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31話




夢が紙を手に考え込んでいた。


「どうしたんだ?」


「うーん、ちょっと嫌な予感がして」


嫌な予感?なんだろうと座席が隣の炭治郎が覗き込んだ。
夢が持っていた紙には、お客様からの問い合わせのメール
文章が記載されている。


「…配達時間を変更したが商品が届かない。か」


正直、商品が届かない系の問い合わせは多い。商品が届かない原因は、宅配業者の配達の遅延、お客様の配達日の勘違いなどのパターンが多いのだが、先日、配達日の変更を依頼するはずが、誤って配達ストップの依頼を掛けてしまった夢はまた間違ったのではないかと不安になっていた。


「依頼書、確認してくる」


うん、きっと大丈夫だよ!と炭治郎に励まされた夢は依頼書が保管されているキャビネットから、ファイルを持って来て恐る恐る確認する。


「あった、変更依頼!ちゃんと依頼してる」


「そうか良かった、あとは宅配業者に確認だな」


とりあえず自分がまた同じミスをしていない事にホッとした夢は、宅配業者に電話をしようと、電話番号を調べるため自分のパソコンを見ると新着のチャットが来ている。不死川だ。

『どうかしたのか?』短い文章だが、夢の異変に気づいたようだ。今、不死川はヘッドセットを着けて先日導入したスマートワークでWeb会議中。
Web会議中でも部署内の状況を常に把握している!?視野の広さに夢は驚いた。
驚いて反射的に不死川の方を見ると目が合い、カーッと自身の顔に熱が集まったのが分かる。赤い顔を見られないようにパソコンに向き直り、状況を打ち込むと何か問題があったら相談するように返信が来た。
やはり不死川は頼りになる上司だ。だけど、不死川に迷惑ばかりかけてもいられない。心配をかけないように頑張ろう。

夢は気合いを入れ直して、宅配業者に電話を掛けた。


確認したところ、宅配業者で商品を破損してしまい、調度代品をこちらに依頼しようと思っていたところだったらしい。
では、急ぎ代品を手配しなくては。
在庫を確認すると発送センターに在庫がありそうで、また前回のようにメーカーにお願いしたりしなくて済みそう。
あとは曲者揃いの発送センターで苦手な人が電話に出なければいいなと思う。




「杏寿郎に代われ」


「あの、在庫を確認したいだけなんですが…」


「杏寿郎に代、わ、れ、と言っている」


もう!なんでよりにもよって猗窩座さんなんだ!
正に、夢が頭の中で描いていた、電話に出てほしくない人ナンバーワンが出てしまった。


「れ、煉獄さんは今、お客様対応中です!」


「チッ」


舌打ちした!?この人信じられない!仕事なのに!

腹立たしい態度を取られてちょっとムキになった夢の声に、不死川がこちらを見ている事に気付き、心配をかけないようになんとか話を進めなくてはと我に返る。
なんとか話を聞いてもらい、商品を確保。あとは、宅配業者にまた集荷してもらうように依頼をしなくては。


「で、杏寿郎はいつ商品を取りに来る?お前は来なくていいからな」


「誠に残念ながら、煉獄さんも私も発送センターに取り行きません!宅配業者が引き取りに行きますので宜しくお願いいたします!」


もう、この人は苦手を通り越して嫌いだ。
ちょっとまた声が少し大きくなってしまったではないか。
チラッと不死川の方を見るが目は合わなかった。こちらを見ているのではないかと思った自分が恥ずかしい。


「俺の名前が聞こえたが、何かあったのか?」


「あ、えと、発送センターに電話したら猗窩座さんが出まして…」


「うむ!すまないな!何となく想像がついた」


煉獄さんも変な人に好かれてしまって可哀想。
しかし、猗窩座さんに奥さんがいると言うから驚きだ。あの好き好きオーラは絶対に煉獄に恋をしていても可笑しくない感じだったから、絶対ゲイだと思ったのに。
余計な事に気を取られ過ぎた、良くない良くない。代品が用意出来たと宅配業者に連絡しよう。




「どうだ?破損の件は解決したか!」


「はっはい!発送センターに宅配業者が代品を取りに行って、お客様にお詫びの上、再配に明日行ってもらう事になりました」


ビックリした、集中していて煉獄が横に来ている事に気づかなかった。それだけ集中していたということか。


「そうか!よくやった」


「ありがとうございます」


少し強い口調で話していたから煉獄も心配してくれたのだろうか。不死川といい、煉獄といい管理者はやはり常に周りを確認しているのか…凄い。

はぁ、一件終わってホッとすると目が乾いてるように感じ、目薬とティッシュを用意する。上を向いて目薬を垂らすが一滴のはずがやっぱり多く垂らしてしまった。昔から目薬をさすのが苦手で、目から溢れるそれを予め用意していたティッシュで少し下を向きながら拭き取る。


「さっきは大丈、夫……お、おいっ…」


「えっ」


また気づかなかったが今度は後ろに不死川が来ており、夢が振り向くと目を見開いて一瞬不死川が固まった。
すぐに肩を掴まれ、顔が近づく。
見開いた目はだんだんと細められてすぐに眉間にシワが寄せられる。


「どうしたんだそれェ」


「えっ、えっ?」


近さにまた顔に熱が集まっていく。


「その涙、どうした」


「あ、えと、これは…目薬で、溢れ、ました」


夢の言葉を聞いた途端、また目を見開いた不死川は顔を背け、頭をボリボリかきながら、誰かに泣かされた訳じゃねェんだな。と呟いた。


「はい、目薬さすの、下手で…」


すいません。と恥ずかしさと申し訳なさで下を向いた夢。


「いや、大丈夫ならいい」


「はい、すいまっ!?」


今、去り際に頭を…ポンポンされた、多分。


顔も耳も赤くなっているであろう自分の状態に、恥ずかしくて穴があったら入りたい。

ちらりと周りを見ると煉獄も炭治郎もあからさまに目を逸らした。

不死川と関わる度に真っ赤になっていたら、不死川を好きですと周りに言っているようなもんじゃないか。


「何も見ていない!」


「俺も何も見ていない!」


本当に穴があったら入りたい。


この後、夢は余所見しないようにパソコンだけを見つめて仕事をし続けた。




今日も1日がもう少しで終わりそうな時刻。
不死川は残業があったので夢を送りたかったができず、スーパーで適当に食材を買い、自炊。米が炊き上がるまでの間、サラリーマンではあり得ない速度の腕立て伏せをしてから、晩御飯、そして今、風呂から上がってサッパリした不死川の風呂上がりのハイボールタイム。

ソファーに腰掛け、ハイボールを流し込む。
テレビに目を向けても大して興味をそそられず、スマホに目を向ければ…先日『送り狼』から『変な虫』に名前が変わったグループトークで未読が沢山ある。
毎度嫌な気しかしないが、見ない事も出来ない。


なんか、今日は面白い事無かったのか?また宇随が余計な事を言い出したのがきっかけのようだ。
その呟きに伊黒も、煉獄もあったあった。と答える。


『お!どんなラブコメ繰り広げてたんだ?教えてくれ!』


『教えてやろう』


何がラブコメだァ、ふざけんな。そして、伊黒も見てたのかよ。


『目薬を多くさした夢の目から、目薬が涙のように溢れ、話しかけに行った不死川が泣いていると勘違い。そして、目薬だと気付き赤面しながら去り際に夢の頭をポンポンしてやる。というラブコメだ』


『めっちゃウケんな、見たかったわー!それ!』


『不死川も夢も顔が赤かった』


『顔文字をつけるとこうだ!』


顔文字だ?煉獄、顔文字なんか使うのか?


『ハッ!( ゚д゚メ)』

『どうしたんだそれェ\( `Д´メ)』

『( 。゜o゜)えっ?』

『その涙どうしたァ(´д`メ)』

『(〃゚д゚〃)えと、目薬です』

『大丈夫ならいい(〃`д゚〃メ)』

『(〃゚д゚〃)ヽ(〃`д゚〃メ)ポンポン♪』

『*:.。.ぽ(///o///) っ.。:*』


スクロールしていくと煉獄の顔文字入りで説明してやがる。


『やべぇ、腹捩れるwww』


『まさにこんな感じだったな』


『この顔文字を打ってるのが煉獄なのも笑うwww』


また散々好き放題に言ってやがる。


『(〃`д゚〃メ)←この顔の表現上手い(笑)』


『分かる!見てない俺でも想像できたwおっ、既読が3ついたって事は…』


『好き勝手言ってんじゃねーよ』


『不死川だ(*ノωノ)キャー』


『(*ノωノ)キャー』


『(*ノωノ)キャー』


『明日殺す』




end.


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