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17話




「わっ!わわわ!」


縁側で実弥のお守りをちくちく縫っていた夢の元に見たこともない烏がやってきた。頭に三葉がある烏だ。


「コンニチハ!」


もう少しで完成しそうな縫い物をしている手を止めて、烏に夢も「こんにちは」と挨拶をする。

手紙を取ってと言うので足にくくりつけられていた紐を外して、手紙を広げた。


「蜜璃さんだ!」


蜜璃さんの烏だったのか。
手紙の内容は以前に話してた通り、お茶のお誘いで本当に誘ってくれたのかとあまり誰かと遊びに行く事のない夢はとても嬉しかった。

「烏に少し待ってね」と伝え、夢は鍛練をしている実弥の元へと走る。


「実弥くん!」


汗が滴る実弥が振り返る。


「どうしたァ?」


「蜜璃さんからお手紙貰ったの!女子会してきていい!?早く帰ってくるから!」


手拭いで汗を拭った実弥は夢の元へと来ると夢が手に持っていた手紙を取り読み始めた。

内容は今日、3時のおやつにしのぶを連れて甘味処に行く事になったので夢も来れないかと言う。


それはもう行きたくてしょうがないようなわくわくした表情で見つめられて、実弥は行ってこいとしか言えねェだろと思った。

本音を言えば行ってほしくない。

鍛練が終わった後は夢にピッタリくっついていようと思っていたのに。
そして、実弥の事を先日"変態柱"と呼んだしのぶもいると聞いたら余計に行ってほしくない。
変な事を吹き込まれる心配がある。

だが、ここでダメと言えば夢が悲しむか不機嫌になってしまう。


「…日が暮れる前に帰ってくるんだぞォ」


絞り出すような苦しい声で渋々了承をする。
「やった!やった!」と喜んでいる夢は可愛いが実弥は浮かない顔をしている。


「蜜璃さんにお返事書いてくる!」と走り出したかと思えば「あっ!」という声が聞こえて夢がまた実弥の元へと戻ってきた。

走ってきた勢いのままに汗まみれの実弥に抱きついてきたので、実弥は足を一歩後ろに引いて耐えた。
実弥の胸から顔を上げると満面の笑みで「ありがとう!」といい、夢は背伸びをしてギリギリ届いた実弥の顎に口づけをした。

「ふふっ」と笑ってわ実弥に抱きついていた手を放し、手紙を書きに戻ろうとした夢の腕を今度は実弥が掴む。


「足りねェ」


「ぅわっ!ん、むぅ、」


腕を引き、そのまま口づける。
唇を啄み舌を侵入させると夢がビクっとして反射的に身体を引いたが実弥の腕が腰に回り、逃げるどころかより密着してしまう。

身体を密着して舌を吸われるとまた背中がぞくぞくして下腹部にずくんと響く。
夢はあぁ、またヌルヌルになっちゃうと思いながらも実弥の服をギュッと掴み耐える。

太く力強い腕に抱き締められているとこのまま身を預けたいような気持ちになってきた。

ギュッと掴んでいた手を放し、ゆっくり両腕を実弥の背中へと回すとより一層強く抱き締められ、実弥のもう片方の腕は夢の後頭部を抑える。

実弥に歯列や上顎を舐められてもぞくぞくするが、やはり舌を吸われると一番夢の身体がおかしくなり、もう舌の付根は引っ張られ過ぎて痛くなってしまう程に深く強くしゃぶられてしまっているのけど不思議と嫌ではない。
嫌ではないどころか、悩ましげな声をもらして実弥に抱きつく姿はもっともっととねだっているようだ。

舌を舐め合わせてはしゃぶるように吸い付くを繰り返しているうちに夢は身体の力が抜けて自分の力では立っていられなくなってしまった。


「なんだァ、気持ち良すぎたかァ?」


漸く口を離した実弥は夢の顔を見ると目はぼうっとして蕩けた顔をしていて実弥の下半身もずくんと疼く。

今これ以上夢に触れると口づけだけでは止まれそうもない。

夢の身体を抱き上げると実弥は寝室に行き、布団を強いて横にさせた。


「休んどけ」と夢も頭を撫でて実弥は寝室を出た。
夢も心地よくてそのまま目を瞑った。




寝室を出ると縁側にもじもじした烏が目に入る。
あ、夢が手紙の返事を書くって言ってたな。
結構待たせてしまったし、どうせ起きたら行きたいと言い出すだろうと思い実弥は夢の代わりに手紙を書き、蜜璃の烏に手紙を持たせ、待たせた詫びにクルミを少し烏に分けてやった。


それから夢の様子を見に実弥は寝室に戻る。

見るとスヤスヤあどけない顔で眠っていて、先程の色っぽい顔とは全然違う。
一度口づけをしてからは日に日に激しくなって止まらなくなってきている。
足りないのだ。もっともっと夢を味わいたい。そうして、口内を味わっているうちに夢の腰が砕けてしまっていて、それ程までに自分の口づけを気持ち良く思ってくれている事に嬉しく思うし…興奮する。
夫婦になるなるまで我慢すると決めているが本当に我慢できるか最近は不安だ。
あの色っぽい表情をされては堪らない。
己の欲望を早く埋め込みたい。身も心も全て自分のものに。


そんな、欲を含んだ目で見つめられてるとは知らず夢は穏やか顔をして30分程眠った。




「手紙っ!」


実弥の濃厚な口づけ攻撃により腰砕け状態に陥った夢は目が覚めると同時に蜜璃に返事をしていない事に気がつく。

焦って縁側に行くも当然蜜璃の烏は居なく、あぁ、どうしようっ!?と思っていると鳥小屋の烏が喋った。


「実弥、手紙ワタシタ!」


「え、そうなの!?」


なんて返事をしたんだろう。ばたばたと廊下を走り夢は実弥を探すと台所で水分補給していたようだ。


「実弥くん!手紙!」


「あ?あぁ、行くって返事しといてやったぜ」


「本当っ!?ありがとう!」


「うふふ」と笑いながらまた抱きついてきてニコニコしているコイツは馬鹿なんだろうか。

さっきと同じくまた濃厚な口づけをかましてやろうか。そうしたらまた腰が抜けぐったりして布団行きになるのを分かっていないのだろう。

俺としては是非そうしてやりたいところだが、女子会とやらに行けなかったと嘆くことになるので、我慢してやる事にした。
本当にコイツはァ…


暫くして、夢は出かける準備を始めた。




「じゃあ、実弥くん行ってくるねー」


不機嫌そうな顔の実弥が玄関まで見送りに来て、上機嫌で出掛けようとしている夢とは正反対。
夢が実弥に背を向けて歩きだした時、実弥が腕を掴んで引き寄せた。


「わっ、何?」


「約束事追加だァ…」


「えっ!今何かあった!?」


「今後、出掛ける時は口づけしてからにしろォ」


「えぇっ!?んっ、ふ、」


夢が意義を唱える前にまた実弥が口を塞いでしまう。

流石に腰砕け状態にすると出掛けられないので短く済ませてやる。

また夢の目はとろんとしており、そんな顔をしているならやっぱりまた腰砕け状態にしてやろうとまた顔を近づけてやると手で口を抑えられてしまった。


「駄目、これ以上は駄目」


実弥はぶすっとした顔でしぶしぶ夢を放してやった。



end.



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