7話
実弥が風呂から上がると夢がいつもより頑張って品数を多く作った料理を食べながら宇髄が持ってきた酒を飲み始めた。
夢は酒に手を出そうとしなかったが、ふて腐れ実弥はぐいっと酒を煽りいい感じに酔いが回り、いつもより口数が多くなっている。
「でな、コイツ早く帰りたすぎてすげー勢いで倒して行くんだよ」
「あっぶない!実弥くんそんなに急がなくていいから慎重にやって!」
「慎重にやってらァ。慎重に速攻で始末してんだァ」
「今日なんか、一緒に来た隊士なんて刀も抜かずに終わった奴いたぜ」
ハハハと豪快に笑う天元に、少し酒で頬が赤い実弥、夢は楽しそうに実弥の横で会話に参加している。
「宇髄さん、ネズミさん達はもう帰りましたか?」
「んー多分まだいると思うぞ。庭にいないか?」
「果物あげたら食べてくれますか?」
「おぉ!喜ぶと思うぞ。分けてくれるのか?」
「はい!ちょっと行って来ます!」
わくわくした表情の夢は果物を切って持って行ってみようと思い台所に向かっていった。
夢が居なくなって面白くなさそうな顔をしている実弥に天元は何やらニヤニヤしている。嫌な予感がする。
「なぁ、夜は方はどうなんだ?」
はぁ?と言う顔を天元に向けるも何の事を聞かれているのか分かってしまった。
「…何言ってんだテメェ」
「順調か?なんならこの宇随様がいろいろ教えてやるぜ」
「………」
「何だ悩みがあるなら言えよ。俺様は経験豊富だぜ?」
だから嫌だったんだよ俺は。ゼッテーいつか聞かれると思っていた。
「…ねェよ」
「んだよ、つまんねーなー。でも、お前も性欲強そうだから夢ちゃん体力ついていかねぇんじゃねーの?」
先ほどのニヤニヤ興味津々状態から肩肘ついて実弥を見ている。
「だから、ねェって…」
「……もしかし、て、おま、お前っ!?まさか、まだ手ぇ出してないのかっ!?」
肘を付いていた身体を起こし、目を見開き信じられない物をみるような顔の天元。
実弥は目を逸らし、ぼそりと「悪ィかよ」と呟いた。
「だって、一緒に寝てるっつってたよな!?お前もしかして不能なのか?」
「ばっ、何言ってんだァっ!!ちゃんと勃つはボケェェ!!」
「ヤりたくなんねぇのかっ?」
「ヤりてェに決まってンだろうがァァァっ!!」
「…手ぇ出されねぇのも寂しいかもしれねぇぞ」
「アイツにはまだ早ェ…いずれは夫婦になるつもだから、それまでは手を出さねェ」
「信じられねぇ…お前引くわ。で、いつになったら夫婦なんだよ」
「夢が結婚したくなったらだァ」
「…そんな余裕かましてるとどっかの誰かにとられちまうかもしれないぞ。求婚されてたって聞いたし」
「ハァ!?何処のどいつだァ!?」
「ちょ、落ち着けって」
夢が求婚されてるの聞いて実弥は焦った。
目を血走らせ天元に掴みかかっている。
「ちょっと!?実弥くん!!」
先ほどのから実弥の怒ったような声が聞こえたので気になって戻って来た夢。
実弥の後ろからお腹の方に腕を回し、引っ張って天元から離そうとすると実弥の身体が硬直して動きが止まる。
大人しくなったので夢も腕を離し、不信そうに実弥をみた。
なんとなく感づいた天元はにやにや顔。助平な話をされた後で背中に当たる柔らかな感触を意識せずにはいられない。
「…どうしたの?」
固まったままの実弥に困り、夢は天元に目線を送った。
「まっ、しょーがねーよコイツも男だからさ」なんてウインク付きで言われたがますます意味が分からなくて首を傾げるしかない。
今日の実弥は帰宅してから様子がいろいろおかしい。やはりお疲れなのかな?と思う。
「宇髄ィ…お前、もうそろそろ帰った方がいいんじゃねェか」
というか、か・え・れ!と心の中で叫ぶ実弥。ただでさえ、天元により変な話をされて自分の普段抑えていた感情を呼び起こされてしまった。これ以上かき乱されたくない。
「心配してくれてんのか?お前優しいな!でも、泊まってくつもりだから心配御無用!」
「か、帰れェェェェっ!!」
「客間にお布団は敷いてありますので」
「お前もお前で何で準備してんだァ!?」
「だって、宇髄さん泊まるって言ってし」
「ハァ?いつだよ!俺はそんな事聞いてねェ!」
「まぁ、お前が風呂入ってた時だしな」
「ね!」と天元と頷き合ってる夢を視界に入れ「ふざけんじゃねェェェェ!!」と実弥は発狂した。
なんだかんだで楽しい?宴は続き、夢がうとうとし始めたので先に寝ることになると、先ほどよりは酒の入った天元はまた下世話な話を振ってきて実弥は困った。
どの体位は征服欲が満たされるやら、動きやすいだとかいらん情報を吹き込まれてしまったのだ。
暫く助平な話をしたら満足したのか、さぁ寝るかとなった時。
天元が後ろを着いて来るもんだから、何だと聞けばちょっと…寝顔をな。と言うので見せる訳ねーだろ!と客間に追いやって来た。
実弥が夢の寝顔なんて見せてくれないのは分かっていたはずなのでからかって来たのだろう。
なんだか任務より疲れてしまったような気がする。少なくとも精神的な面では。
自分の寝室の襖を引いた時、実弥はまた固まった。
なんでコイツ今日に限って俺の布団で寝てやがるゥ!!
すぴすぴ気持ち良さそうに眠る夢は寝ぼけて実弥の布団に入ったのか、あるいは態となのか。態とだった場合もしかして誘ってんのか?いやいや、夢はそんな助平な事知らないはずだ。だって実弥が助平な事は聞かせまいと避けてきたのだから。
もう、知らね。寝る。と思い、今日は背を向けて寝ようと夢の布団に入った。が、すぐ後悔。うわ〜夢の匂いがして余計に助平な事を考えてしまいそう。
クソックソッ!!と自分を律して目を瞑るも、頭に浮かぶのは天元のせいで、厭らしいことばかり。
後ろから抱えて…自分の上に乗せて…舐めさせて…
チクショー!!いつか絶対に全部実現させてやるからなァ!!
厭らしい事をいつかとんと堪能してやる。と心に誓って、実弥は一生懸命に寝つこうと頑張るのだった。
end.
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