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11話




夢は今日、久しぶりに買い物をしに街に来ていた。

久々に街に出かけに来たのだが屋敷を出るまで大変だった。
買い物に行ってくると実弥に伝えると、俺が買って来るから欲しい物を言えと言われ、たまに街を散策がてら行きたいから大丈夫だと言っても「危ねェ」だとか「不安だ」と言い、終いには自分も行くと言い出したので「一人で行きたい」と伝えると衝撃を受けたように固まったので、その隙に屋敷を出てきた。


実弥や隠の人達が食材やら生活に必要な物は届けてくれるので夢が普段買い物にいく事はあまりない。
もっと街に出掛けたりしたいが先程のように実弥の妨害あってしまったり、実弥が不在のときにこっそり出掛けた事はあるが不思議な事にだいたい後でバレてしまい雷を落とされてきた。

バレた時の実弥の顔が怖すぎて怖すぎて…
あの般若の顔はヤバイ。最近は夢も大人になってきたのであまり駄々をこねたりしないで大人しく実弥の言いつけを割りと守っている。
しかし、今日はどうしても一人で買い物に来たい理由があったから実弥に着いて来られる訳にもいかなかった。


気づいてはいないがそんな夢を離れた場所から烏が二羽見つめている。


「一人で行きたい」と言われて心臓がぎゅっとなって固まってしまった実弥は暫く固まった後で鳥小屋に走り「今直ぐ夢を尾行しろォ」と命令した。
夜の任務までイチャイチャしていたい実弥の烏は思わず「ハ?」と不満げな声をあげたが己の主人の必死な形相とたまに外出もいいかと思い二羽揃って夢の後を追うことにしたのだ。


残された実弥は一人ショックを受けていた。
一人で行きたい→一人になりたい→実弥が鬱陶しい。という考えに行き着き、このままでは嫌われてしまうのではないかと不安で不安で仕方がない。
しかし、たとえ嫌われたとしても離れたいと言われても絶対に夢から離れてやらねェ。それだけは変わらず心に決めている。

絶対、離れて、やらねェ!

と呪文のように呟きながら実弥は目をギラつかせながら鍛練に励んだ。




一方、その頃。
夢は手芸用品を扱うお店に来ていて、商品をいろいろ見て回っていた。


やっぱり実弥くんに合う色は緑だよね〜。

夢は以前に実弥に渡した御守りがかなりボロボロになっていたのを知っていたので新しく作ろうと考えていたのだ。
近々、1週間程の長期任務があると言っていたのでそれまでに作って渡したい。


あ、この深緑綺麗。何色かの糸を選んで次は生地を置いている所に移る。
色々の柄の生地があり見ているだけでも楽しい。
あっ!これ可愛い!!
夢が手にしたのは色とりどりの小さな風車が並んでいる生地。一目惚れでこれに決めた。うん、可愛い。
ただ、ふと目に入った藤の花の生地も気になった。藤の花は鬼が嫌いな花。御守りには最適じゃないか。
結局、風車と藤の花の生地に糸を何本か購入して店を出た。


ちょっと休憩がてら夢は甘味処に寄ることにした。


来たことのある甘味処の暖簾をくぐると桜餅を山盛り食べてる女性がいてぎょっとした。

あまりジロジロ見ては失礼なので離れた席に座りたかったのだが、見事に近くの目があってしまいそうな席に案内されてしまう。

ちらりと見てしまうと目があってしまった。その制服は鬼殺隊?


「鬼殺隊の方ですか?」


目があったし、気になって聞いてしまった。


「そうなの!何処かで会った事あったかしら?」


「あ、いえ、私の幼馴染みも鬼殺隊なので気になりまして」


「そうなの!?何て言う方かしら?」


「不死川実弥って言います」


「!?…もしかして貴方が"あの"夢ちゃん!?」


桜餅を食べていた方は驚いてこちらに身を乗り出してきたので驚いて少しのけ反ってしまった。あ、口の回りにあんこをついてる。


「風柱邸にいる夢と申します…」


「しのぶちゃんや宇髄さんからも話聞いていたのよ!会ってみたいと思ってたの!」


私の事どう伝わっているのか不安になったが会いたいと思っていてくれたって事は悪い印象ではないのだろうと少しホッとした。
私の手を取って挨拶してくれたこの女性は"恋柱の甘露寺蜜璃さん"と言うらしい。
とても明るくて話しやすい方だ。


「私はそんなに知り合いがいないので私もお話できて嬉しいです」


「気になってたのよ、あの不死川さんの寵愛を受けてるってどんな人なんだろうって」


蜜璃さんの言葉にお店の人が出してくれたお茶を噴き出しそうになってしまった。


「寵愛!?いや、実弥くんはちょっと過保護なだけで…」


「そうなの?今度ゆっくりお話したいわ!残念だけどもう行かなくちゃ。お手紙だすわー!」そう言うと蜜璃さんは手を振りながらお店を出て行かれた。


私も注文したおはぎを頂き、実弥くんのおはぎも沢山用意してもらう。
もうおはぎを作るのは慣れたけど結構大変なのでたまには楽したいと沢山お持ち帰り用に包んでもらった。

結構ずっしりとした重さはあるけれど、久々に街を見て回れたので気分がいい。天気もいいし。ちょっと荷物が重くても今の夢は気にならず足取り軽く帰路に着いた。


夢が屋敷に着く少し前に烏達が戻っていて、実弥に捕まっている。


「夢はどこ行ってたァ」


目が血走って恐ろしいが実弥の烏は見慣れているので、臆することなく答える。


「街デ買イ物、楽シソウダッタ」


「野郎に捕まってなかったかァ」


「野郎ニハ捕マッテナイガ、恋柱ニ捕マッタ」


「甘露寺ィ?…煩ェのに捕まったか。まぁ問題ねェな。ご苦労さん、後で果物持ってきてやる」


調度、烏からを受け終わった所で夢が帰って来たようで「ただいま〜」と聞こえた。

実弥は玄関に向かうと夢の荷物を持ってやる。


「問題無かったかァ?」


「甘味処でね、恋柱?の甘露寺さんって方に会ったんだけど私の噂が凄いの!」と可笑しそうな夢。
実弥は「何の噂だァ」と怪訝そうな顔。


「なんかね…ふふっ、実弥くんの寵愛を受けてるって言われたの!噂って大げさだよね」微笑みながら中に入っていく後ろで実弥が呟いた。





「間違ってねェだろ…自覚ねェのかよォ」


ちょっとがっくりしながら実弥も夢の後に続いて行った。



end.




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