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28話




「俺、抱くんじゃねぇかと思った」


割と真面目な顔をして言う宇随。
よもや!と言う煉獄、人前で何を考えているんだお前は的な視線を不死川に送る伊黒。


「ンな訳ねーだろ、お前の目に夢の肌を晒すかよ」


今はド派手なポスター撮影後の男子飲み会である。


不死川との撮影後、放心状態で動かない夢の手を引いて、わいわいやっている隣の部屋に行くと、皆の視線は2人の手に。
勘違いした甘露寺がおめでとう!と興奮しながら話掛けてきて、やっと意識が戻った夢が何がですか!?と答えると、まぁ!?恥ずかしいのかしら!?今日は金曜だし、仕事終わりに女子会しましょう!そこでたっぷり聞かせてね!キラキラ!とでも効果音が付きそうな感じで話しかけられる。
着いていけてない夢の元から離れ、甘露寺はしのぶちゃーん!と、次に胡蝶を今夜の飲み会に誘いに行った。
その光景を見ていた伊黒は、甘露寺が女子会に行ってしまうのか…としょんぼりし、そして、いつまでも夢の手を握ってる不死川もしょんぼり。今夜、特に約束をしている訳ではなかったが、彼女に自分以外の予定ができてしまったと思うとどこか残念な気持ちになったのだ。


そんな状況を見ていた宇随はそれなら俺達は男子会しよーぜ!花金だしよ!と言うことで夏祭り準備後に飲みに来ている。
何時もの、宇随、煉獄、伊黒、不死川の4人。宇随が冨岡にも珍しく声を掛けていたが、冨岡は炭治郎達と焼き肉食べ放題に行く約束をしているので断られた。

そして、安くて上手い大衆居酒屋で飲み始め、話題は不死川と夢のポスター撮影に。

唯一、不死川と夢の様子を撮影していたので知っている宇随は、不死川が夢を抱く勢いだったと語る。


「それはもー情熱的に見つめて、抱きしめてたからよ」


「あまりぐいぐい行くと女慣れしてると思われるぞ」


伊黒は何時も痛いところを突いてくる。否定の言葉も肯定の言葉も出ず、不死川はハイボールを流し込む。


「夢は軟派な男は苦手だろうな!」


「軟派じゃねェ」


「お前、前科あるから」


「あれはァ!…自棄糞になっちまっただけだァ」


「悪りぃ、悪りぃ、拗ねんなって。な?実弥ちゃん」


あまり蒸し返して欲しくない、荒れまくっていた不死川の過去をまた宇随がつついて、ご機嫌斜めにしてしまった。


「で、どうよ、進展は?」


「あァ、近々また遠出する」


「お、次は何処に行くんだ?」


何となく言いたくない。着いて来たりとかそんな事はしないだろうが、なんとなく言いたくないと不死川は思った。けど、どうせ夢が甘露寺に言う→伊黒に伝わる→こいつらに広まる。そんな図式が頭に浮かび、素直に伊豆のサボテン動物公園に行く約束をしたと伝える。


「ほ〜?伊豆なら片道3時間ぐらいかかるんじゃねーの?日帰り?」


「あァ、まぁ…日帰りで行けねー距離じゃねーだろ」


健気だなぁ。
勿論、不死川が言う通り日帰りで行けない距離ではない。だけど、週末を利用して行くなら泊まりで行ってもおかしくない距離だし、俺なら遠いから泊まりで行こうぜ!って話を持っていく所だ。でも、まだ付き合ってないし、泊まりなんて夢は無理だろうから、めちゃくちゃ泊まりで行きたいだろうが我慢してるんだろうなぁと宇随は生暖かい目で、不死川を見つめている。


「で、不死川はいつ告白するんだ!?」


さっきまで軟骨の唐揚げを夢中で食べていた煉獄が、いきなり核心に迫った。


「8月の花火大会までには…」


「8月!?お前今、何月だと思ってんの!?6月だぞ!?あと2ヶ月もモダモダするつもりかよ!?」


驚いた宇随は飲もうとして持ち上げていたビールジョッキをダンッと音を鳴らして置き、あり得ねぇとポーズする。


「……もう少し、早くしようとは思ってる」


「いや、不死川。お前と夢のペースで進めばいい。宇随に惑わされるな」


「いやいや、そんなに長かったら女も待ってらんねーって」


「そんな事はない。お互いをよく知りもしないで付き合うから、長続きしない奴らばっかりなんだ。不死川、焦る事はない」


「カッチーン。イグッティそれは俺と煉獄への当て付けか?」


「宇随!俺まで巻き込むな!」


気持ち悪い呼び方をするな!と珍しく伊黒が大きめの声で抗議し、伊黒の中の心に火が着いたようで伊黒と宇随が恋愛について熱く語りだした。




一方、女子会はと言うと…


「それで!それで!」


「わ、私の記憶違いでなければ…」


「なければ!?」


「首に、手を回すようにされて…抱きしめられ…ました」


「キャー!?え、首に手を回すってどんな感じ!?」


「こんな感じだと思います」


「キャャャャア!?夢ちゃん大胆!」


「違います!手、を、持ってかれて!強制的にです!そして、何故その写真が!?」


少し暗めの照明で、女子が好きそうなお洒落な内装のダイニングバーに来ている。
あれやこれやと夢が事情聴取のようにテンションの高い質問責めに合い、煩いだろと思い個室にしたが、それでも甘露寺が盛り上がり過ぎて外へ駄々漏れである。
先ほど店員に一度、指摘を受けた。
今は不死川とのポスター撮影はどんなだったのか詳しく知りたいと言うのでポーズの説明していると、胡蝶がスマホでその時の写真を見せて来たのでビックリ。勿論、胡蝶に写真を送ったのはイグッティと恋愛について討論中の宇随だ。

テンションの上がった甘露寺がワイングラスを割ってしまい、店員が片付けに来たが、ムッとするどころか、可愛らしくごめんなさ〜いする甘露寺と胡蝶にデレデレになっていた。そんな様子を神崎は終始引いて見ている。

グラスを片付け終わるとまた写真を見始め、夢は顔を手で隠して下を向いて黙っている。凄い!キスしちゃいそう!不死川さん大胆!などなど聞こえて夢は穴があったら入りたかった。


「いつから付き合っているのですか?」


神崎の質問に顔を上げ、付き合ってないです!と勢いよく答える。


「えぇ!?」
「嘘でしょ!?」


神崎と甘露寺が驚きの声をあげるが胡蝶には驚いた様子はない。ここまで長年モダモダしてきたのだから、そんなスマートに不死川が事を運んでいるとは思えなかったのだ。


「あくまでも…恋人、役だからだと…」


いや、ポスター撮影のベタベタぶりも凄いけど、それだけの様子で付き合っていると2人が勘違いをしたのではない。
前々から、仕事中に夢を目で追って、想いだけをどんどん膨れ上がらせていた不死川が、最近動き出したのを知っているし、デートに行ったり、一緒に帰宅しているのはだいたいの面子が知っている。なかなか順調なのでは?と思っていた時に、あのポスターの不死川の堂々としたベタベタぶりを見て、もう知らない間に付き合っていたの!?と思ったのだが…


「いくらポスター撮影だからと言って、何とも思ってない人と、不死川さんがここまでするでしょうか?」


「仕事です、から」


「夢ちゃんは不死川さんの事どう思っているの?」


「えっと、とても優しくて、頼りがいがあって、紳士的で素敵なひとだと、思い、ます」


「単刀直入に聞きます。不死川の事、男性として好きですか?」


「わ、私なんかが、好きになってはいけない方です」


何を言っているのか…不死川が長年に渡り、恋い焦がれているのは夢だというのに。寧ろ、お願いだから好きになってあげてほしい。不死川は夢しか好きになれない病で、夢に振られてしまったら、どうなってしまうのか。家族も友達も職場の人間も皆そう思っている。

胡蝶、甘露寺に続き、神崎も不死川を好きと言わせようと質問をするが、夢はなかなか不死川を好きと言ってくれない。
最近の夢の様子を見れば不死川に気があるように見える。だからこそ、皆が後押ししたくて焦れったくて堪らないのだ。


「そんな事はないわ!2人はお似合いよ!」


「あんなにカッコいい人と釣り合わないです!」


「カッコいいと思っているのね!りょう…いいじゃない!不死川さん!」


思わず両想いね!と言いそうになってしまう甘露寺だが、カッコいいと言ってしまった事を恥ずかしがって夢は全然気づいていない。


「私も賛成です。不死川さんもやっ…夢さんを気に入ってるように思えます」


やっと報われる。そう言ってしまいそうになったのは、いつもしっかりしている神崎。脈アリにホッとして、2人とも本音が漏れている。だけど、これまた不死川が自分を気に入ってる!?そんな発言にカーッと顔に熱が集中してそれどころではない夢は、神崎が何かを言い淀んだ事にも当然気づかない。


「夢さんも、どこか心当たりがあるのでは?」


夢は嘘をつけるような性格ではないし、思っていることを隠せる性格でもない。
胡蝶の言葉にハッキリと顔に心当たりがあります。と書いてあり、よし!今日は白状させてやろう!そう、胡蝶と甘露寺、神崎の3人は無言だが、視線だけで意気投合した。



end.



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