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12話



夢は街に出かけた次の日から、ちまちまと実弥の御守りを縫っていた。


実弥には内緒で御守りを作っているので実弥が鬼狩りに行っている時にしか基本的に作業が出来ない。
眠たい目を時折擦りながら薄暗い夜に作業し、たまに自分の指を刺してしまったりする。

もう暫くしたら1週間程の任務があると言っていたのでそれまでには仕上げたい。


藤の花の生地には願いを込めた文字を刺繍して、それを鉄の板にくるんで内符にし、風車の御守りの袋に入れる予定。風車の袋には実弥の刀の鍔の柄を刺繍しようという計画だ。

この刺繍が大変。

あともう少しで内符の文字は縫い終わりそうだ。できれは今日は鉄の板にこの布を縫い付けたいところ。




「ヤバっ」


実弥が帰って来た。
玄関を開ける音がして夢は慌てて裁縫道具を仕舞い、布団に飛び込んだ。


すすーっと襖が開く音がする。
実弥が覗いているんだろう、狸寝入りを決め込む。

暫くすると襖が閉まり、お風呂に向かったのか足音が離れていったようで一安心。

実弥はどうしていつも帰宅すると真っ直ぐに寝室を覗くのか。居ないことがあるとでも思うのだろうか?この時間に私が出かけるはずないのに。

薄暗い中で細かい作業をしていたので目が疲れてしまった。
目を瞑ると一気に眠気が来てそのまま深い眠りにつき、今日も夢は実弥が寝室に来たことに気づかなかった。




実弥は布団に潜ると夢が気づいて自分に近寄って来てくれないか期待したがその気配がない。

…もそもそと寝返りを打ってみても気づかない。
…ん、ん"んと咳払いをしても気づく気配はなさそう。

…生きてんのか?と不安になり夢の顔を見たら呼吸音は聞こえるから大丈夫そうだ。

よく眠っているようだが、昨日は任務に行く前の実弥の仮眠でも夢も眠そうだったので一緒に寝た。
眠い時期なのか?それともどこか体調が悪いのだろうか…
体調が悪いのではないかと考え出すと不安になってくる。いつもより注意深く見てやらねば。何でもないといいのだが。


「おやすみィ」


さらりと頬を撫でて実弥も眠りについた。




それから実弥はいつにも増して熱視線で夢の様子を監視する。


次の日から夢の様子を伺っているとやはり気だるそう。ただ、咳や鼻水は無いし、聞いてみても寒気なども無く本人は元気だと言っている。
でも、やっぱり夕方の実弥の仮眠時に夢も一緒になって布団に入って寝るのだからやはり体調が悪いのではないかと心配。
だけど、こうして寄り添って一緒に寝てくれるのは嬉しい。
最近は帰ってきた時に気づいてもらえず夜は近寄って来ないので今のうちに夢補給しておこうと抱き締めて匂いをスーハースーハー嗅いでおく。




今日もどれだけ鬼を早く退治してどれだけ早く帰宅できるか選手権一位を狙ってると思われている実弥は全速力で帰宅しようと思ったが、ふと、何かと最近同任務にされる天元に話かけた。


「なァ、あんたの所の嫁は風邪でも無いのにやたら眠そうにしてる時あるかァ?」


「ん?あ〜あるかもな、どうしたよ?」


「夢が眠そうでなァ」


「生理なんじゃね?」


「いや、今はその周期じゃねェはずだァ」


コイツ把握してんのかよ、いや、俺もなんとなく分かる時はあるけど、コイツの場合は調べてたり日記とかつけてそうで怖い。

思わず引いてしまった天元は黙る。




「それでもねェなら………妊娠、とか?」




シてないのだから、それはないか、と思って実弥を見ると目をかっ開き固まってる。
あれ?なんだその反応は。


「なんだよその面は、身に覚えあんのかよ?」


「いや……ねェよ」


「いや、あんだろ?隠すこたぁねぇだろ男なんだから!」と言いながら、ニヤニヤしながら実弥の肩を叩くが依然として実弥は固まったままだ。


「ちょっと、俺…大事な用事思い出したから帰るわァ」


変な汗をかいた実弥はそう言うと全速力で走り出し、その後ろ姿に「結果教えろよー!」と叫び、自分も愛する嫁のいる家に帰るとするかと天元も帰路に着いた。




呼吸を駆使して風のように走り抜ける。
汗を流しながら深刻そうな顔の実弥。




「夢が…妊娠だァ」



ありえねぇ!自分はまだ抱いちゃいねェ!

だが、先日の夢の発言。


"護身用の小刀を尻に押し付けるのを止めてほしい。"


あの発言に実弥はだいぶ焦った。
まさか無意識に自分がそんな事をしていたとは!?

確かに助平な夢は見たかもしれないが自分の欲望をぐいぐい夢に押し付けていた自覚は無かったのでもしかして!もしかして!!そんな事を繰り返していた自分はいつか夢と夫婦になってその時が来るまで我慢しようと思っていたのに…
無意識に身体をまさぐって、寝巻きが肌蹴て…下着までずらしてしまって、もう…既に間違って先っぽだけでも押し込んでいたなんて事が絶対に無い!!とは言えない気がして、実弥の頭の中はそれはそれは大混乱を起こしている。
そして、己の子種を出していないとも限らない。

もしも、だ!!もしも、仮に知らないうちに己の欲望を突っ込んで子種を爆発させていたとしてだ。俺はスッキリ気持ち良くそのまま寝ていたかもしれないが夢の股にはその印が残っていたはずだァ!!




屋敷に着いた実弥は深夜にも関わらず豪快に玄関の戸を開け放ち、ドタドタと廊下を走り寝室の襖がもスパンッと勢いよく開け夢に駆け寄った。




「夢ー!!」



end.



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