22話
やってしまった。
配達日時変更するお客様の荷物を配達ストップしてしまい、逆に配達ストップするお客様の荷物を配達日時変更の依頼を出してしまった。
同時進行で処理を進めた時に送り状番号を書き間違ったのだ。
一昨日の煉獄から渡された案件の内容をそれぞれ逆に処理してしまっている。
『こっちのキャンセルと配達日変更を頼む 』
あの時のだ…遅延対応に気をとられて間違ってしまった。しかも玄弥の話だと再配達が難しいそうで、明日オープンする居酒屋で使う座布団と言うことだ。
お客様へ謝罪と状況説明で玄弥が今、電話をかけてくれているが…
「はい、大変申し訳ございません。…はい……はい…えぇ、仰る通りでございます」
確実に怒られてる。自分のミスで目の前の人が怒られる姿はだいぶ辛い。
玄弥ごめん…
終始暗い状態の玄弥が受話器を置いた。
ふぅ、とため息ついた玄弥が負け戦だった事は聞かずともわかる。
「今日中に持って来いか!」
「はい…絶対ほしいそうです」
「なるほど、今日中に届けないと解決しないな!夢、宅配業者に返送中の荷物を引き取りに行けないか確認してくれ。実は倉庫に50個同じ座布団が無いんだ」
不死川に報告してくると、煉獄が席を立つ。
在庫も無いのか、宅配業者に是が非でも荷物を回収させてもらうしか道は無さそう。
チラリと煉獄が不死川と話している所に目をやる。
不死川さん、怒るかな。これを気に冷たくなったらショックだなぁ。そんなミスするなんて呆れると思われるのかな。
どんどん暗い気持ちになっていく…ダメだダメだ、今は落ち込んでいる場合ではない。一番は
お客様だ。私のせいで困っているお客様がいる。
煉獄の指示通りにまずは宅配業者に電話しよう。
早速、先ほど玄弥が電話をした宅配業者の配達営業所に電話掛けた。
「今、確認したんですが荷物を積んでいると思われるドライバーと連絡がつかない状況で、もし、連絡がついたとしても一旦ドライバーが営業所に荷物を戻しに来なくてはいけませんので…何時になるかお約束できかねます」
是が非でも荷物を回収させてもらおうと思っていたのにもう挫かれてしまう。どうするのが得策なのか…とりあえず、ドライバーと連絡がつき次第折り返し電話を貰う約束をして電話を切る。
チラリと不死川も見るとハッキリと目があってしまった。
強い視線。今日、不死川はよく何処かと長電話をしており、今も電話中だが確実に夢を見ている。
気まずくて下を向いて目線を逸らす。
あぁ、絶対怒ってる。
煉獄に宅配業者とのやり取りを伝えると、腕組をして困ったなと言う。
「煉獄さん。ちなみに、倉庫にはいくつ在庫あるんですか?」
「30だ」
「あと、20個足りないのか…」
「宅配業者はどうだった」
「担当のドライバーと連絡つかないそうで、連絡がついても今日荷物を引き渡せるかわからないと…言われちゃいました」
「そうか…別の方法が無いか探した方が良さそうだな」
「あっ」
"力になれる事があるかもしれない"
先日助けてもらったばっかりだが、錆兎の言葉を思い出して直ぐ様、受話器を取った。法人事業部に電話して錆兎がいるか訪ねるとお待ち下さいと保留音が流れる。
「お電話代わりました鱗滝です」
「お、お疲れ様です夢です。あの、先日は大変助かりました、ありがとうございます。えっと、」
テンパってしまって上手く頭が回らない。
その様子錆兎にも伝わったようで電話の向こうでフッと笑われた気がした。
「落ち着け、また緊急事態なんだな?」
「実は…」
自分がミスしてしまった事、お客様は今日中に商品がほしい事、再発送するにも商品の在庫が無くて困っている事を伝えると商品番号はと聞かれたので答える。
「ここのメーカーとは何度か直接やり取りをしている。必要数は20だな?今日これから商品を取りに行けないか聞いてみよう」
「はい、20点です!申し訳ないです。よろしくお願いします!」
結果が分かったら折り返すと言われて錆兎の電話を切った。
メーカーに商品を取りに行くという発想は思い付かなかった。
何かいい方法がないか、緊張したけど錆兎に電話してみて良かった。可能性ができただけで少し心にゆとりが生まれた気がする。
「はっ」
「状況は?」
受話器を置いて少しホッとした所に肩に手を置かれて驚く。
振り向くと、
「不死川さん!す、すみません。宅配業者から荷物を回収するのが難しそうで、でも!今、錆兎さんが、商品のメーカーに掛け合ってくれてるんです」
「錆兎、だと?…お前、」
「不死川さーん!1番にシステムからお電話でーす」
善逸が不死川宛に電話を掛かってきた事を伝えると、舌打ちして自席へ戻って行く。
今、何か言いかけていたけどきっとお叱りの言葉に違いないと思った。他部署の人間にまで迷惑をかけるな。斜め後ろに立っていた不死川の目は怒っているように見えた。煉獄からの報告を受けて心配して見に来てくれたのかもしれないが。
しょぼくれていると錆兎からすぐに折り返しの電話が掛かってきた。
視線を感じて不死川に目を向けると睨まれてる。確実に自分に怒りを向けられていると気づき、結果がどうだったのかと合わさり余計にドキドキしながら電話に出ると、吉報だった。
座布団を取り扱っているメーカーの東京支社に20個在庫があると言う。
「勿論、取りに行くよな?」
「はい!」
end.
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