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22話




大切な実弥の身体がどこか悪いらしいと聞くとショックを受けた夢はそれから杏寿郎としのぶの声があまり頭に入って来ず、ふらふらしながら蝶屋敷から帰宅した。

その様子から一人で帰すのも杏寿郎も心配になり、夢の手を引いて家まで送る。


「ショックを与えてしまったようですまない。夢がそんなに子を願っているとは知らなかった。だが、心配するな!俺が面倒をみてやろう!いざとなればけじめを付けて俺が子作りしてやる!」


家につくと夢の肩に両手を置き、いつもの表情でさらりと爆弾発言を残し、杏寿郎は去って行った。




その頃実弥は、現地に着き夜になるのを待っていた。
隊士達はそれはもうくたくたで藤の家に着いた途端に床に倒れそのまま眠り、疲れすぎて布団までたどり着かずに畳で寝るものが続出。

そんな中、一刻も早く家に帰りたい。夢に会いたい実弥は懐から御守りを取り出し眺める。自分の為に、一生懸命に作っていてくれた御守り。
御守りの中を覗いてみると藤の花の生地に包まれた御札が見え、それを取り出すと大変だっただろう、『さねみくんをお守り下さい』と刺繍されていた。

込み上げる愛おしさから刺繍の文字を指の腹で撫でれば、より一層夢に会いたい、抱き締めて、夢を感じたくなる。
やはり離れたくないのだ、ずっとくっついている事はできないのだろか。

今の実弥は短い眉を下げて弱々しい表情をしているが、そんな顔を見られる心配はない。
何故なら隊士達は全員、死んだように寝ているのだから。




実弥くんの身体はどこが悪いんだろう。

夢はそればかり考えていた。昔から身体は丈夫で風邪も全然引かない。それどころか実弥以上に体力気力がある人間を夢は知らない。
とても健康体にみえるのだが…だけど、やはりどこか悪いのだろうか。真っ先に思い付くのが、おはぎの食べ過ぎ。糖分を取りすぎるのはやはり身体に悪かったんだ。あとは、不規則な生活だろうか。
子を成せないと何故思ったのか、いつか一緒にいたら夫婦になって自然に子供が生まれるものだと思ってた。
実弥にもしもの事があったら夢は生きて行ける気がしない。


「うぅ〜実弥くん…」


布団を頭まで被り寝付きの悪い夜を過ごした。




「風の呼吸 壱の型、塵旋風・削ぎィィィ!」


夢が実弥を心配して眠れぬ夜を過ごしている時、さっさと帰りたい実弥は大して休まず、待ちに待った夜が訪れると削いで削いで削ぎまくった。まだ疲れが残る隊士達はまたいつもの如く呆気にとられる。

隊士達は目の前で繰り広げられる戦闘に目を疑う。
風柱は本当に人間なのか?鬼より怖い顔をして鬼以上の身体能力を発揮し、柱になると言うことは即ち人間を辞めて化け物になる事なんだと
思った。


「テメェ等ァ!ボサッとしてねェで戦えやァァ!」


戦えって…近づいたら俺達まで削がれかねないぞ。
それに、こちらは化け物のあんたと違って3、4時間寝たところで体力なんて全然回復してないんだ!何時間走らされたと思ってるんだ。
勘弁してくれぇぇっ!でも、あの鬼よりも怖い柱に怒られるのも嫌だ。やるしかない。そう決心した隊士達は鬼と実弥に殺られないように注意しながら立ち向かって行った。




3日目の朝、珍しく夢は文机で手紙を書いていた。不馴れながらも昨日、杏寿郎に言われた内容と何か良くなる方法がないのかを手紙に綴り、それを烏に渡す。


「宇随さんの所、行ける?」


「行ケル」


「いい子。ありがとう、お願いね」


「カァァ」と鳴いて夢の烏は飛び立って行った。

これが後に実弥を憤慨させる事になるとはこの時は全く夢には予想できなかった…




「ん?誰の烏だ?」


音柱邸にやって来た夢の烏は手紙を天元に渡した。

何々と手紙を開いた天元は読んでいくうちに大笑いするもんだから、嫁達も気になって寄ってきて中身を読めばクスクス笑ってしまう。


『前略

宇随様におかれましては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。

あまりお手紙など書き慣れていない為、失礼があることご容赦ください。

このたび、ご相談がありましてお手紙を書かせていただきました。
ご相談というのは実弥くんの事でございます。
昨日、蝶屋敷にお邪魔した時に煉獄さんと初めてお会いし、しのぶさんと三人でおはぎを食べながらお話をいたしました。その会話の中で、煉獄さんが言うには実弥くんは問題だらけで体がどこか悪いと言うのです。
私は全く実弥くんの不調具合には気づいておりません。私が知らないだけで実弥くんは病を患っているのでしょうか。
男の責務を果たせない?このままでは子を成す事ができないとも仰ってました。
もし、実弥くんが何の病なのか知っていましたら、また、改善方法もご存知でいましたら是非教えて頂きたく存じます。

末筆ながら、ますますのご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

草々 夢 』



「いやー夢ちゃんは本当にアッチ系の話には疎いからなー。これは俺様がいい助言をしてやろう、ククッ」


詳しく杏寿郎との会話は書いていないが何故そう思ったのかはなんとなく分かる。だって、天元も同じ事を思ったから。


「天元様、悪い顔してますよ」


4人で楽しんだ後、天元は手紙の返事を書き始めた。




その頃、不安で落ち着かない様子で家事をしていた夢の元に烏が飛んで来る。


「あっ!実弥くんの烏だ!」


何かあったのではと思ったが長期任務の時はたまに手紙をくれるんだった、落ち着け自分と言い聞かせて烏から手紙を受け取って開く。


『 俺がいない間、問題ないか?
変な奴に絡まれていないか?まあ、帰ったら確認する。
明日の昼過ぎには帰る。 実弥 』


え?早くない?

1週間ぐらいかかるのでは?
また、無茶をしたのではないか、それとも体調が悪くて早く帰宅することになったんじゃ…どうしても悪い事をばかり考えてしまう。早く真相を確認して安心したい。

夢も簡単に問題ないよ、無事に帰ってきてほしい旨を書いて実弥の烏に手紙を持たせる。実弥の烏がキョロキョロと夢の烏を探しているようなので今、お使いを頼んでいるので不在にしている事を伝えると凄いスピードで飛び立って行った。




「ん?あ、お帰り!」


実弥の烏が飛び立って程無くして夢の烏が帰ってきた。
天元からの手紙を預かると直ぐ様確認する。


「病と言えば病のようなものだけど、私の頑張り次第で解消する…?」


なぞなぞかと思ったがそうでもないらしい。
私の頑張りでどうにかなるならそんなに重い病ではなさそうだ。


「よしっ、頑張るぞ!」


夢は気合いを入れて実弥を迎える準備を始めた。




実弥が任務に行ってから4日目。
昼過ぎに帰ってくるであろう実弥の為に夢はおはぎも作ったし、昨日のうちに買い出しに行って沢山ご飯も作っている。後は天元の助言を信じて実行するのみ!実弥の病は自分に懸かっているのだ。




夢が実弥の帰りをそわそわしながら待っている頃、実弥はまた全力疾走していた。


「遅ェ!気合い入れて全力で走れェェ!」


最短の3日で帰って来る予定でいたが、鬼を討伐後の隊士隊がヘロヘロに疲れ過ぎて動けそうにないので仕方なく休ませて帰る事をしたので実弥の予定より1日遅れての帰宅になっている。さっさと帰りたい実弥は一瞬こいつらを放って先に帰るという選択肢が頭を過ったが万が一何か危険な目に遇うかもしれないし、流石に柱としてそれは無いなと思い、超絶イライラしながらその地に留まった。

そして、いざ帰るとなるとやっと帰れると思った実弥は目を血走らせながら「いいかァ、全力で走れェ…ちんたらしてら殺すゥ」と地を這うような声で脅し、隊士隊はまた帰りも地獄をみる。しかし、解散する時にここから3日間は休暇だからしっかり休めと言われて衝撃が走った。もしかしてもしかして風柱様は我々に休みを与える為にこんなに急いで任務を終わらせたのか!?だとしたら不器用すぎるぅぅ!そう言ってくれたら俺たちもこんなにアンタの事恨んだりしなかったのに!隊士達は感動して「解散」と行って走り去る実弥の後ろ姿に「ありがとうございましたっ!」と深々とお辞儀をして感謝する。


ただ、早く帰って夢と一緒に過ごしたかっただけの実弥の株が勘違い隊士達により急上昇したのだった。



end.


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