た実弥の父にも描いた絵を見せて将来建てる家の説明をし、実弥の父が夢を抱き上げ膝に乗せ、夢が嬉しそうに話をしてるのがそれはそれは実弥にとっては面白くなくて夢の足を引っ張って下ろそうとし、実弥がむきになるのが父は面白くて実弥をからかった。
4人で夕食を食べた後はお風呂。
なんだか夢と一緒は嬉しいけど、裸になるのは恥ずかしいし、なんかわからないけどドキドキが止まらない。夢ときゃっきゃっしながら体を洗いっこした時間は夢のようで夢に触れるだけでなんでこんなに嬉しいんだろう思い、そして実弥は一人で頭を洗っている時に今日のこの為に母は自分で頭を洗えるようにしたんだと理解。
夢の頭を洗うのを手伝ってやるのも楽しくて、これを切っ掛けに実弥は世話を焼くのが好きになった気がする。
お風呂から上がった後も夢の体を拭いてやって、1日ハイテンションだった為にいきなり襲ってきた睡魔に負けない!と必死で頑張る可愛い夢の髪も乾かしてやり、そんな様子を見ていた母はいい長男になりそうだと思った。


2人仲良く布団に潜った後、もういつ寝てもおかしくない状態なのに「日付が、変わったら…すぐ、お祝い…する、からね」と頑張って言う夢が可愛くて好き過ぎて仕方がない。
日付が変わるのにはまだ3時間以上あるのでとても起きてはいられないだろう。
実弥もずっと夢の顔を見ていたいが眠くなってきてしまった。夢の手をぎゅっと握ったのを最後に2人共スヤスヤと眠ってしまう。




「あーっ!?」


夢の声でビクッとして目が覚めた。


「朝になっちゃった!?実弥くん!お誕生日だよ、お誕生日おめでとう!」


朝から大大大好きな夢に一番に「おめでとう」を貰った実弥は胸が温かくなって満面の笑みで返事をしたのだった。


「うん、ありがとう!」



end.



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