産屋敷 実弥くん1
ピンポーン
ガチャ
「………」
「こ、こんにちは…実弥くんいるかな?」
今日!私はお付き合いしている実弥くんの家にアポ無しでお邪魔しにきました!はい、やって来ました産屋敷家。
なんでかって言うと付き合って3ヶ月経つのにお家に行きたいと言っても断固拒否されてきたからである!
実弥くんは兄弟が沢山いて男だらけだから危ない?など言っているが絶っっっ対に違うと思う。私の存在を家族に知られたくないとか、家に見られたくないものがあるだっ!
これ以上、お付き合いを続けて後で知ってショックを受けたくないので傷は浅いうちにと思いやって来てインターホンを押したのだが…
扉を開けたのは小さい男の子で無言でじっと見られている。
とりあえずしゃがんで目線を合わせてもう一度「実弥くんいる?」と言えば横に首を振られた。
マジかー!決死の思いでやってきたのに実弥くんは不在らしい。
「そっか…ありがとう」と男の子の頭を撫で、立ち去ろうとした時、別の人の声がした。
「義勇誰だった?あ?まだいんの?」
少しだけ開いていた扉がガッと開き、チャラそうな巨人が此方を見下ろしてきた。
「あ、すみません帰りますので!」
立ち上がってお辞儀をして回れ右をし、前に進もうとした所で私の身体は前ではなく後ろに進んだ。というか引っ張られた。
「お前…俺の追っかけか?」
「え?」
「ん〜合格だ」
「え?何がですか?離して下さい。帰りまっわっ!?ちょっと!?降ろして下さい!」
「義勇ちゃんと鍵閉めて来いよ」
巨人に抱えあげて部屋に連れて来られてしまった。
「あの!実弥くんに用があってきました」
「なんだ、お前実弥のファンか?俺にしとけ、お前なら歓迎するぜ?」
「いや、あの…」
ファンっていうか一応彼女なんですが…
言葉につまっていると巨人さんが腕を引いて距離を詰めてきた。近い!顔を背けると部屋のドアが開いた事に気づいた。
「あ」
私の声に巨人さんもドアの方を見た。
「義勇〜邪魔だからリビングに行ってろ」
「お、お願い行かないで!おはぎあげるから!」
ドアの方に手を伸ばすと義勇くんという少年が部屋に入って来て、手を握ってくれた。可愛い!
「義勇くん他に家の人いない?」
こくっと頷かれてがっくりする。
そうなると今、この義勇くんを手放すと自分の身が危険という訳か。
どうするっ!?どうやって逃げる!?
「ただいまー」
巨人さんはチッと舌打ちしているが誰か帰って来たきたことにとりあえずほっとした。
助けを呼ぼうにもなんて言ったら?人んちに勝手に来といて助けてーって?
悩んでるうちに何やら下の階が騒がしくなってきて、巨人さんは義勇くんを持ち上げるとポイッとクローゼットの中に放り込み。クローゼットの前にドカンッとタンスを置いた。
今のうち!!と思いドアに向かって急ぐ。
ドアを掴みかけた時、巨人さんが真後ろにいて壁ドンされていた。
巨人さんは部屋の鍵をかけて、乱暴にまた私を抱えるとこれまたポイッとベッドに私を投げてのし掛かってきたので流石にヤバすぎでしょと思って声を上げた。
「誰かー!!助けっ…んー!!んー!!」
「静かにしろって」
手と口を押さえつけられて涙が浮かんでくる。なんでこんな事に!勝手に実弥くんの家に来た罰だろうか。だって、だって、好きな人の事だから気になるじゃんか。隠し事する実弥くんが悪い!馬鹿馬鹿馬鹿!!
と実弥くんに責任転嫁しているとドタバタと階段を駆け上がって来る足音がした。
ドンッ!ドンッ!ドカンッ!
「天元、テメェ余程殺されてぇらしいなァ」
「おいおい、ノックもせずにドア蹴破る奴に言われたくねぇよ。だいたいお前、俺の部屋のドア破壊するの何回目だよ」
「んー!!んー!!んー!!」
巨人さんのドアを破壊して現れたのは目を血走らせて青筋を浮かべた私の王子様でした。
end.
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