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6話



「実弥くん、気をつけてね」


「あァ、お前もなァ。今日は多分、早く帰れる」


家にいるのに何を気を付けるんだろ。といつも首を傾げたくなる夢。


「本当!起きて待ってるね。でも無理しないで」


「…無理してねェ」


行ってらっしゃい。と言われて、いつもの如く任務に行く前の見送りで夢の頭にポンと手を置いてから屋敷を後にする。


さぁ、今日もちゃっちゃと片付けて速攻で帰宅してやるゥ。と心の中でメラメラと闘士を燃やす実弥。


なんたって夢とゆっくり過ごしたいし、烏を早いところ躾てやりたくてしょうがないのだ。
実弥の烏は指示通り小さい烏を1羽連れ帰ってきた。その時の態度はどうだっ!!と言わんばかりの表情で、一応どうやって連れ帰ったのか確認すると、雌の小さな烏が雄に交尾されそうになった所を身を挺して庇い、追っ払って助けたと言うのだ。
助けた後は羽繕いしてやればイチコロだったらしい。


「ハッ、やるじゃねェか」


「アタリマエダァ」


実弥も烏も上機嫌で任務地へと急ぐ。


「さっさと片付けて帰るぞ」


「俺モ、躾テヤル」


「何を躾るって?」


「…いきなり現れて会話に入ってくんじゃねェ」


気配なく現れ実弥と並走してきた天元。

今日は強い鬼が潜伏している情報はないが複数体の鬼がいる可能性が高いということと、そこまで遠方では無いため大人数で一気に片付けてしまおうという作戦。その為、割りと近場の天元にも招集がかかった。


「お前が烏と仲良く会話してるから気になってよ」


「別に…普通だァ。速攻で始末して帰るぞォ」


「そうだな、早いとこ片付けてお前ん家に遊びに行こうかなー」


「来るんじゃねェ!!」


「お前付き合い悪すぎだぞ!呑みに誘っても来ないから俺様自らが出向いてやるって!感謝しろっ」


「迷惑だァァァ!!」


クソクソっ!!今日は任務地が近いから全速力で片付ければ夢と夜一緒に過ごせたってェのに。このままじゃ宇髄の奴、確実に着いてくるつもりに違げぇねェ。冗談じゃねェ。


夢と久々に夜をゆっくり過ごして耳掻きでもしてもらい、癒され、一緒に寝て、明日は起きたら烏の躾でもしようと実弥は密かに楽しみにしていたのだ。


颯爽と走っていた2人の足が止まった。


「風の呼吸 参の型…晴嵐風樹」


「おいおい、着いて早々辺り一帯を更地にするつもりか?」


鬼の気配を察知した実弥は気配のする方へ最初から全力で技を出す。
天元のツッコミは無視するようだ。


「じゃあ、俺も派手に行こうかな!」


天元もニヤッと笑って鬼に向かって突っ込んでいった。

今日もまた一般隊士は置いてけぼり。



現場に何分いただろうか。と聞きたくなる程、柱2人が大暴れし、早々に鬼を片付けてしまった。

もう鬼が残ってない事を確認すると、実弥はまた全速力で屋敷へと駆け出した。


「なーなー夢ちゃん元気?」


帰りもまた並走してくる天元にうんざりする。


「元気だから気にしねェでそのまま帰ってくれェ」


「暫く顔見てねぇからな〜大人っぽくなってるか楽しみだぜ」


「頼むから帰れェェェっ!!」





「よぅ!夢ちゃん元気だったか?」


実弥の願いも虚しくやはり天元はついて来てしまった。
帰路では、来てもお前の分の飯もねぇし、風呂を貸してやっても着替えもねぇから諦めろと伝えるが天元は楽しそうにしながら心配ねぇよ!気遣いありがとな!とニカッと笑っていた。


「宇髄さん!お久しぶりです!元気ですよー。実弥くんもお帰りなさい」


「…ただいまァ」


「お風呂入りますよね?」


「宇髄、テメェの大きさの着物なんてねぇぞォ」


「それなら心配いらないぜ…お!来た来た!」


天元が後ろを振り返り、連れて実弥も夢も後ろを見てみると天元のムキムキネズミが天元の着物と酒瓶を運んできているではないか。

実弥はため息を溢して頭を抱え、夢は凄いと感激して天元の足元にしゃがみ込みまじまじとムキムキネズミを見た。



追い返す事を諦めた実弥は天元を先に風呂に入れ、その間に気になっていた事を確認する。


「オイ。夢なんで今日に限ってこんなに飯沢山作ったんだよ」


「え?だって、宇髄さんの派手な烏が今日ご飯食べに来るって、ちょ、実弥くん!?」


目を見開いた実弥にガッと両肩を掴まれて凄い剣幕に驚く。


「いつだそれェ!いつだァ!」


「え、さ、実、実弥くんが、出掛けてすぐっ」


実弥は硬直した。


「クソッ!!」


やられた…宇髄の野郎、今日の任務が早く片付くと解っていて最初から邪魔しに来る気満々だったんじゃねーかァ!!

早く帰って夢とゆっくり凄すのを楽しみにしていた実弥はどこか浮わついた気持ちで任務に向かっていた自分を悔いた。

恐らく近くで実弥が任務に向かうのを見ていたのだろうが浮かれていた実弥には天元の気配に気付く事ができなかったのだ。流石、元忍者と言うべきか自分が間抜けだったのか。


「大丈夫?実弥くん」


絶望に打ちひしがられ立ちすくむ実弥が心配になり夢が顔を覗き込む。


「わっ!」


目が合うと実弥に抱きしめられ首筋に顔を埋めてきたので、疲れてるのかな?甘えたいのかな?と思い夢も実弥の大きな背中に腕を回し、あやすように背中にをポンポンしてやった。

お疲れのようだから大人しくしてるけど、首に顔を埋めてスーハースーハー匂いを嗅ぐように呼吸をするのは止めてほしい。


最近は、夢が猪達とドングリを取りに行ったり、タンポポ頭と手を繋いでいるのを目撃したりでなかなか心が休まらない。夢を独占する時間が減っているように感じるのだ。



「熱い抱擁中に邪魔して悪いが風呂上がったぜ」


本当に邪魔だァ。と心の中で思いながらも夢から手を離して実弥も風呂に向かうのだった。



end.



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