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2話


「ふぅーっ」


実弥は湯船に浸かって寛ぐ。
正直、昨日も今日も任務に行ってないので疲れてもいないのだが。
実弥は昨日、無理矢理な言い訳をして任務を天元達に押し付けて自分は任務に行かなかったのだ。


*****************


昨日の昼間に、天元達と昨夜行く予定だった情報収集の打ち合わせをした。
打ち合わせが一旦終わり、時間ができたので夢の様子を見に屋敷に戻る事にした。



実弥は夢が超大切なのである。いつだって夢が1番で、ずっと一緒に過ごしてきた。


夢は元々、近所に住む玄弥と同い年の女の子だった。ある日、目が覚めると夢は一人だったという。両親が居なくなった。帰って来ない。それからは、実弥達と一緒に暮らしていた。


あの悲しい事件があり、玄弥に「人殺し」と言われた実弥に夢は手をとり、今日までずっと付いてきた。昔もこれからも実弥は夢とずっと一緒にいるつもりだ。


そんな実弥は少しでも夢と一緒に居たいので屋敷に戻る事にした。


屋敷の近くまで来ると、なんと屋敷にいると思っていた夢が炭治郎、善逸、伊之助と何処かへ歩いていく所を目撃。


「アイツ等っ…」


実弥はとっさに4人に見えない物陰に身を隠す。


「ねー伊之助、ツヤツヤどんぐりもう一度見せて?」


「おぅ、いいぜ!」


「本当に綺麗だね〜私にも見つけられるかな〜?」


「夢ちゃん、僕見つけたらあげるよ!」


「4人で探したらきっと見つかるさ」




実弥が見ているなんて何も気づかず4人は近くの森に向かって行く。

この時点で夢は約束事を2つ破っていた。


『任務の時はおはぎを作って待つ』
『出かける時は実弥くんの許可をとる』


そもそも夢は知り合いが少ない。実弥が大事に大事に屋敷に閉まっているようなものだから、あまり知り合いも増えず、そして、何より実弥が鬼のように目を光らせて監視しているので一般男子はまず関われない。


そんな中、蝶屋敷でたまたま出会った炭治郎、善逸、伊之助の3人は臆することなく風柱邸へときどき遊びに来るようになったのだ。
歳も近いし、何より異性の友人がいない夢にとっては遊びに来てくれる事が嬉しかった。


炭治郎たちも夢がなかなか外に遊びに行けないと聞いたので最近では時折、風柱邸に遊びに来る。


実弥に出かける事を言っていないのはわかっていたが、任務で朝方まで帰って来ない予定だからきっとバレないだろうし、何より皆でツヤツヤどんぐりを探しに行きたい気持ちが勝った。


まさか実弥に見られてると思っていない夢はウキウキで炭治郎たちと近くの森に入って行き、だんだんと4人の姿は見えなくなる。


実弥にとっては一大事。これはもう任務どころではない。今回の任務は情報収集だし、それほど危険でもないと考えるや否や来た道を戻り天元達に今夜は任務に行かない事を伝えた。


実弥の過保護&夢への異常な執着は天元も知っているので呆れたが今回の任務は自分達でやっておくと引き受けてくれたのだ。


そうして、実弥は屋敷に戻り夢の帰りを待ち、ツヤツヤどんぐりを1つ見つけて帰ってきた夢を怒鳴りつけた。それが昨日の話。



************************



風呂から上がった実弥は縁側で夜風にあたり火照った体を冷ましながら考えに耽る。


たまにこの屋敷に客は来るがだいたいは実弥の客。夢への客はあまり来ない。


実弥はなんとなく嫌な予感がするのだ。あの3人組に対して…特に…


「クソ猪がァ…」


夢が実弥から離れていくなんてありえない。ありえない事だが、昨日見た伊之助に向ける笑顔を見た時になにか嫌な予感がしたのだ。


実弥は火照った体が落ち着いたところで寝る準備をして寝室に向かう。


寝室の戸を引くと横並びに2組の布団があり片方は夢が入って既に寝ている。片腕が布団から出て、実弥の布団の上に伸びスピースピーと寝息を立てて気持ちよさげだ。


実弥も布団に入り、肩肘をついて夢を眺め、自分の方に伸びた手を優しく握る。

こっちはいつもお前の事でハラハラさせられてんのになんの心配もなさそうな顔して寝やがってと心の中で悪態をつく。


「…ん…実弥くん?」


「悪りぃ、起こしちまったな」


軽く目を擦り、実弥の方を見た夢は繋がれてる手を見て少しニヤリとした。


「どうしたの実弥くん?寂しくなっちゃったの〜?」


「……るせェ」


からかったら怒られるものだと思っていたけれども返って来た声は予想に反して弱々しい声で、握っていた手も離されて後ろを向かれてしまった。


あらあら、これは本当に…寂しいのか珍しく弱々しい反応をする実弥が心配になる夢。


ズズズッと自分の布団から実弥の布団に移動し、後ろから実弥を抱き締めるとお腹辺りに回した手を再び握られる。


「温かい…実弥くん、おやすみ」


「あァ」




2人とも安らかに眠れ、朝起きた時は実弥が夢抱き締めていた。



end.

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