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修行の帰り、カカシ先輩は薬屋で犬用シャンプーと私のご飯を買うために食料品店へ寄ってからお家へ帰った。
私のメモの通りに行動してくれたのである。

一日預けるとなると、ご飯をもらわないと私もお腹が空いて辛い。しかし、この姿である。
私も流石にドッグフードや犬用の食べ物を食べるのには抵抗があるので、あらかじめ手渡したメモに、「この子はドッグフードではなく、ツナ缶の水煮タイプを与えてください。仔犬なのでそんなに食べないです。ミルクは下痢はしないので普通の牛乳を薄めてあげてください。おやつを欲しがったらサツマイモをふかしたものをあげてください」と書いたのだ。
(※本当の仔犬にはきちんと犬用のものをあげてください。あくまでフィクションです。)

先輩は家に着くなり私を風呂場に連れて行き、扉を閉めて「ちょっと待っててね」と声をかけた。
あぁ、ついにお風呂タイムかと高揚する気持ちを抑えるために、前足で扉をガシガシかいて、よくある「風呂場から出してくれ」という犬の真似をする。
カカシ先輩は「わかったわかった、ごめんよー」というと、額当てを洗面台に置き、それからベストを脱ぎ、洗濯カゴに放り込む。
次にトップスと下着(上)を脱ぎ捨て、半裸になった。
先輩の身体は、細身ながらもしっかり筋肉がついていて、思わずうっとりしそうになる。しかし、そんなことをしたら変化がバレるので私は演技を止められない。うぅ、もっと集中して見たい。

それからそれから、ベルトをカチャカチャといじってズボンを脱ぐと、下着姿になる。
あと一枚!と言いたいところだったが(思わず吠えたけど)、ここで先輩は犬用シャンプーを持って浴室に入ってきてしまった。
まぁ、全裸でこられたら目のやり場に困っていたところだったから良かったのかもしれない。

「はい、じゃあわたあめを綺麗にするからね〜」

先輩は優しく声をかけると、私の前にしゃがむ。それからシャワーを手に取りそっとお湯を出す。この姿になるまで考えたこともなかったが、シャワーの音が意外と大きくて怖い。私はちょっとびっくりしながら身構えた。

「あれ、やっぱりお風呂苦手かな?」

先輩はそんなことを言いながら、優しく私の足元にお湯をかけていく。暖かくて気持ちいい。
怖がるといけないと思ったのか、薬屋で一緒に買ってきた風呂桶を持ってきてそこに湯を貯め始めた。
音にも慣れてきた私は、湯桶に近づき、温度を確かめてからそっと足を入れる。ちょうど良い湯加減だ。私はそのまま風呂桶の湯船に入り、全身を沈めるようにその中で伏せた。

「あはは、気持ちいいか。良かったな」

先輩は湯桶にある程度お湯を貯めると、シャワーを止めて、手で桶の中の湯を掬って優しく私にかけるのを繰り返した。
それにしても、ずいぶんと慣れている手つきだ。パックンたちもこうしてお世話をしてあげていたのかな、とぼんやり考えながら先輩を見上げると、優しい口元をしていた。
やっぱりこの姿はおいしいなぁと思った。

しばらく浸かると、先輩は桶の中に犬用シャンプーを入れて、そっと私の全身を泡だてていく。
前足の付け根から後ろに向かってくまなく泡だてられ、全身マッサージされているようで気持ちいい。思わず変化が戻りそうになるが、なんとか意識を保って我慢をする。

「よしよし、気持ちいいな〜。これから流すからね」

一通り洗い終えると一度桶の中から出される。それから桶の湯を捨てまた新鮮な湯を貯め始めた。
私は迷うことなくまた桶に入っていく。
水流の弱めのシャワーで泡を流し、最後の仕上げにまたお湯を変えてゆっくり桶に浸かると、先輩が「もふもふがなくなるとヒョロヒョロだな」とクスクス笑った。

十分に湯桶で温まると、ひょいと取り出され、タオルに包まれ脱衣所に連行された。これから乾燥に入るらしい。
どこからかドライヤーを持ってきて、しっかりタオルドライをされた後に、遠くから温風を当てられる。
音がなかなか煩くて耳が痛くなりそうだったが、毛を撫でながら乾かしてくれる先輩の指先が優しくて、こうやって髪の毛も乾かしてくれたらいいのになぁ、と思った。無理だけど。

「はい、すっかりふわふわになりましたと」

乾かし終えると、私はほぼ全裸のカカシ先輩にぎゅーっと抱きしめられた。んふふ、いい匂い、なんて言っている。
やばい、心臓がもたない。人間の姿でやられていたら、血圧が上がりすぎて鼻血でも出て死にそうなほどだ。

「ほんと、ずっとオレのそばにいればいいのにね」

なぜか少し寂しそうにいうと、私のふわふわの毛の感触を楽しみながら寝室へと連れて行った。
それから先輩は一度部屋からでて、お水とツナ缶をお皿に出して持ってきてくれた。

「オレは風呂に入ってくるから、ちょっとまっててね」

そう言って風呂場へ消えて行った。
再びシャワーの音が聞こえると、わたしは速攻で変化を解く。お腹が空いて死にそうで、化ける前に隠し持っていたお菓子を急いで口に放り込み、それからトイレへ駆け込んだ。
その間わずか2分くらいだろうか。
用を済ませて元の犬の姿に戻ると、意外と自分のチャクラが残っていないことに気づく。
修行の間、飲まず食わずだったのでかなりキツかったこともあるのだろう。
私は予定を早めて分身をよこすことにした。

先輩が風呂から出る間に何も食べていないのもおかしいので、私はひたすらに皿の水をガブ飲みし、ツナを頬張る。水煮で味がほとんどしないが、犬用のものよりも抵抗はない。
変化をしてもお腹は普通に空くのだなぁとしみじみ思った。

「あらー、お腹減ってたんだねぇ」

風呂から出た上半身裸のカカシ先輩は、すぐに私の様子を見にくると驚いていた。
また追加のツナ缶を出そうとしてきたが、もう食べたくないのでさっさと分身に玄関のチャイムを押させた。
先輩はその姿のまま玄関へ出て行く。私はトタトタと後を追いかけた。
はーい、とドアを開けると分身の私が、先輩の姿を見るなり赤面する。

「あ!先輩!す、すみませんお取り込み中に?!」
「いやお取り込みはしてないけど……もう看病終わったの?」

あまりに早い私の戻りに、先輩は訝しげに分身の私を見つめる。

「あ、はい!途中で知人のお母様がいらしたので、失礼してきました」
「ふーん、知人って男?」
「え?!」

思いがけない質問に、分身はどう答えるか迷っていた。すると、先輩は「まぁいいや」と全然良くなさそうな様子で話を切り上げ、足元にいた私を優しく抱き上げる。
そして、「いい子にしてたよ、修行中も」と仔犬の私を撫でると、こないだみたいに愛おしそうに額にキスをした。いやぁーほんとにこれ、人間の姿の時にやってくれないかな!

「ナルト達と遊んで随分泥んこにしちゃったから、シャンプーしたんだ。お風呂好きでいい子だったよ」
「わざわざすみません……」

先輩は分身の私には目もくれず、「ねー」と犬の私へ話しかける。
どうしてこの人は本当に私には冷たいんだ、そう言いたげな様子で分身の私はそれを見ていると、ふと彼が視線を分身の私へ向ける。そして、思い出したように「そういえば、お前も長風呂好きだったよな」と真顔で私に尋ねた。
分身はドギマギしながら「そうですけど」とだけ答えると、「そんなとこまで飼い主に似るんだな」とボソッとカカシ先輩は呟いて、名残惜しそうに仔犬の私を分身へ手渡した。

「まぁ、わたあめの面倒だったらいつでも見るから」
「私の面倒は見ないみたいな言い方やめてください……」
「そこまでは思ってないけどね。じゃあな」

分身の私は、項垂れながらもありがとうございました、とお辞儀をして玄関の扉が閉まるのを待つ。
あぁ、また傷つくこと言われたなぁ、なんて思いながら犬の私もガックリと肩を落とし、分身の私に連れられ先輩の家を後にした。

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