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26話




今日はついに問題の金曜日。夏祭りのポスター撮影の日がやって来てしまった。
夕方のポスター撮影の事と、本当に不死川に次の行きたい所を聞かれるかを考えると、朝から落ちつかない夢はずっとそわそわしている。
ちゃんと集中しないとまたミスちゃうと思っても、どうしても頭からその2つが消えない。

終いには、興奮気味の甘露寺がお昼にどのヘアセットにしようか迷ってるの。と楽しそうに話していて、これはどう?それは?と聞かれて、うんどれも可愛い!蜜璃さんならどれでも似合いますよ!と言ったら、違うよ!夢ちゃんのヘアセットだよ!と言われて驚いた。え、私は何かこう…簡単な感じで纏めて、適当にやります。と言ったら、ダメよダメダメ!もう、不死川くんに聞いてくるわ!と休憩中の不死川達の所へ行ってしまった。

え、ちょっと待って、なんで不死川さんの所に…え、バレてるの?不死川さんを気になってる事。

胡蝶の方を見ると…微笑んでる。
その笑みにはどんな意味が込められているんだろう。


「お化粧は私がして差し上げます」


「いや、恥ずかしいので、大丈夫です」


「不死川さんカラーに合わせますので、安心して下さい」


うぅっ、拒否権は無さそうだ。
しのぶさんからの圧を感じ、はい、ありがとうございます。とお願いしてしまった。

"不死川さんカラー"に合わせると言う言葉に不安しか感じないのだが…考えすぎかな?不死川が気づいているのかわからないが、夢と不死川の浴衣はカップルでオススメの浴衣。夢の気持ちを知ってとかじゃなくて、ポスター撮影として不死川と合わせる。と言う意味ならいいのだけど。

不死川はどう思っているのか…
まだ、男性陣のところで話している甘露寺をチラッと見てみると、不死川と目が合ってしまう。
うっ、気まづい。ペコッと頭を下げて、顔を戻すと、甘露寺の元気な声が聞こえてくる。


「うん、私もそれが似合うと思うの!流石、不死川くん!」


「え〜俺様はこっちの方がエロくて好き」


「エロさよりも、夢ちゃんを可愛くしたいのよ。でもちょっと色っぽいのもいいわね、不死川くん」


「あァ、これで頼む」


どうしよう。不死川が可愛いと思うヘアセットを選んだ会話が聞こえた。それで可愛くならなかったらどうしよう。
何か思ってたのと違う、俺とは釣り合わない。そう言われたり、そんな素振りをされたら今日は、一人寂しく自棄酒の上に枕を濡らす夜になるだろう。
傷つきたくない。もし、私に気がないなら早めに諦めたい。傷は浅い方いい。
過去の失恋がトラウマになり過ぎてるのは友達にも散々言われてきたし、自分でもそう思う。
でも、怖いものは怖いんだ。
次、またポイッと捨てられたら男性不信になれる自信がある。一人は寂しいけど、そんなに何度も傷ついても立ち上がれる程強く生きていけるような、ハートの強さは持ち合わせていないので、生涯独身を決心するかもしれない。

そんなマイナスな思考が働き、もう午後から仕事どころではなくなりそう。意識が完璧にポスター撮影で頭いっぱいになってしまった。




「見てこれ!可愛いでしょ!?」


この日の為に、緑色の風車の簪まで甘露寺が発注してくれたようだ。
また後ろの席をチラ見すると、痛いくらいに心臓が跳ねた。
甘露寺が手に持ってる簪を見て、不死川が、優しく微笑んでいる。


あぁ、 もう、傷は浅いうちがいいのに…

不死川の優しい表情。益々惹かれてしまう。
あんなの狡い。強面だけど責任感が強くて、ちょっとおっかないオーラをいつも放つ彼があんな表情は狡い。ギャップにやられるじゃないか。




これ以上ドキドキさせないでほしいと思っているのに夢は、この後、ポスター撮影でそれはそれは心臓が止まってしまうのではないかと思う程にドキドキする事になる。




「さぁ!準備しましょう!」


夢だけではなく、何処か浮わついたまま仕事をした面々は集中力が続かず、これはもうダメだ。と判断したマネージャーの悲鳴嶼が今日やらなくてはいけない仕事をして、後は来週に持ち越そうと判断。

学祭準備を始めるかのように、いかにもわくわくしている甘露寺を筆頭に、女子は更衣室に向かう。仕事であって仕事じゃないような夏祭り準備。更衣室で早速、皆で手伝いながら浴衣を着付けていく。夢も皆に少し手伝ってもらい、なんとか浴衣を着る。

うん、やっぱり冴えない町娘みたいになってしまった。

皆が各々に化粧や髪をセットし始めており、昼間の話では夢の化粧やヘアセットを胡蝶と甘露寺がやると言っていたが、皆自分の準備をしているので今のうちだ!と夢も自分で取り掛かる。


髪を束ね始めた時、


「はい〜夢ちゃんはこっち座ってね!」


「うっ」


「何か言いました?」


「イイエ、何モ」


甘露寺と胡蝶に見つかってしまった。

そのまま椅子に座らされ、甘露寺は早速で髪を解かし始め、胡蝶にはニコニコしながら化粧を落とすところから開始したもんだから、えっスッピンはちょっと!と顔を手で隠す。そうすると、顎をくいっと持ち上げて有無を言わさず手を避けて続行させられた。

しのぶさん力強い!

この華奢な腕のどこにそんな力が!?
そして、私の化粧ははダメだと言う事だろうか…


「いつものお化粧も良いけど、着物に合わせましょう」


前から思ってたけどエスパーなの?


「言っときますけど、夢さんは顔に書いてますから」


「…ハイ」


もう、何も考えるな私。
全て読ませてしまう。




それから恥ずかしいスッピンにされ、一から化粧のやり直し。恥ずかしくて顔が赤くなっていると、色が分からなくなるから顔を赤くするのを止めろと言う。そんな事言われても!化粧厚塗りになっちゃいますよ〜と言われても!


パール入りの下地からパウダーで仕上げ、透明感を出し、くっきりなりすぎないようにアイラインはペンシルでブラウンを切れ長に。アイシャドウもパールが入った白っぽいピンク、睫毛はあまり上げすぎず、目尻側にたっぷりめにマスカラを塗り、眉は緩やかなカーブで長めに引き、和風になるように。唇はコンシーラーで色を消してから、ピンク系と迷ったけど赤系にして少しだけグロスを乗せて艶っぽく仕上げました。そう、美容部員のように夢に説明する胡蝶。
鏡で見てみると、凄い!さっきまで冴えない町娘だった自分が少しだけ大人の女性になっている。


「しのぶちゃん上手!良いわぁ!とっても素敵。私も後は左右の後れ毛を巻いたら完成よ」


後れ毛を巻いて、スプレーで髪を固定したら風車の簪を挿す。
手鏡を渡され、後ろ側を見せてくれる。


「凄い!プロの技!ありがとうございます!」


そんな事はない、サイドから三つ編みとくるりんぱをして纏めてただけだから。大した事をしていないと甘露寺は言うけど、適度に解してゆるふわに仕上げるのは難しい。摘まんで引っ張り過ぎたらボサボサになるので、抜け感を出すのは夢には難しいのだ。


皆、可愛い。後ろや横でアップにしたり、ハーフアップにしたり。甘露寺は後ろで1つに三つ編みにしたようだが、ピンクのリボンと一緒に三つ編みをし、一際目を引く。


あ、すみちゃん前髪三つ編みにしてるの可愛い。


全員の準備が出来たので更衣室を出て、1階の撮影室に向かう。
階段を降り、撮影室に近付くと…なんだろう賑やかな声がする。ポスター撮影ってそんなに盛り上がるのかな?不思議に思いながらも先頭を歩いてるいた甘露寺がドアノブに手をかけた時。


「伊之助食べたらダメだって!」


食べる?炭治郎の注意する声が耳に飛び込んできた。
甘露寺がドアを開くと…




「わぁ、凄い!何これ!」




end.

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