ラピスラズリ〜前編〜
私には3個上のド派手に規格外な幼馴染みがいた。見た目もやる事もド派手。
近所に住んでいて親同士も仲が良くて小さい頃はよく遊んでくれたし、かっこ良くてすっごい好きだった記憶がある。小さい頃はね。
私の初恋は天元だったなぁ。
いっつも天元の後ろをくっついて歩き、好き好き言って『将来は結婚するのー』とか『お嫁さんにしてもらうのー』など言いふらしていたのは私の黒歴史だ。
天元は優しくて、いつも私の手を引いていろいろ遊びに連れて行ってくれてた。
成長するに連れてどんどん大きくなっていって、え?どこまで大きくなるの?って思うぐらいどんどん大きくなっていくし、元々ハッキリしていた顔立ちは女の子達からモッテモテでそれはもうビックリするぐらいイケメンに育ってしまった。
今ではもう身長差は40cmちょっとあると思う。
小学生の時は自慢の幼馴染みだったのが、中学になるとあまりにも釣り合わない、ちんちくりんで地味な私はだんだんと比べられるのが恥ずかしくてなっていった。
女の子達には邪魔者扱いされるし。
天元は高校生になると非行に走り、近づくのがおっかなくなってしまった。
この地域では知らない人はいないんじゃないかってぐらい有名な不良になってしまい、もう、私の知ってる天元では無くなってしまって、この頃から幼馴染みだと言うことは周りには秘密にするようになり、出会っても『天元』って呼ぶのは止めて『宇髄さん』と呼ぶようになった。
大学に上がると同時に地方の大学に行き、一人暮らしを始めたらしく、姿はもうずっと見ていない。
この前、宇髄さんのお母さんに会って立ち話をして聞いたが今は大学を卒業して、なんとあの不良が美術教師になったそうだ!
確かに宇髄さんは運動神経も抜群だし、絵も上手かった。勉強だって少しやれば出来ちゃってた。宇髄さんは何でもできちゃうんだよね〜。
世の中って不公平だと昔から思っていた。
私は運動神経も頭も絵も上手くないし、地味。でも、大学生になって、お化粧も覚えて、毎日おっぱい体操頑張ってEカップまで成長する事が出来たのだ!
少しはマシになったのかな?最近、初彼が出来たので浮かれまくっている。先日、深〜いキスも済ませたところ。
宇髄さんのお母さんに私もついに彼氏ができたんですよっ!と伝えると。あら、天元が悲しむわ。夢ちゃんはうちにお嫁さんに来てくれるんじゃなかったの?なんて言われてしまった。
いやいやいや、おばさん何を言ってるの。子供の約束でしょ?と言えば眉を下げて、そう、残念だわ。と言っていた。
今日はバイト帰りについに彼氏の家にお泊まりに行くのだ!
いつか来るかなと思っていたこの日の為にバイト代を脱毛に充てて、VIOの処理もしてきたし、経験豊富な友人にアドバイスももらってきた。
それでも緊張するし、痛いのか心配だけど彼も初めてのようだから一緒に頑張りたい。
ちょっとセクシーな下着にワンピースのパジャマを持参してきた。
近くの駅まで彼が迎えに来てくれる。早く会いたいと思いながら一人夜道を歩いていると横に黒の大きな車が来て窓ガラスが降りた。
「おねーちゃん、こんな夜道に一人は危ないぜ」
「う、宇髄さん!」
何やら怖いと思った車からは久々に見た相変わらず大きなイケメンな宇髄さんだった。
「よぉ、久しぶり。迎えに来てやったぜ?乗れよ」
「迎え?いや、いいよすぐそこの駅に行けば彼氏待ってるし」
「…ふ〜ん。久しぶりだし、話そうぜ」
「…駅の手前で降ろして下さいね」そう言って車高の高い車に乗り込もうとするも登るのが大変でもたもたしていると、宇髄さんの腕に引っ張り上げられてしまった。
「軽っ、相変わらずどんくさいのな、お前」
「すみません」
「お袋から聞いたぜ彼氏出来たんだってな」そう言いながら片手で運転を始めた宇髄さん。
「はい…宇髄さんも先生になったって?」
「まぁな」
「不良だったのに先生になったなんて凄い!」
「俺、何でもできちゃうから」
ニカッと笑う顔が懐かしい。
あれ?ここを曲がると駅のはずはのに。
宇髄さんは曲がらず車を直進させる。
「宇髄さん、通りすぎました!」
「ん〜?」
それから、車を止めてもらうようにお願いしても止めてくれず、何処に向かっているのか聞いても教えてくれないまま何処かの駐車場についた。
彼氏にはどう説明したらいいか分からず、待たせるのも悪いので今日はバイト長引いて行けそうにない。ゴメン。と謝りのメッセージを送っておいた。これでフラれたらどうしてくれるのか。
「宇髄さん、何処に?」
「俺ん家」
「いや…帰りたいんだけど」
「久しぶりに会ったんだぜ?つれねー事言うなよ」
何なんだいきなり、たまたま会って拉致られたんじゃないか。
今日は彼氏と一生忘れられない夜を過ごす予定だったのに。もう、なんなのだ!
車から降りるのにまたもたもたしてたら抱えて降ろされてしまった。腕が凄く太い。
「荷物多いな」
「お泊まりだったから」
「…なるほど、な」
どういうつもりか分からないが少し話したら帰ろう。彼氏怒ってないといいな…
家に入ると白と黒のカッコいい大人の男って感じの部屋でどこにいたらいいのか分からずそわそわしてたらソファに座っとけと言われた。
スマホを弄っていると目の前にロックグラスで梅酒?らしきものが置かれた。
横にドカッと腰かけた宇髄さんからはプシュと音がして見てみると缶ビールを飲んでいるではないか。
「ちょっと!」
「あ?」
美味しそうに飲んでるけど、お酒飲んだらもう運転できないじゃないか。
勝手に連れて来ておきながら帰りは自力で帰れと言うことなんだろう、昔の優しい天元はどっかに行ってしまったようだ。
「もう」
少し不貞腐れてスマホに目を戻すとスマホを取られてテーブルに置かれてしまう。
「こっち来い」と言って自分の足を叩いている。まさか、座れという事なのか…
子供の頃はね、まあ膝の上に跨がりそのまま天元の胸に頭を預けて涎を垂らして寝てたりもしてましたわ。暖かくてつい眠たくなったけど、今は私も大人になったからそんな事はしない。
「座らないよ!ちょっと!あ、わっ!」
缶ビールを置いたと思えば脇に両手を突っ込まれて持ち上げられて乱暴に跨ぐように座らされてしまった。
不安定で、胸に手をつくとその胸板の厚さに男を意識してしまい恥ずかしくなる。逃げようともがいても腰を捕まれて逃げられない。
「元気だったか?」
「…はい、宇髄さんも元気そうで」
「"宇髄さん"なんて他人行儀な呼び方すんな」
「は、放して…や!」
抵抗なんて全く意味がなかったのか簡単には身体を押さえるように抱き締められてしまった。
どうしてこうなってしまったのか、良くない、このままでは良くない気がする。
「昔は俺に引っ付いてたのにな、可愛かった夢はどこにいった?」
ため息を吐きながら身体が放されると顔を覗き込まれてゾクッとした。
宇髄さんの目が怖い。
「私も、もう大人なので!」
宇髄さんがぐっと後ろのテーブルに手を伸ばしてロックグラスを取り、持たされる。
「じゃあ、酒飲めるだろ」
ほら、乾杯とグラスと缶ビールを軽くぶつけて、また飲み始めたので私も大人しくグラスに口を付けた。
end.
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