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1話


「あ、あああの、何故そんなに…実弥…様は…お怒り?なんで…しょうか…」


「あァ?何故かって?…テメェ…俺のおはぎも作らねぇでクソ共と遊んでるからだろォォがァァァァ!!」


「ギャァァァァァ!!やっぱりバレてるぅぅぅ!?」


なんで!?なんでバレてるの!?あれ、実弥くんは任務に行ってたんじゃないの!?なんで伊之助達とツヤツヤどんぐり探しに出てた事バレてんの!?あれか?実は任務に行くって行ったのは嘘で実は私を尾行してたとか!?


夢はお仕置きされると思って反射的に逃げ出した。


「待てゴラアァァァァァッ!!」


「グェッ…ゆ、赦してください…実弥様…」


が、一瞬で襟を捕まれ実弥に捕まった。


「テメェ、柱舐めんなァ」


「舐めてません。すいません。おはぎ作ります。赦してください」


「チッ…たく、テメェはよォ何回俺の言い付け破れば気がすむんだァ。次ィ、破ったら覚悟しとけよォ」


「………」


「返事ィィィ!!」


「はいぃぃぃぃ!!」




****************




「はぁ…怖かった…」


実弥くんに赦してもらった後、私はおはぎ作りに取りかかっている。


小豆を洗って鍋に入れ、火にかけながら灰汁をとる。暑い。


昔はあんなに私に対しておこりん坊じゃ無かったし、『約束事』もそんなになかったのに。最近じゃあ、約束事をすぐ増やされて覚えられなくなってきている。暑い。死ぬ。


「よしっ」


第一段階の灰汁抜きが終わったので一旦、小豆をザルに移して鍋のお湯を捨てる。
そしてまた、鍋のに水を張り沸騰するまで待つと。


「ふーっ、暑い…」


慣れた作業であるが、暑さには慣れない。これが夏になると地獄である。でも、約束の『任務に行く日はおはぎを作って待っている。』をやらねば怒られるので夏でもおはぎは作る。


去年の夏に、夢は暑くて暑くて死にそうだったので台所の窓、入り口を全開にし、はしたないとは思ったが着物を膝上に来るように上げて縛り、それでも暑くて暑くて死にそうだったのて着物の上から水をぶっかけてずぶ濡れでおはぎを作ってた事があった。


その時、割りと早く任務が終わって帰ってきた実弥に、「変な格好でおはぎを作るんじねぇぇ!!」と、とても怒られた。
そして『変な格好でおはぎを作らない』という約束事が追加されてしまったので本当に夏は暑くて地獄である。


「よいっしょ」


お湯が沸騰したので小豆を湯に戻し、また灰汁を取りながらひたすら煮る。


茹で上がった小豆をザルに上げ、砂糖を混ぜながら小豆も少し潰す。少々の塩も入れる。
これがまたしんどい。


「あとは…もち米を炊いて、もち米をあんこでくるめば出来上がり!!」


ちょっとだけ、あんこを味見してみたけど今日も上手くできた。
これで実弥くんの機嫌も直るだろうと夢は思った。


「実弥くん、昼過ぎから出かけてそのまま任務って言っていたのに何故、夜になる前に帰って来れたのだろう?」





**************************





夢は出来たおはぎをお皿に数個乗せて実弥を探す。
すると、庭でしゃがんでる実弥を見つけた。


「あ、実弥くんお待たせ!おはぎできたよ〜!って、何してるの?」


何やら、庭の端の方で作業をしている。


「…どんぐり埋めてんだァ」


「…どうして?」


「庭にどんぐりがなればお前もわざわざ山にどんぐり探しに行かなくて住むだろうがァ」


夢は手に持ってたお皿を縁側に置き、草履を履いて走り、後ろから実弥に抱きついた。


「実弥くんありがとう!!やっぱり優しいね!!一生ついて行きます!!大好きっ」


「そうかァ」


優しい顔をした実弥くんがこちらを振り向き頭をポンポンしてくれた。


「ほら、おはぎ食いてェから一旦離れろォ」


さっきはあんなに実弥に怒鳴られたが、ツヤツヤどんぐりが欲しかった自分の為にわざわざ庭にどんぐりを埋めてくれた事が夢は嬉しかった。


それから2人は縁側で仲良くおはぎを食べた。





後日、蝶屋敷に行った時に皆にどんぐりを埋めてくれた実弥の優しさについて語ったところ、「知らぬが仏とは良く言ったものです」や、「はぁ、よくあの独占欲の塊みたいな人と一緒にいられますね」など夢が思っていた反応と違う言葉が返ってきて首を傾げたのだった。



end

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