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9話




今日も今日とて実弥は凶悪な不機嫌な面をして鬼を狩りに行く。

小物の鬼は出会ったら実弥の顔を見て逃げ出す始末。
しまいには鬼に「鬼だぁぁぁあっ!」なんて叫ばれたもんだから頸を切りかかりながら「テメェが鬼だろォがァァァア!!」と叫びながら突っ込みを入れて鬼退治してしまった。

鬼の血を浴びて目を血走らせて顔に傷のあるこの顔にギロッと見られたらそう叫びたくなるのも納得である。

粗方、片付けたのかもう周囲には不穏な気配は感じられない。

また今日も急いで帰路に着くが実弥は不機嫌だ。早く帰れると血走った目にうすら笑い不気味に見えるウキウキ実弥ではなく今日は終始ぶすっとしていた。


その原因はもちろん夢である。


先日、縁側で膝枕をしてもらい、うわー天国ー!この柔らかい太ももを堪能できる幸せ!なんて浮かれながら安らかな睡眠をとっていた実弥の口元に夢の涎が落ちたのだ。

自分の顔に垂れた涎の感覚で目が覚め、焦った顔をして涎を拭こうとした夢の手を押さえ、寝ぼけていた実弥はぺろりと舌を伸ばして涎を舐めとった。

甘かった。おはぎを食べた後だからなのか夢のだからそう思ったのかはわからないが甘くてまだもうちょい舐めたい。なんて思って夢を引き寄せて顎に伝った跡をペロリと舐めあげてしまったのだ。

どうせならその唇を舐めれば良かった。
天元の話しも頭を過り、我慢だ我慢と思いながらもその唇に自分の唇を重ねてしまいたいと頭では考えてしまい欲を含んだ目で夢を凝視した。

のが、いけなかった。

夢の瞳は揺れ、熱視線に絶えられず実弥が頭を床に打つのも気にせず走って逃げてしまった。
それから態度がよそよそしくなり、鬼を瞬殺し、帰宅して風呂に入る前にすやすや寝ている顔を拝んでから入りてェと思ったので寝室を除くと実弥に衝撃が走った。


いつも横並びにくっついていた布団が!!布団一枚分離されていた!!


目を見開き固まり、掴んでいた襖の戸はメキメキと音をたてる。


明らかに避けられてるゥっ!!


静かに戸を締め、とぼとぼと風呂に向かった。
風呂に浸かりながら先ほどの光景について考える。
明らかに態と布団、離したよな。寝相悪くてずれていった訳じゃねェよな。アイツそもそもそんなに寝相悪くねェ…
考えても避けられてる以外思いつかなくて実弥からため息が漏れた。


風呂から上がり縁側で身体の熱を冷ましていると鳥小屋が目に入った。
じーと見つめると己の烏はピッタリ寄り添って幸せそうに寝ているではないか。

昨日までの自分もそうだったはず…

とぼとぼと戻り寝室の戸を引き、離れて背を向けて寝ている姿にまたため息がでる。

しょうがない今日ぐらいは離れて寝るかと実弥も背を向けて寝たのだが、その次の日も布団を離され、その次の日も離されていたのでこの日は自分の布団をくっつけて寝てみると朝には離されて夢は壁際に寄って眠っていた。

会話も少なく喧嘩している訳でもないのにいつまでこの状況が続くのか。

実弥はもう限界だった。夢不足がピークに達し、癒しがない状況でイライラが止まらない。



今日もイライラしながら帰宅し、寝室に直行して覗いてみると布団が離されている。
連日、力を込めてしまっている襖の戸はもう凹んでしまっていた。


風呂に入りながら実弥は決心した。


今日はァ!一緒に寝るゥ!離れてやらねェ!


だいたいアイツも変な奴だァ!普段から抱きしめられる事には抵抗しないくせに、ちょっと舐めただけでなんだってんだァ!

しかも顎をちょっとだ。そんなんで変な態度を取られてちゃこの先が思いやられる。
口付けして、夜の営みをしたらどうなってしまうのか。まだまだ先かもしれないがいつか絶っっっ対にヤるんだ。それは実弥の中の揺るがない決定事項。


また、縁側で熱を冷ましながら鳥小屋をまたじーと見つめるとまた今日も己の烏は幸せそうに寄り添っている。
実弥の恨めしい視線に気づいたようで「実弥、コッチ見ンナ」と烏に言われてしまった。


今日は寝室の襖を堂々と開けてずんずん歩いて夢が寝ている布団に近づくとそのまま夢の布団を捲って自分も入り込んだ。

夢が身体をビクッとさせたのも気にせず、実弥はズボッと己の腕を夢の首の後ろに通し、もう片方の手を腹に回して抱き寄せた。


夢の匂いを身近に感じるだけで少し胸が温かかくなる気がする。


「実弥くん…お帰りなさい」


「…ただいまァ」


逃げようとされなかった事に安堵し、もっと夢を感じたくてぎゅうっと抱きしめて髪に顔を埋めて思いっきり息を吸う。


「はぁぁ〜生き返るゥ〜」と言えば夢がクスクス笑いだした。


「なーに笑ってやがる」


「だって人の頭の匂い嗅いで生き返るって可笑しいしょ」


「可笑しくねェ…夢こっち向け」


チラリと顔だけこちらを見たと思えば身体も実弥の方に向けてくれた。
抱きしめてやると胸に顔を埋めて今度は夢が思いっきり息を吸い込んだ。


「はぁぁ〜確かに、実弥くんの匂い嗅いだら私も安心する」


可愛い!可愛い!可愛いー!!俺の夢が可愛いー!!
悶えて暴れたくなるのを下唇を噛んでグッとおさえる。


「この筋肉でカチコチの身体も実弥くんだぁって思う」


そう言ってはだけた実弥の胸に頬をくっつけられ、やべぇ下半身が反応しそう!と思い、己の一物を太ももに挟めて押さえつけた。


「いいかァ、約束事追加だァ。俺を避けるのは禁止だァ」


「…ごめんね、避けて。でもなんだか…ドキドキしちゃって」と言う夢はまた眠ろうと目を瞑っている。

そんな事を言われてしまっては今度は実弥がドキドキして暫く寝れなくなってしまったが、一先ず夢不足も解消されたし、やっと数日ぶりに安眠できそうだと思った。




後日、天元にあった時に最近どうよ。と聞かれたので、最近は寝るときにお互いの匂い嗅ぎあって寝るようになった。と伝えると「うぇぇ、気持ちわりぃ、口から砂糖吐きそう」と言われて「勝手に吐いてろォ」と実弥は言った。



end.




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