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番外編@




〜不死川がまだ未練タラタラを認める前のとある日の飲み会〜




セールが終わり、飲みに行こうぜ!と宇随が言い出して集まった面々。宇随、煉獄、不死川、伊黒、冨岡。宇随が予約した居酒屋で飲み始めて1時間程経ち、皆アルコールがいい感じに回ってきた。
セールがあると、注文数も増える。そうなると必然的にトラブルも増える。昔からの付き合いのメンバーだが、今はプライベートな話よりも仕事の話が多く、この日も当然職場の話題が尽きない。




「最近…炭治郎が、煉獄に似てきた」


そう呟いたのは鮭大根なんてお店に置いてなくて、仕方なくおでんの大根を食べていた冨岡だ。


「俺にか!うむ…確かに竈門少年の意見には賛同できる!」


「賛同できるじゃねーンだよ。こっちはとばっちり食らったじゃねェかよ」


「あれは不死川が不敏だったし、お客様もとんだ災難だ」


ビールジョッキ片手にウンザリした顔をした不死川に、呆れた様子の伊黒。


「何があったんだよ?俺も知りてぇ」


宇随は別の階の撮影室にいたので知らないが、セール中のくそ忙しい中、とある顧客対応で炭治郎がお客様と揉めていた時の話。


「炭治郎が社是を読み上げ始めた」


「はぁ?社是?」


冨岡の言葉に不思議そうな顔の宇随。




飲み会の数日前の事…


お客様対応中の炭治郎が耳に受話器を当てたまま顔を上げると、壁に掲示されてる文字を見つめる。


「一つ!私達は!日本の和の心を忘れず!お客様に豊かな暮らしを提供する為に努力します!一つ!私達は!より良いサービスを提供する為に挑戦し続けます!一つ!私達は…もう結構でございますか?…いえ、そんなつもりはございません!お客様に……切られてしまった」


いきなり元気良く社是を読み上げる炭治郎に皆が驚き、視線が集まった。


「竈門少年どうした!」


炭治郎の話を聞くと、商品に不満を持ったお客様の対応をしていたところ、お客様の温度がどんどん上がっていってしまい、お客様に「お前は、どんなつもりで仕事をしてんだ!」と怒鳴られたと言う。


「どんなつもりでと問われたので弊社の社是をお伝えしたところ、もういい馬鹿にするな。他の奴から電話を掛けて来い!と電話を切られてしまいました…煉獄さん、面目無いです」


「成る程!いや、正直に対応した結果だ。恥じることはない。俺が架電しよう!もう安心だ!」




煉獄が炭治郎の代わりに先ほどのお客様へ架電し、10分も経っていない頃…


「不死川!すまないが、俺ではない責任者から電話を寄越せとガチャ切りされてしまった!よもやよもやだ。代わりに架電してもらいたい!」


「よもやよもやはテメェだ、全く」


この忙しい時に、と不死川は思ったがお客様対応の管理者は煉獄と不死川だ。煉獄がダメだら自分がやるしかない。一つため息を吐いて、さっさと謝って終わらせようと不死川が受話器を取って架電を始めた。




「ブハハハハハ!派手にうけるぜ!」


「くそ真面目コンビのせいでしこたま怒られたぜェ」


話を聞いて大笑いする宇随、思い出してぐったりする不死川。


「隣にいた俺にもお客様の怒鳴り声が聞こえたきたぐらいだ」


伊黒には電話に出た瞬間に怒鳴っているお客様の声が聞こえ、隣のはい。と申し訳ございません。しか喋らせてもらえない不死川を不敏に思っていた。


お前の会社は社員にどんな教育をしているんだ。会社の目標を読み上げて客を馬鹿にしてるのか。本当に申し訳ないと思っているのか。申し訳ないと思っているやつの声に聞こえない。などなど、約30分間不死川は怒鳴られ続けたのだ。


「相性が良くなかった!」


「テメェが怒らせまくったせいで血圧上がりまくって、最後は具合悪くなったからもういい、キャンセルだと言われたんだぞ」


「ハハハッ!煉獄すげぇな!」


「むぅ、そんなつもりではなかったんだが」


「声がでかくて耳鳴りもしたって聞こえたぞ」


「お前の言っている事がわからんと言うから、大きな声でハキハキとだな」


「そうじゃねェだろ!それがより怒らせたンだ!」


また、よもやよもや言う煉獄に文句を言いながら不死川はジョッキに残ってたビールを飲み干し、おかわりをするべく呼びベルを押す。いつもハイペースで飲む宇随は腹いてぇーと笑いが止まらなく、酒を飲む手がストップしている。笑いのツボにハマってしまったようだ。


「あと煉獄、お前は少し竈門に過保護じゃねェか?この前も対応代わってやってただろ」


「不死川には言われたくないな!」


「あァ?俺は玄弥に甘くならねェように気をつけてるぜ」


「玄弥じゃない、夢だ!」


「…ンだよ。そんことねェ」


「俺も思っていた。俺が困っていても不死川は俺を助けてはくれない」


「何で俺がテメェを助けなきゃなんねーンだよォ!」


「俺だって優しくされたい!」


いつにも増して意味の分からない事を口にした冨岡に不死川がイラッとして言い返すと、変なところで火が付いた冨岡が怒ってきた。


「だいたいテメェは伝票チームだろうが。胡蝶に助けてもらえや!」


「胡蝶は絶対俺に優しくしてくれない!そうだ、夢を伝票チームにくれ!夢しか俺に優しくしてくれない!」


「駄目だ駄目だァ!」


「おやおや〜?おやおやおや〜?」


「何故駄目なのだ不死川!」


さっきまで腹をかかえて笑っていた宇随が茶化しはじめ、ニヤニヤ顔。珍しく煉獄までノってくる。


「庶務は甘露寺と夢の二人しかいねェんだから…居ないと困るだろう」


「それだけか〜?」


「それだけならば代わりを育てればいい!」


夢伝票チーム案に宇随と煉獄が、賛成してくれていると思った冨岡は期待した顔で口を開く。


「夢の仕事の幅も広がるし、俺も癒されたる」


夢を見てると心が穏やかになる。と夢を思い出してうっとりした表情をする冨岡を見て、明らかにイラついて力が入り、不死川が手に持っていた割り箸をへし折った。


「兎に角ゥ!夢を伝票チームに行かせるつもりはねェ!」


「親父か!」
「父親か!」


娘を嫁に行かせるつもりはない。みたいな夢の父親発言に伊黒と煉獄が同時にツッコむ。


「あ、お姉ちゃんビール3つに、未練たらたら男に割り箸一つ貰える?」


「はいー?かしこまりました!」




「不死川は何の未練たらたらなんだ?」


「…うるっせェ!テメェはもう口開くなァ!」


「心外!」




end.



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