9話
「煉獄さん達戻ってこないな〜」
確認したい事あるから早く戻って来てほしいと隣で炭治郎がぼやいている。
木曜日か金曜日は本社とのテレビ会議がありSV以上は会議に行って不在。
「今日の会議長いね〜何か問題でもあったのかな?」
「セールの予定も無いのにね」
「紋治郎!祭りやるんだってよ!夏祭り!」
この事務所に居るのが珍しい。伊之助がやってきた。
「夏祭り?」
炭治郎も私も首を傾げた。
普段は宇髄と一緒に撮影室にいるのだが、どうやら宇髄にやっとけとよ。と言われた仕事が終わり、暇をもて余した伊之助はSVのいる会議室のドアに耳をくっ付けて盗み聞きをしてきたらしい。
「駐車場でやるんだってよ」
確かにこのビルの駐車場は無駄に広い。
しかし、駅前とかではないのだからそんなに人が集まるだろうか。
「何で夏祭りをうちの会社がやるんだろうな?」
私も思った。しかもここネットショップだし。
炭治郎の疑問にちゃんと会議の話しを聞いていなかったと思われる伊之助は細かい事はいいじゃねーか、楽しみだぜ。とやる気満々な様子。
まぁ、セール予定もなくて忙しくは無かったけども人前に出るのは苦手だなぁ。裏方やらせてもらおう。
この時の夢の考えは後に打ち砕かれる事になる。
いつもは1時間かからない定例会議が1時間半以上続き、やっと帰ってきたSV陣はテンション高めの者とぐったりチームで分かれていた。
今日のお昼休みは同年代グループでご飯を食べることにした。話題は夏祭り。
各チームに戻ってきたSVに簡単に夏祭りについての説明があったのだ。
飲食の出店にキメツショップで販売している商品も並べて販売するという。
6月下旬か7月上旬という少し早めの時期に開催予定で、もちろん和の雰囲気を楽しんでもらうのと夏に欲しくなるアイテムを実際に見てもらい、その場で買って頂く、もしくはネットショップの売上を伸ばすのが目的らしい。
そして、売上目標達成すれば本社からこ褒美がもらえる事になっている。
「夏祭りというかビアガーデンみたいなもんでしょ?」
善逸の言葉になる程と思った。夏祭りなんて言うから出店が並ぶ風景を想像してしまったのだ。
「うちは和風のお店だからみんな浴衣とか着るのかな?」
「はいはいっ!賛成さんせーい!」
善逸は浴衣姿の女子を想像したのか、もう顔が…でれでれした顔になっている。
「男子は浴衣かな?それとも甚平?」
「伊之助は甚平の方が良いと思う」
カナヲの言うとおり、私も伊之助は甚平の方がいいと思った。
浴衣を着たら、袖を捲り、肌蹴て前が全開になるだろう。でも、伊之助の腹筋がバッキバキに割れているのは昔からよく見て知っているのであれは女性客受けはいいのではないかと思う。
というか…キメツショップで働く人って美男美女が多い。
皆、浴衣着たら絵になるんだろうなぁ。
そう思うと自分は余計に表には立ちたくない。
夏祭りまではまだ少し先だが学祭準備みたいで少し楽しみ。
「明日から毎週金曜日は業務を2時間早く切り上げて夏祭りの準備をする事になった!」
本当に学祭ですか?
帰りの閉め作業中に言った煉獄の言葉に思わず心の中でツッコミをいれておいた。
そう思ったのは私だけではなく、玄弥は口に出して学祭かよ。っとボソッと呟いている。
「ちなみに明日は夏祭り衣装の浴衣を選ぶ予定だ!」
楽しみだわとわくわくしている蜜璃さんは可愛いが何故衣装からと思う。
腕組みをしている煉獄さんと目があった。
「浴衣を着て俺たちが宣伝用の写真になるからだ!」
「えっ!何で私が言いたい事分かったんですか?」
「顔に"何で"と書いてあったぞ」
「か、書いてないですよ!」
「いや、いつも顔に出ていて分かりやすい」
そんな事ないですよー!と膨れてみても、そう怒るな怒るなと肩をポンポンされてしまった。
「私は写真撮られないですよね?」
「夢も撮るんではないか?」
「無理!無理!可愛くないから無理!」
「そんなは事ない!可愛いと思うぞ!」
何色の浴衣を選ぶんだ?と聞かれた時、肩に置かれていた煉獄の手がパシッと弾かれる。
「む、なんだ不死川」
煉獄を無視して現れた不死川は夢を軽く睨むと口を開く。
「もちろんお前も写るからなァ」
「えぇ!私は辞退したい…です…」
「俺と一緒に撮るから覚悟しとけェ」
そう言って強めに頭を撫でると自分のデスクに戻って行った。
固まった夢の顔を煉獄が見ようとすると不死川の煉獄ゥゥゥ!こっち来いやァァ!と怒り混じりで呼ぶ声が聞こえ、よもやよもやと言いながら向かっていく。
そして、夢は困惑していた。
俺と一緒って言った?ふ、2人で撮るわけじゃないよね?まさかね…
そして、覚悟って何!?俺が写る写真にみっともねぇ姿だったら許さないぞって事?余計に写りたくないよ!みっともないに決まってる。
夢はひぇっと小さく声を漏らした。
「夢」
こちらの締め作業も終わったのでそろそろ帰ろうかなぁと思った時、冨岡に声を掛けられた。
「冨岡さん?どうしました?」
「キャンセル金額とカードの売上金額が合わない。差額的に見てこのキャン伝が引っ掛かったんだ、少し見てほしい」
ぺらりと渡された紙は私が出したキャン伝で、何か間違ったかなとヒヤリとする。
伝票チームは金額が合わないと帰れないので皆ピリピリするので不味い。
「ん〜カードの売上もキャン伝と同じ金額取り消されてるし…合ってると思いますね」
冨岡のPCを2人で覗き込む。
「では、このキャン伝ではないか…すまないが金額差異出ている所を探すの手伝ってくれないか?」
「はい、かしこまりました」
うっ、私がやるの?と思ったが断れない性格だから了承してしまった。
でも、今日は他の支払い方法でもエラーが出てしまったようで伝票チームはそちらにも人時が取られてしまったようなので仕方がない。
「売上データを見ても見つけられなかった」
「じゃあ、伝票から探してみます」
「すまない、助かる」
今日起票したカードのキャンセル伝票の紙の山を自席に戻って一枚一枚間違ったデータになってないかチェックする。
「おい、何してる」
「えっと、キャンセル金額が合わないので調査をお手伝い…してます」
チッと舌打ちした不死川が夢の横に座った。
何でお前がそんな事をしてるんだという目線を送られた気がする。
不死川は夢のようにアナログに探すのではなく入出金データを抽出し、照合し始めた。
「あった、これだァ」
「本当ですか!?」
不死川のPCを除くとExcelにこの短時間で照合の為の関数が入力されていて、2件のキャンセル伝票に差異が表示されている。
「入出金の掛け漏れじゃねェか、冨岡は何やってんだよ」
「凄いです!冨岡さーん!見つかりましたよ!」
夢が冨岡を呼び、2件あったのか、どうりで見つからないはずだ。と淡々と話すと不死川がチェックツールねぇのかよ。と言うのであるぞ、これだと開いた。
「マクロぶっ壊れてんだろーがァ!」
不死川の顔に青筋が浮かぶ。
「!…本当だ。すまない直しておく。ありがとう不死川。夢もありがとう、遅くなってしまったのでまた送ろう。少し待っていてくれるか?」
「…俺が送って行く。テメェはマクロ直しとけェ」
行くぞと不死川に言われ、慌ててキャンセル伝票を元の位置に戻し不死川の後を追った。
end.
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