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32話




押し倒された夢は、「こんな事する人、実弥くんしかいないよ」と言い、実弥の青筋が増える。
だから大丈夫と言いたいんだろうが、実弥にとってはそうじゃない。
そうじゃないけど…男の性というものが分からないし、教えられて来なかった夢に到底理解できないだろう。

今から教えるか…いや、教えるったってどうすりゃいいんだ。知識がないおかげで、俺の分身が腫れたら上下に抜いて、汁を吐き出せばいい。そうすれば、腫れが引く。それを手伝うことを嫌がっていないのに、男という生き物について教えたら嫌がらないとは言いきれねェ…


実弥としては、他の男への危機感は持ってほしいものの、いけない事をしている。男の人には触れてはいけない、危険。→実弥くんにも触れるの止めよう。そうは、なって欲しくない!そうなったら最悪だ!
1度あんな体験をしてしまったら、忘れられないし、またシてほしいと思っている。

だが、今の実弥には得策が浮かばない。


「兎に角なァ!俺は…お前が他の奴に触れられるのも、触れられるのも嫌なんだ。分かったかァ!?」


「うわっ、は、はい!」


どうしたら、何と言ったらいいのか思いつかない実弥が思うがままの事を口にする。

いつもは詳細もろくに説明せず、「駄目なもんは駄目だァ」で怒りをぶつけて来ていたが、今日は珍しく自分の感情を伝えてきた。
思いもよらない実弥の発言に夢はビックリして固まる。
そして、怒鳴った実弥も固まり、らしくない事を口にした。と黙り、身体を起こして頭をポリポリかく。


「…実弥くん…おはぎ、おはぎ食べよ?」




何だかよくわからないが、身体を起こした夢は裁縫道具を仕舞い、気まずそうにしている実弥に、義勇からもらったおはぎを食べようと声をかけた。
大人しくなった実弥は夢に促されるままに居間に着いて行き、「ほら、おいしそうだよ」食べて元気を出すよう(?)に声をかける。

不機嫌でもおはぎは食べるようだ。
昔からどんなに機嫌が悪くても、出されたらおはぎは食べる実弥。
不機嫌な顔をしながら、口一杯におはぎを頬張る姿はなんか可愛いし、なんか面白いと夢は思った。




結局、男避けのいい対策は思い付かないままで、どれだけ鬼を早く退治してどれだけ早く帰宅できるか選手権連続優勝の実弥は、風呂を済ませて布団に潜り込む。
今日もすぴすぴ気持ち良さそうに寝ている夢の顔を眺め、癒される。今日は実弥が帰って来たことに気づいてくれないのだろうか。気づいてすり寄っては来てくれないのだろうか、そう思っていると夢の目が開いた。


「実弥、くん、おかえり」


「ただいまァ」


眠い目を擦りながら気づいた夢に、口付けをするとむくむくと性欲が湧いてくる。
よし、今日も近い将来の為に夢の身体を馴れさせるぞ!そう、思って自然と身体を撫でると…


「実弥くん、明日、蝶屋敷行っていい?」


「どうした…どこか体調悪いのか」


「うん、ちょっとお腹が…」


お腹が痛いのか、夢の体調が良くないと聞けば厭らしい気持ちなんかは一気に吹っ飛び、代わりに変な焦りが出てきた。


「痛いのか?具体的に言ってみろォ」


「ん、痛いんじゃなくて…その、」


言いづらそうな夢に、心配な気持ちとお前の事は全部教えてくれ!そんな気持ちから少しの苛立ちを覚える。俺に恥ずかしいとか遠慮したくなる気持ちなんて止めてくれ、俺はどんな事だってお前の事なら知りたいんだ。

言え、早く教えてくれ!そう言いたいのをぐっと堪えて夢の言葉を待つ。


「…便秘なの」


…便秘?便がでない事か。女は男に比べて便秘になりやすいと聞いた事がある。身体だけは健康でめっちゃ丈夫な実弥は便秘になった事がないなァ…なんて少し恥ずかしそうな夢の顔を見ながら思う。

そして、そうだよなぁ、夢もうんこするよなぁ、俺等と同じモンが出るんだよなぁ。と変な事をつい考えた。


「…そうかァ、どれくらい出てねェんだ?」


「もう、そんな事女の子に聞いちゃだめだと思うよ?」


そんな事ぐらい分かるが、夢の事だから聞けずにはいられない。


「いいから言えェ」


「今日で丸2日、かな?」


「…明日、朝イチで胡蝶のとこ行くぞォ」


「お昼過ぎでいいよぉ実弥くん。ゆっくり休んで」


「…起きたら行くからなァ」


自分の腹の具合が悪いのに、実弥の睡眠を気遣う夢はなんて優しいんだ。ただ、夢が具合悪いと聞いてしまった以上は実弥がゆっくり寝られる訳はなかった。




そして…


「夢、朝だぞ」


「…ぅん?」


心配でゆっくり寝られない実弥が昼まで寝ているはずもなく、やはり早くに起床。
それでも、寝ている夢の寝顔を10分15分可愛いなぁと眺めてから起こしたのだ。
起こされた夢も時間を見て早っ、まだ寝てても良かったのにと思う程に、ちゃんと朝に起こされた。
寝ぼけながら朝ごはんを用意し、二人で食べたが便秘の夢はあまり食が進まない。
その様子に実弥の夢に対しての超過保護心配症が発動。便秘なのは他に何か悪いところがあって便秘になってしまったのではないか、胃か腸に問題があるから食まで細くなってしまったのではないか。考え出したらキリがないし、不安で仕方がない。早く、早く蝶屋敷へ。
そう思って朝ごはんを食べ終わると夢には「動くな座ってろ」「え、大丈…」「動くな!」と言い付け、実弥はそそくさと夢のお膳も下げて洗い物も済まし、着替えが終わった夢を抱えると自分で歩くと言っても聞かず、蝶屋敷まで走って向かってしまう。
途中、好奇の目で見られるのが恥ずかしくて顔を顔を見られないようにしていたが、『殺』の文字を背負った実弥が目立ちすぎて注目を浴びていた。




「胡蝶ォ!」


「本当に不死川さんは夢さんの事になると周りが見えなくなるようですね」


お邪魔しますの挨拶も無しに勝手に蝶屋敷に上がり込み、しのぶがいるであろう部屋にやって来て、夢を抱えている実弥は足で戸を開けた。


「夢が便秘なんだ観てくれェ!」


「ちょ、ちょっと!」


そんな事、大きな声で言わないでほしい夢の制止も虚しく、実弥は続ける。


「2日も糞してねェんだ。食欲もねェ。」


「そんな配慮に欠ける発言ばかりしていると、夢さんに嫌われてしまいますよ」


「もぅ、本当に恥ずかしい…」


嫌だもう、恥ずかしすぎてこの場からいなくなりたい夢とそんな夢を抱えたままずいずいとしのぶに差し出す実弥。
しのぶは最近、この人は伊之助と大差無いのではないかと思う。


「わかりましたから、夢さんを降ろして、不死川さんは出てって…と言ってもそのままいるのでしょう」


「当たり前だァ」


はぁ、と朝からため息をついたしのぶは夢に問診を始めた。




「まぁ一般的に女性は便秘になりやすいですし、月経も近いという事なのでそのせいでしょう。あとは…」


「あとは何だァ」


勿体ぶらずに早く言えと圧をかける。


「適度な運動と、食物繊維を多くとるといいでしょう。ですから、心配だから夢さんに動くなと言ったり、屋敷から出ないようにしたり、歩かせないような行動は逆効果です。分かりますか不死川さん?」


「な、なんだとォ」


「運動不足の原因は不死川さんのせいではないでしょうか?正解過ぎてぐうの音も出ませんか?」


「ぐぅっ」


「ぐうの音は出るんですね」と追撃の嫌味も、今の不死川には聞こえない。


「整腸剤お出ししておきますが、それでも直らない場合の為に…浣腸もお渡ししておきますね」




「「浣腸!?」」



end.



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