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21話




「いいかテメェ等ァ、1週間の予定の任務だからと言って鬼を退治するのに1週間かけてチンタラしていい訳じゃねェからなァ。目標は3日だ。3日でケリつけるからそのつもりでいろォ」

その場にいる者を睨み付けるように実弥は言う。


当たり前だが誰も怖くて口にしないけどその場にいた全員が思った。


"どれだけ鬼を早く退治してどれだけ早く帰宅できるか選手権"はアンタ一人でやってくれー!!と。
だから風柱様と合同任務は嫌なんだ。強いし、とても頼りにもなるがこの人は頭がおかしいのだ。一般の俺達じゃあその選手権には入賞すらできないし、したくない。
まず、今回の任務は場所が遠いから現地に着くまでにまず時間がかかる。1日以上移動にかかり、そこから現地の状況把握してからの戦い。そしてまた1日以上かけて帰宅なのだから風柱の言う通りに動くと、現地に着いてそのまま討伐→休まず帰宅になる。

この人なら休む間も与えられず強行される可能性がある!
とんでもなく過酷な任務になる予感しかしなくて隊士隊は絶望した。


「じゃあ、今から全力で現地に向かうから着いて来い」


そう言うや否や実弥は全力で走り出し、隊士達も見失っては行けないと慌てて走り出す。

戦う前に何故全力で走らなくてはいけないのか、この人は鬼より鬼なのかもしれない。
もう風柱との合同任務は断りたいと隊士達は思う。


それから実弥は全力で走った。怯える隊士隊を置き去りにする勢いで。




実弥が全力で走っている時、夢はいつもの癖でおはぎを作っていた。


「はっ!?暫く作らなくていいんだった…」


やってしまった。もう、小豆は煮始めてしまったし、もち米も水につけている。
前も長期任務の時に同じことをしてしまって記憶があった。
もう、長く実弥と暮らしている毎日の体に刷り込んだ習慣。


「誰か食べてくれないかな…」


とりあえず食材を無駄にする訳にも行かないので引き続きおはぎをつくる事にした。


とても一人では食べきれない量が出来てしまった。
実弥と一緒におはぎを夢も食べるが夢は毎日食べている訳ではない。
う〜ん、一人で食べると思うとこんなに気が進まないものか…


「明日、蝶屋敷に持って行ってみよう」


実弥が長期任務に出た初日はおはぎを作り、後は家事をして過ごした。
おやつにはおはぎ一つを持って縁側に行き、烏と一緒に過ごしたけどなんとなく寂しさを感じる一人と一羽は大人しい。
夜は夜で夢は寝付きが良くなく、あんなに頑張って拭き掃除したから疲れて爆睡だと思ったのに。
一人で眠る事には慣れていたはずだ。今までも実弥は夜、鬼狩りに行くのだから。

でも、朝には帰って来て、目を開けると実弥がいた。それが暫くはないと思うと不安…心細くなる。
最近は実弥が特にべったりくっついていたし、昨日なんて酷かった。
口を合わせる事に少し慣れてきたと思ったら、耳舐められ、そこまでは初めてではないが肌を直接触られたのは初めて。
今、思い出してもドキドキする。
抱き締められるとは全然違う、普段触れられる事のない場所だからなのか身体がビクついてしまってあのまま触られ続けたらどうにかなってしまいそうだった。

そのうち実弥に全身を撫で回されてしまうのではないかと考えるとお腹の下なのか股の辺りなのかわからないがズクンと熱を持つ気がする。この感じは駄目だ駄目だまたヌルヌルになってしまうと夢は考えるのを止めて眠る事にした。




実弥が長期任務出てから2日目。
夢は烏を連れてお昼過ぎに蝶屋敷にやってきていた。
そこで横にいる人物に戸惑っている。


「君は!誰だっ!」


「えっと、風柱邸に住んでいる夢と申します」


「!…そうか君が不死川の!噂には聞いていた。初めてましてだな。俺は炎柱の煉獄杏寿郎だ!」


「はじめまして…実弥くんがいつもお世話になっております」


初めて会う杏寿郎に夢はビックリ。
炎のような容姿にハツラツとした表情に言動。

おはぎを分けに来て玄関先で出会ったのだ。


「胡蝶に用事か?」


「はい、実弥くんが長期任務でいないのにいつもの癖で大量のおはぎを作ってしまったので食べてもらえないかと」


「なんと!では、俺も頂いていいか!」


「いいんですか?是非!」


「よしっ!決まりだな。胡蝶、邪魔するぞ!」


夢の手を引いてずんずんと屋敷の中へ入ってしまう。なかなか、実弥以外の異性に触れられる機会がないので緊張してしまう。

これは手を繋いでいる事には…ならないよね?もし、繋いでいるとしても流石に…バレないバレない。

また約束事を破ったの出はないかとヒヤッとしたがこれは掴まれているだし、実弥はこの場にはいないのだから大丈夫だろうと思う。


「人の屋敷に勝手に入って来て何してるんですか〜?煉獄さん」


「胡蝶!夢がおはぎを持ってきてくれたんだ。一緒に食べよう」


「あら?不死川さんのおはぎでは?」


実弥が長期任務なのにおはぎを作ってしまった事を胡蝶にも説明をし、それでは皆で頂こうとなった。


「うまいっ!」


「ありがとうございます」


「うまいっ!」


「あ、ありがとうございます」


「夢さん、毎回応えなくていいですよ。煉獄さんは食べる度に言いますから」


「うまいっ!」


「ありが…あ、反射的に応えてしまいます」


「はぁ、駄目みたいですね。それでは先に食べてしまいましょう」


おはぎを食べる度にうまいっ!を連発する杏寿郎に律儀に返事をする夢に少し呆れ気味のしのぶ。
沢山あったおはぎもあっと言う間に平らげた後は、杏寿郎の質問責めが始まり、しのぶも面白そうにしていて止めようとしない。

「いつも、不死川はこんなにおはぎを食べるのか!」から始まり、普段自分の事を話さない実弥が気になるのかここぞとばかりに聞いて来る。


「不死川とは夫婦なのか?」


「いや、夫婦では…でも実弥くんの事は家族だと思ってます」


「ふむ…男女の仲では無いという事か」


男女の仲とは一般的にどういう事なのか。恋仲とは違うのだろうか。


「でも、一緒に寝ているんですよね?」


「はい」


「!…なんと、不死川はけじめも付けずふしだらな…もっと常識のある奴だと思っていたのだが…よもやよもやだ」


「ふしだらとは?」


「ふふっ、煉獄さんの想像している事と違うと思います。ただ、一緒に寝ているだけのようです」


「それはそれで問題だ!不死川は男の責務を果たせないのか!?」


「えっ!?実弥くんは何か問題があるの?」


「問題だらけだろう!」


杏寿郎の言っている事がいまいち分からない夢に、夫婦にもならず身体の関係だけなのかと思いきや手を出さずに女と寝食を共にしている実弥は不能なのかと男として心配し始めた杏寿郎。それを面白がってしのぶが止めないものだから場がどんどんややこしくなってきた。


「えっと、実弥くんの何が問題なのでしょう?」


「子を成す事ができないのだろう」


「ふっ、ははっ」


夢は衝撃で固まり、杏寿郎は何時もと変わらぬ表情で見つめ、しのぶは我慢できず笑ってしまう。


「さ、実弥くんは子供を残す事ができないの?」


「恐らく」


「そ、そんなぁ…」


今まで何も気づかなかったが実弥は何処か身体が悪いのか、帰ってきたら確認しなくては。
どうして言ってくれなかった、相談してくれなかったのか。


end.



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