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5話



午後からは最悪だった。
兄貴完全に誤解されてしまっている。

説明を聞いてくれれば誤解が解けるはすだが、今の状態で俺の話を聞いてくれるだろうか。


お昼から戻った夢は私語をしない方がいいと思ったんだろう、学生が授業中に手紙を回すようにまた俺へ余った紙に書いて寄越してきた。


"さっきの私のムービーと写メ何に使うの?"

"秘密"

"早めに不死川さんに言った方がいいと思うから早くね!"

"わかった"

"またハンバーガーショップ行こう!"


この続きを書き込もうとして兄貴に没収された。最悪だ。いくら私語をしていないとはいえ不審な動きをする俺たちに気づかない兄ではない。迂闊すぎた…


紙を没収した兄貴は青筋を浮かべて俺達に仕事しろォと地を這うような声で注意された。手紙の内容もあってより勘違いさせた気がしてたに違いない。

その後も宇髄さんがやって来て夢の手を掴み爪を見るともうそろネイル変えるかと呟いたかと思えば、今日の夜暇か?と言い出した。
残業が嫌そうな感じを察して、じゃあ今からやろうぜと言い出して夢を連れていこうとしたので、これ以上兄貴の機嫌を損ねたくなくて、焦って忙しいから連れていかないでくれと訴えればこちらをギロッと睨んでいた。

俺が止めたのが更なる誤解を生んでしまった気がする…
宇髄さんが夢のネイルをする日は兄貴の機嫌がすこぶる悪い。
夢の手を触っているのも2人っきりになるのも気にくわないのだろう。極めつけは出来上がった爪を見て嬉しそうな顔をしていること。
いつもよりも増して目付きが悪くなりたまに力が入りすぎてギギッと歯ぎしりするときもあるぐらいだ。

今日はもう何をしても裏目になる気がすると思った玄弥は大人しく仕事が終わるのを待つことにした。




ピンポーン


「ハァ…しつけぇ奴だな」と言ってドアを開けてくれたので独り暮らしの不死川の家に手土産を持ってお邪魔する玄弥。

仕事帰りに話を聞いてもらいたくて、片付けを始めた兄のデスクに行き玄弥が話かけるが、玄弥の顔を見ずに不死川は無視して立ち去ってしまった。

どう言えば話を聞いてもらえるのか悩んだ末に家にアポ無しで訪れ、不機嫌は変わらずだけどなんとか家にいれてもらえてホッとする。

兄貴はソファに座ってこちらを見ようとしない。


「兄ちゃん…勘違いしてるだろ?」


「…何がだァ」


「俺と夢の事」


ピクッと身体が反応したが何も言わず黙っているので俺は説明を始める。


「あのな、夢が兄ちゃんにお礼したいんだって」


「…お礼?」


やっと興味を示してくれて、いや、最初から興味はあったはずだけど聞く気じゃないという態度から変わってくれたようだ。


「タクシーでこの前送っただろ、そのお礼の相談を受けたんだ」


「礼なんて…気にすんなっつったのによォ」


「兄ちゃんっ!何言ってんだよチャンスなんだよチャンス!」


照れてるような顔してる場合じゃないよ兄貴!本っっっ当に夢の事になると駄目だ。今も何が?みたいな顔してるし。


「デートできるチャンスだろ!何処かに行きたいから付き合ってくれーって言えばデートできるじゃないか!」


「いきなりデートっつってもな…」


本気で照れないでくれ、なんだか俺まで恥ずかしくなってきた。

もう夢とデート行く事を妄想し始めたのかニヤニヤしている。


「見てほしいムービーがあるから今送るよ」


早速、お昼に撮ったムービーを送ると兄貴もすぐ、スマホを開き再生する。
夢が行ってみたい場所を話出すとボソリと小さな声で早口で可愛い…と呟いた。無意識なんだろうけど本音駄々漏れだよ兄貴。


「この中の何処かに兄ちゃんも行きたかった所があったって事にして行ったらいいと思うんだ」


「…玄弥ァ、疑っちまって悪かったなァ」


「いや、大丈夫だよ。良かった誤解が解けて」


ホッとしたのか兄貴の雰囲気が和らいだ気がして、俺の顔も緩む。


「でも、お前さっきのムービーなんだあれはァ…ずりィだろ」


「狡い?」


「彼氏みたいに昼飯食って、夢からポテト貰ってんじゃねーぞォォ」


「ブハッ、ハハハハハッ!兄ちゃん夢絡むと本当スゲーよなァ!ポテト貰ってんじゃねーぞォって、ククッ、そんな凄んで言う台詞じゃねーよ」


本当に羨ましいんだろう、ギロリと睨まれてしまつたが流石に今は怖くない。

煩ェと言われて軽く肩パンをくらってしまったが俺の顔はニヤついたまま。


「で、兄ちゃんどうするんだ?」


「全部行きてェ」


「ははっ、いつか全部連れてってあげたらいいんじゃないか?彼女にしてから」


兄貴はふぅーと息を吐いてから、スマホであれこれ調べながら、クラゲ館は思ったより近いし小さいから夢といる時間が短いかもしれない。でも、薄暗いのは手を出しやすい。やら、ふれあい動物園もいいが俺は夢とふれあいてェ。とか、真剣な顔してぶつぶつ呟いてる。

真剣なとこ申し訳ないけど、笑ってもいいかな?欲望が駄々漏れで面白い。

兄貴の夢への熱烈な思いが爆発してしまったようだ。


「キメツ臨海公園は結構ドライブにもなるしいいんじゃないかな?」


「あァ、でも明るいしなァ」


「兄ちゃんっ!最初から何する気だよ!付き合ってからにしろよっ!」

最初っから手ぇ出して夢に軽い男だと思われても知らねぇぞ。と言ってやるとぐっと身を固めて我に返った。いつも仕事中に見せる威厳は何処へやら。


俺の勧めもあり、兄貴はキメツ臨海公園に決めたようだ。
そして、兄貴は8月の花火大会までに夢を彼女にする!と言う目標を立てた。
正直、兄貴の中ではもうとっくに夢は勝手に彼女感覚な訳なんだけど。


もういい加減くっついてほしい。
何年越しの片思いだろうか。


高校の時、俺らは炭治郎達と夏祭りに行き、はぐれてしまった夢。その時、兄貴が見つけてきれたのがきっかけ。
普通、助けてもらった側が惚れるんだけど助けた側の兄貴が惚れてしまったんだよな。
暫くは好きな事を認めてくれなかったけど、俺からしたら一目瞭然。いつも家族の事ばっかで、女なんて全く興味なかったのに。
修学旅行の写真を全部見せろとか言われた時はビックリした。何度か関わるチャンスはあったけど、どちらとも奥手の為に進展せず。

それでも兄貴の心の中には夢が居座り続けたようで…


俺もね、大好きな兄ちゃんには幸せになってほしいから高校の間は夢に変な虫が付かないように頑張ってたんだぜ?
夢は気づいてなかったけど、結構人気あって手を出そうとした輩はいた。まぁ、俺がちょっと睨むとビビる大した奴ではなかったから良かったけど。
だけどまさか、大学で夢があっさり他で彼氏を作ってしまうとは。


兄ちゃん、今度こそちゃんと夢を捕まえて幸せになって。




「あ、兄ちゃんもう一つ写メあったから送る」


「おぅ」


あれは思わず俺も、可愛いと思った一枚だから絶対に気に入ると思う。


SNSをすぐ開いた兄貴は写真を見て数秒固まった後、眉間に皺を寄せて俺を睨んできた。何故。


「…玄弥ァ…本っ当に付き合ってねぇだろうなァ」


「兄ちゃんっ!!いい加減にしてくれぇぇぇっ!!」




end.



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