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25話




さっきまでは夢を心配して(恐らく)優しかった不死川の表情が怒り顔に変わってしまった。
それから事情聴取のようにメーカーで商品を受け取ってから帰ってくるまでの出来事を説明。
やはり怒り顔の不死川は迫力があって恐ろしい。一通り説明すると暫く無言になられ、沈黙が気まずいと思っていると、両手で握りしめていたスマホを引ったくられた。何やらスマホを操作して返してもらった時には、連絡すんじゃねェぞと言われて戻されたが、数日前にも同じような事を言われた気がする。


「たくっ…心配だぜェ」


「ご、ご心配ばかり、お掛けして申し訳ございません」


「じゃあ、心配かけた詫びをしてもらおうかねェ」


「はい!私にできる事なら!」


「次は何処に行くんだァ」


行きたいけど、それだとまたお詫びではないような。でも、期待してしまってる自分もいるのも確か。


「いいんですか?また付き合わせちゃって」


「俺がいいって言ってンだから、いいだろ。次はクラゲか?」


「クラゲの水族館は山形なので、泊まりがけになっちゃいます」


「俺は構わねェが?」


「とっ、泊まっ、え!」

ただでさえ、ドキドキしていたところに泊まりでも構わないと言われて、顔に熱が集まる。どう、返答したらいいのか分からなくて固まっていると、まだ、早ェか。とイタズラっぽく不死川が笑う。


「からかってますね!もうっ…私、あまりそーゆーの慣れていないんですからっ!」


「俺はいいんだぜ?」


「もう、不死川さん!」


「怒るなよ。悪かった。早く決めねェと山形の宿取るからなァ」


「う、わ、分かりましたよ!」


何処まで本気で言っているのか全く分からない。不死川の悪ノリに振り回されまくってしまった。冗談なのか、本気なのか…そして、やはり不死川は女性慣れしているのだろうか、そう考えると胸がチクりと痛む。
いい加減な人だとは思ってはいない。そんなのは仕事を見ていれば皆が、不死川に対してそう思う。しかし、先ほどのような事を言ってくるのは以外だった。あんな事、言われたら勘違いする女の子がいてもおかしくない。まだ、早いって…どんなつもりで言っているのか気になるけど、確認する勇気はない。

早めに決めないと宿を取ると言われたのも、本当なのかわからないが、予約されたらどうしたらいいか分からなくなるので、とりあえず確認された時の為に、次の目的地を考えとこうと夢は思った。




もやもやした気持ちのままの夢を送り届けた不死川は、夢が車から降りる前、自然に夢に手を伸ばし、頭をポンポンとして今日1日よく頑張った。お疲れと伝えると、夢は今日で一番顔を赤くしてしまう。そんな可愛らしい顔をされると、腕の中に閉じ込めてそのまま連れて帰りたくなる衝動と不死川は戦っていた。
少しの時間でも一緒に過ごしたことと、次のデートの約束が出来た事にテンションが上がり、不死川は自宅には帰らずに別の場所へと向かう。




「あったぜェ」


不死川が訪れたのは大きめの本屋。
そして、向かうは旅行雑誌コーナーで、早速、東北エリアを眺める。
クラゲ館は何処にあるのか、不死川が思い浮かべていたクラゲ館は都内の水族館だったが、夢が言うクラゲ館は山形だったようで、気になって速攻で本屋にやって来た。
前回の初デートの時に、鳥取砂丘もいつか見てみたいと言う夢の発言をしっかり聞いた不死川は、山陰山陽の旅行雑誌を購入済みだが、クラゲ館が山形だったと聞いて山形の旅行雑誌をチェックしたくなったのだ。
見つけた山形の雑誌を手にして、立ち読みしてみるとあった。
ペラペラ捲るとあった、世界一のクラゲ水族館。鶴岡市立加茂水族館。日本海側か、確かに泊まり掛けになるな。そうなると今はまだ早い、泊まりになれば勿論夜も楽しみたい。洋室のダブルベッドもいいが、温泉宿だと部屋に露天風呂付いてるところがあるかもしれない。そうなれば風呂で1回戦、布団で2回戦なんて楽しみが出来る。浴衣の帯をほどく楽しみ…よし、買って帰ろう、幸せな妄想の続きは家でしよう。山形の旅行雑誌とついでに東北の旅行雑誌の2冊を手に取り、レジに向かった。




『のぼりえんてん』


『どうした煉獄www』


帰宅し、晩飯を食った不死川がスマホを開くと煉獄の様子が可笑しい。未読だったメッセージを読み進めていくと、どうやら久々に煉獄に会った発送センター勤務の猗窩座が、いつ飲みに行けるのかとしつこく連絡してきたので、今日ならいいぞ!と言ってみたら本当に飲みに行くことになってしまったらしい。
次の日も仕事があるから程々にしようと煉獄は言ったみたいだが、猗窩座は「全力を出せぇ!」と言ったり、知り合いからの電話に出れば「俺に集中しろぉ!」と煩くて参っていた煉獄だったが、なんだかんだで楽しくなって酔っ払ってしまったようだ。

飲みすぎるなよ、とメッセージを送っとく。


『おくりおおかみさねみ』


すると酔っ払いからふざけた返信が来る。


『誰が送り狼だ、酔っ払い』


『しんこんあかざはまいにちのぼりえんてん』


『ちょw何言ってんの煉獄w』


『煉獄違うぞ、不死川は送り狼になりたいけど送り狼になれないただの実弥だ』


『どうした伊黒までw』


なんだコイツら、何で今日はこんなに俺に当たりが強いんだ。宇随だけはいつも通りのようだが。
それからまた少しメッセージをやり取りし、聞けば伊黒も自宅で甘露寺と少し飲んでいるそうで、だからか、伊黒まで煉獄にノってやがるのかと納得した。
伊黒はそこまで酷く酔ってはいないようだが、煉獄はヤバそうだ、明日が心配になるくらいに。そして、煉獄から送られて来る、平仮名地獄が読みづらい。


『不死川喜べ、蜜璃が明後日は夢をヘアセットするらしい』


『おう、頼む』


何故、今それを俺に伝えたのかが気になったが、聞かないでおこうと思った。


『不死川が喜ぶように、可愛くすると張りきっている』


『…ありがとな』


やっぱりそう言うことかよ…甘露寺は俺が夢を好きなことを知っている訳だ。
伊黒が甘露寺に話してないのは考えずれェと思っていたが、これで確定だ。
問題は甘露寺から広まっていないかだが…他人の事なんて、そんなに皆興味ないだろうと思うが、言われなくとも胡蝶あたりは気づいてそうだな。


どうせ付き合ったら皆に公表するつもりでいる。それを考えれば、遅かれ早かれ皆が俺の夢への気持ちを知るんだから、今、周りに知られていようが、もういいか。

煉獄の方も、席を外していた猗窩座が戻ってきたようで、メッセージが来なくなり、不死川は買ってきた旅行雑誌を広げて旅行計画と言う名の妄想を始めた。


「仙台寄って牛タン食いてェな…」


仙台の七夕祭りは8月6日〜8日なのか、調度土日に被っている。七夕祭りの様子も賑やかで楽しそうだ。6日が金曜日だが、有給取って2泊3日で行けないか?上手くやれば、行けるだろ。こうなったら早く付き合って、夢と旅行に行けるようにしたい。
周りにもバレてるみたいだし、もう遠慮の必要はない。


「頑張るかァ」




翌朝の朝礼後、宇随が煉獄に近寄ってきた。


「よっ!昇り炎天 杏寿郎!」


「知らんな。なんの話だ」


「ハハッ、元気ねーじゃん。やっぱり二日酔いかよ」


様子を見に来た宇随は、いつもの元気ハツラツな煉獄じゃない事に気づき、笑う。


「そう思うなら、そっとしといてくれ、大きな声を出さないでくれ」


ほら、これやるよ。とウコンドリンクを渡して宇随は去って行く。

そのやり取りを見て、なんだ二日酔いか。良かったぁ、と思う夢。
煉獄が静かな事に気づき、いつもの煉獄じゃない…もしかして、昨日の件で怒っているのではないかとビクビクしていたのだ。


木曜日は久々に平和で、いつもの日常だった。
いつもと違うのは煉獄が大人しかった事ぐらい。




「夢、すまないが下の自販機でスポーツドリンクを買ってきてくれないか」


「煉獄さんいいですよ、少し待っ」


「村田ァ!煉獄にスポドリ買って来てやれェ!」


「はいぃぃ!」


「いや、いいですよ!私が行きますよ!」


「うっ、頭に、響く」




end.


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