×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




25話




夢が目を覚ますと下から優しい眼差しの実弥と目があった。


「あ、ごめん私も寝ちゃった」


「おォ…布団行くからお前も来い」


気持ちいい膝枕に名残惜しさは残るが実弥は立ち上がり、夢も立ち上がらせようと手を引く。


「うっ、あ、あっダメ、ダメ実弥くん!」


なんという声を出すんだ。実弥の分身が覚醒してしまうではないか。


「…痺れたのかァ?」


「うん」と答えた夢を実弥は横抱きで持ち上げて歩き出すがとんでもなかった。歩く実弥の振動でたまに痺れた足に響くのだろう。「あっあぁ」と喘ぐもんだからまだシたことは無いが夢を犯しているような気分になり、実弥の分身が覚醒した。

寝室に来ると足で襖を器用に開け閉めした実弥は、疲れて帰ってきてすぐ寝れるようにと夢が敷いてくれていた布団に夢を静かに下ろすとそのまま覆い被さり、口づけを始めて好き勝手に舌を吸ってみたり、絡めたりするもんだから夢は息も絶え絶えながら必死についていこうと頑張る。
暫く咥内を堪能した実弥は自分も布団に入り、夢を横向きにさせて、後ろから抱き枕のように抱き締め頭に顔を埋めるとスーハースーハー匂いを嗅ぐ。

夢の匂いを嗅ぐと癒される。実弥には安心する匂いで、先ほどまでの臨戦態勢状態から少し落ち着きを取り戻した。

実弥は夢に聞きたい事があるけど眠い。この安心感と安らぎに身を任せる事にして、目を瞑ると疲れがどっと襲ってきてあっという間に眠りに落ちていく。




「ごめんくださいっ!」


心地よく抱き枕になってた夢も夢を抱き枕にしていた実弥も身体をビクつかせて目を覚ました。


「なんでアイツがァ…」


この声は間違いなく炎柱の…


「ごめんくださいっ!」


「はっ!?実弥くん、煉獄さんじゃない?」


放っておいても帰らないような気がしたので折角気持ちよく寝ていたのだが実弥は起きる事にした。


「お前がなんで煉獄を知っているのかは後でよーく確認するからなァ。とりあえず着物着ろォ」


別に蝶屋敷で杏寿郎に会った事を隠していたわけでは無かったのだが、実弥にとっては隠し事をしたように思えた。
寝起きとは思えない、目を血走らせて般若みたいな顔をしている。


ちゃんと説明したら怒らないかな…いや、何を言っても説教は確定だ。そんな気がしてならない。悪い事してないのに…




「今日は大切な話があって来た!」


いつもと変わらない表情の杏寿郎。大切な話とは何か?今まで杏寿郎が風柱邸へ来たことはないし、何か用事があって来たんだろうがまるで実弥には思い当たる節はなかったのだが嫌な予感だけはした。


「回りくどいのは好かん。単刀直入に言おう!」


居間で向かい合って座る2人の間に謎の緊張感が走る。夢はお茶を淹れに行ってこの場にはいない。


「不死川は勃たんのか」


「…はァ?」


自分から間抜けな声が出ている事は分かった。真剣な雰囲気でこいつの言っている勃つ勃たないの話は俺が想像している下の話しでいいんだろうか。


「勃つのかと聞いている」


「…いきなり訪ねて来て何かと思えば何言ってんだテメェ!」


額や苛立ち握った拳に青筋が浮かび恐ろしい顔の実弥に臆する事無く、杏寿郎は再び口を開き追い討ちをかける。


「では、種無しなのか!」


「無礼にも程があるだろォォオッ!!」


元々怒りの沸点が低い実弥が黙っているはずがなく、2人の間にあった机を飛び越えて杏寿郎の胸ぐらを掴みかかった。


「違うのか?ならば何故…」


杏寿郎が話を続けようとした所を殴ろうと実弥が拳を繰り出すも杏寿郎が止める。


「テメェに関係ねェだろうがァ」


「夢を気に入った。連れて帰りたい」


「あァ?テメェだったのか夢に求婚した野郎ってのは…調度いい、ブッ殺してやるよォ」


「夢は子を願っている。不死川にその気がないなら俺が叶えてやろう」




なんか実弥くんの怒鳴り声が聞こえたけど大丈夫かな。でも、宇随さんの時も怒鳴ってたっけ。と言うか、実弥くんはだいたい怒ってるからいつもの事だ。うん。


夢が原因で柱同士の戦いが勃発したのだが、そんな事には気づかずになんかまた実弥くん怒ってるみたい。と呑気な夢。
お盆にお茶乗せて居間の襖を開ける。


「あれ?いない…」


何故いないの?と思いお盆を持ったまま縁側に出てみる。


「えっ、手合わせ?」


夢の目に木刀を手に打ち合いをしている2人の姿。杏寿郎は実弥と鍛練しに来たんだろうか。それにしても気迫が凄い。
目で追える速度ではないし。


「あのっ!お茶飲みませんか!」


「危ねェから引っ込んでろォ!」


叫ぶと同時に杏寿郎の木刀を弾いた実弥。


「風の呼吸…」
「炎の呼吸…」


本当に危なさそうだ。以前にも風の呼吸を使われた時に凄い風の勢いに巻き込まれそうになった事がある。
風の呼吸と聞こえた瞬間に急いで居間に戻ろうと踵を返した時、


「きゃあっ!?」


寝起きで急いで絞めた帯が緩み、少し崩れて下がった着物の裾を踏んでしまい夢が豪快に転んだ。


「「夢っ!!」」


真剣ではないものの相手を殺す勢いで戦っていた2人が木刀を放って夢に駆け寄り、実弥が抱き上げた。


「大丈夫かァ!?」
「怪我はないか!?」


「うん、大丈夫。ごめんね、鍛練の邪魔して」


お前の取り合いで命をかけて戦っていたのに、あれが鍛練に見えたとはまた呑気な事をと思った実弥と杏寿郎は「お前なァ…」「よもやよもやだ」と呆れた声を漏らす。


「そんな様子じゃ子が出来たら、いつ転ぶか気が気がじゃないな、はっはっはー!」


「子供?」


「テメェには要らねぇ心配だァ。俺が着いてるから問題ねェ」


威嚇しながら唸る犬のような実弥を気にせず、杏寿郎は夢の手を握り、目を合わす。
「触んなっ!」と言われても無視しだ。


「夢、俺は君が気に入った。好きだ。俺の屋敷に来てくれないだろうか」


実弥がいるにも関わらず堂々の告白。

実弥以外の異性に初めて好意を寄せられた夢は杏寿郎を見つめたまま顔を赤らめる。
そんな表情に焦った実弥は夢を掴む杏寿郎の手を放そうと奮闘するがなかなか離れない。


「あ、ありがとうございます。嬉しいですが、私は実弥くんと居ます。これからもずっと、実弥くんと一緒に生きていきます」


「…そうか…今日の所は帰るとしよう」


「邪魔したな!」と玉砕したばかりなのに杏寿郎はいつもと変わらない表情で元気良く風柱邸を後にした。




「…結局、煉獄さんは何しに来たの?」


「夢」


杏寿郎を見送った後、何だかよく分からなかったなぁと不思議そうな夢。
突然、力強く抱き締められ、顔を首に埋めた実弥が呟く。


「実弥くん?」


「お前、さっきの…」


「うん?」


「ずっと一緒って」


「え、違うの?」


「違うわねェけど………いや……何でもねェ」


首を上げたと思い、顔を見てみれば不満そうな表情。言葉も何か言い淀んでいたし、気になる。


「なになに?」


「…何でもねェ!テメェは煉獄と接近禁止だァ!」



end.



[ 26/68 ]

[*prev] [next#]

mainに戻る